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『製造原価』は大事じゃないかもな話

「お湯はり」のボタンを押して15分待ったら、急激にお風呂に入るのが面倒臭くなるこの症状の名前を教えてほしいむねです。

京都に住んでいた学生時代、ときどき【奈良vs滋賀】の構図になる意味がまるでわかりませんでした。あれは京都で古来から続く貴族の遊びでしょうか?「奈良が古都やぞ?」

まとまりのない長い文章になってしまったので、本日のまとめからです。それではどうぞ。(3031文字です)

・『製造原価』あまり知らない。(前澤さんTwitter)
・ぼくたちはドヤりたい。
・『製造原価』をどこまで内包する?
・「本当に買ってよかったのか?」を満たしてあげると良い
・←最後ココ

ZOZOの前澤友作さんが、twitterで行なったアンケートが興味深いです。「アパレルを業界を変えていきたい」とその意図を語り、アンケートの解答が伸びていました。過去にリツイート数でギネス記録を獲った方ですから、さすがの母数です。

なお、一連の投稿は間もなく削除されています。

全部で6問あったアンケートは以下のような内容。

「みなさんの洋服の買い方は?」「どうせ少し時間がたてばセールになるので、洋服を定価で買うのは馬鹿らしいと思う」「自分が定価で買った洋服が、あとあとセールで安く売られているのを見たときの気持ちは?」

ツイートが削除されたということは、前澤さん自身の中で気持ちの変化があったか、何かしらのバイアスが掛かったかのどちらかでしょうか。ZOZOの一挙手一投足に世間は今、みんな夢中です。それはアンチもファンも含みます。そんなストーリーを、連載誌のごとく毎度お届けしてくれる前澤さんのことは好きだったりします。

中でも個人的に興味深かった質問がこちらです。

■「原価ご存知?」という投げかけ

これはアパレル洋服の原価率が、20〜30% であることを暗に示しています。業界では常識ですが、意外と世間の認知は低かったことがわかりました。(アンケートの問い方が、全体的に誘導気味でしたが。)

「原価率が低い」というのは定説で、カフェや居酒屋のドリンクは正にそう。ことモノづくりやアパレルも御多分に漏れる話ではありません。

最近では原価を公表することで、その製品単体が一体いくらでできているのかが、透けて見えるブランディング手法があります。
この切り口は、『ハイブランドが提供する高いクオリティの製品と同等の製品を、私たちは正しく(従来より低い価格)で提供しますよ』ということに価値を見出している点です。

DtoCを実践するブランドEverlane

DtoCは“Direct to Customer”の略で、いわば工場から直接お客さんに届けるスタイルです。基本的に実店舗を構えていません。その際に発生する人件費や家賃を抑えられるわけですね。

■ぼくたちはドヤりたい

何かモノを買ったり、サービスを体験したとき、ぼくたちはとかくドヤりたいです。インスタに上げたくてうずうずしています。その見た目、普通のシャツが、実はルイヴィトンであることをドヤりたい。はたまた、ルイヴィトン級のハイブランドが採用するファクトリーで作られたシャツを、その半値くらいの価格で買えるブランドのシャツをドヤりたいです。

前者と後者にある共通点は、ブランド価値が高い点。そしてそれをお客さんが気持ち良く感じている点ではないでしょうか。

■原価内訳の公開

モノを作ると製造原価が発生します。例えばシャツだと生地と付属代。そしてそれらのパーツに裁断する工程、さらにそれを縫製する工程など。さらに細分化すれば製造前のデザインの企画やサンプル制作費。そして製品が出来上がってからの検品・仕上げ作業。そして、それらは分業だったりするので、工場間それぞれと、お客さんへ届けるまでの流通などなど。こちらはONLINEで可視化されている商品ページです。(商品写真のあとスクロールすると、必ずこういったコストの内訳が可視化されています。)

Everlaneの商品ページ

10YCの商品ページ

現代(インスタ以降の世界)は、会社がわざわざ「宣伝広告費」を捻出するより、お客さんの口コミ、つまり無料のSNSから宣伝(拡散シェア)されてしまった方が広がりやすいという考えが広まりました。なので、本来「宣伝広告費」に掛けていた金を、「拡散されやすいデザインや仕組みづくり」にお金を回すという動きです。

■ルイヴィトンは今日もルイヴィトン

「ルイヴィトンは1日してならず」とローマ方面の人が言っていた気がします。ルイヴィトンが今日もルイヴィトンなのは、銀座やシャンデリーゼ通りなどの一等地にお店があって、ド派手なショーをし、レジで商品をひとつひとつ包装紙で丁寧に商品を包み続けた結果、ルイヴィトンになりました。少なくともぼくが生まれてからずっと今日まで、それを保ち続けています。

目の前で丁寧に包装紙で包む作業代や高級紙袋代は、先程例にあげたDtoCブランドの『製造原価』には含まれていません。というかポップアップでお店をしない限り、発生し得ません。けれでもルイビィトンにとっては紛れもないコストです。こうなってくると、ルイヴィトンの商品はどうやら工場から出荷された瞬間に完成していなさそうにも見えます。となれば一体、どこまでを『製造原価』として内包するべきなのでしょうか?

■ベンツを買ったあとの心理

メルセデス・ベンツなどを購入した人が「もう買ったあとなのに、雑誌掲載や道路広告があるとついつい見ちゃう〜」という心理があるらしいです。ぼく自身も洋服を購入したあとにも関わらず、もう一度ググったり、インスタでどんな人が着てるのかを調べた経験があります。どうやら高額な買い物ほど、人は「本当に買ってよかったのか?」と1度不安になるみたいです(認知的不協和の解消)

ブランド側は、その不安を解消して、その気持を満たしてあげないといけない。つまり広告はこれからベンツを買う人(見込み客)のためではなく、購入した人(新規顧客)のためにあるということ。そうやって様々なアフターサービスで、顧客ロイヤリティをリピーターからブランド信者へと高めていく。「宣伝広告費」はアフターサービスの一貫である。みたいなお話があります。

■『製造原価』が1番大事なのか?

まとめるとこうです。

・『製造原価』あまり知らない。(前澤さんTwitter)
・ぼくたちはドヤりたい。
・『製造原価』をどこまで内包する?
・「本当に買ってよかったのか?」を満たしてあげると良い
・←いまココ

これだけ情報がシェアされて製造原価も透けて見える現代。だけど人は製造原価をあまり意識して買っていない。

つまるところ、『製造原価』って1番重要じゃないのでは?

ぼくはコーヒー1杯の厳密な原価を知らないです。けど、コンビニかマクドナルドでコーヒーが100円で飲めることは知っています。それでもドヤりたいので、Macbookを持ってスターバックスへ出掛けます。つまり空間にお金を払っている。あの居心地の良さも含めてコーヒー代として支払っている。

ぼくが褒めている隙に値上げしちゃうスタバさん好き

ブランドの価値が高く保てていることが1番大切。その対価としてならお客さんは納得してお金を落としてくださる。その対価とはクオリティとコストのバランスの他に「ぼくたちをドヤらせてくれるか」。そして「本当に買ってよかったのか?」の気持ちを満たしてくれるかが大事ということですかね。



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