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【創作小説】M美、新たなる世界を見つける①

中学生最後の冬

大好きな彼氏K太との関係は良好で、3年生最後の大会もおわり高校受験に向けて一緒に図書館や相手の家で勉強をしたりしていた。

そんな冬、私は同級生のY子の事が気になり始める。
Y子は恰幅が良くて(今でいうポッチャリ体型という)とても懐っこい性格の子でよく私にくっついて来ることが多かった。
冬の寒さに弱い私はY子の体温の暖かさに安らぎを感じて、特に邪険に扱う事はせず寧ろずっと抱き着いていて欲しかった。
おおっぴらに学校という閉鎖的世界で彼氏に抱き着く訳にもいかず、ベタベタするなんてキャラではない私達だったからY子との触れ合いは私の心を癒す大切なモノになった。

でも、私の心に変化が生まれてしまった。
生まれてしまったんだ。

Y子が、可愛く見えて仕方がない。
抱き締めたくて、包まれたくて。
キスをしたくて、受け入れて欲しくて。

私は

Y子に母性を求め、更に性的衝動を抱いてしまったんだ。

Y子と触れ合う度に、私の心は悲鳴を上げ続ける。
私の彼氏はK太だ。
好きな人は男の人でしょう?
Y子は柔らかくて可愛くて気持ちがいい。
これは女の子でしか得られないよ?
キスしちゃいなよ、同性同士大丈夫だって。
ダメだよ。
友達なんだよ。
そんな事考えるのがおかしいんだよ。

葛藤に苛まれた。

自分は女の子が好きなんだろうか。
女友達を恋愛対象として今後も見てしまうんだろうか。

そんなの
おかしいことだ。
嫌われちゃう。
隠さなきゃいけない。

そんなの     ふつうじゃないから。


私は自分の気持ちに蓋をした。
共存するにはまだ心が幼すぎたから。

最後の冬で良かった。
あと少し見ないふりをすればいい。
私はK太の彼女だもん。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫だ。

試験日までは受験勉強に没頭して、生まれてしまった感情からは目を逸らし、私は第一希望の高校に受かることが出来た。


そして、私の世界に新しい色が増えていった。


高校生時代

私が通う高校は少し変わっている。
女子生徒はスカートとスラックスどちらの制服を選んでもOKで、それが常識になっている校風なのだ。

我が家は母子家庭で貧しかったため制服は殆ど貰い物である。
もう履かないからって先輩からスカートと余ってるとスラックスを貰っていた。
ブレザーまで貰えたけど、少し大きい。

先輩から貰ったスラックスを履いてネクタイをしめてもいいし、スカートをうんと短く履いて可愛いリボンを着けてもいい。
男装をしている自分と、可愛い女の子を演じている自分。
その時の気分でどちらにもなれる、なんとなく自由で心が軽くて、私は気に入っている。

彼氏のK太の前ではスラックス姿は終ぞ見せなかったけど。

女子が多いクラスで、まずまず順風に高校生活を送っていた。
だけど高校2年の秋。
私はイジメにあうことになる。

イジメの主犯格はクラスの中心的グループの女子達だ。
当たり障りない距離感で関わっていたけれど、なんの拍子にかハブられたり悪口を言われるようになった。
きっときっかけなんて、なんか癪に障るぐらいの他愛も無いことなんだろう。
高校生なんて、そんなものなのである。

クラスに殆ど居場所がなくなった私は違う居場所へと流れて行った。
職員室と図書室、そして保健室だ。

職員室は言わずもがな先生達が居る場所で、生徒はあまり寄り付かない場所で私には好都合だった。
ウチの高校の先生達は少し変わっていて、テスト期間以外ならいつでも居ていいというスタンスの人が多かった。
職員室の給湯器近くに居ると、先生からコーヒーやら誰かから貰ったフルーツやら貰えて寛ぐ時間はなんだか特別な時間で好きだった。
もちろん勉強が1番の目的だから、授業で分からない所があったら担当の先生達の所へしょっちゅう聞きに行っていた。
クラスでハブられている事実は先生達みんな知っている事だから、余計にかまってくれていたんだと思う。
別にハブられていようが授業に支障がきたされる程じゃなかったのでどうにかして欲しい訳でもなかったし、適度に見守ってくれて勉強に関して惜しみなく協力してくれる大人達が私は今でも好きだ。
まぁ、キツくなかったかと言えば嘘になる。


図書室も特殊な空間で本当に居心地が良くて、バイトに行かなきゃいけない時間まで放課後過ごす場所第1位で。
司書の先生は外部から雇われていて、校則違反とかは多目に見てくれる少し緩い先生で皆から好かれていた。
そんな居心地の良い図書室に通い、私は人生で1番本を読んだ。
本は良い。
見聞が広がるし、世界に没頭出来る。
共通の仲間もできる。
図書室に来る別のクラスの子や先輩後輩と仲が良くなり、私の世界は広がった。
同じクラスの子が学校という世界の全てではない事。
年齢関係なく人とは親しくなれること。
この見知は私の世界が小さかった事を思い知らせてくれた。
だからクラスでハブられても友達がゼロという事はなくて、先輩たちに構ってもらえる事がとても楽しくて嬉しかった。


でも、1番の特別な場所はやっぱり保健室。
ココの保健室の先生は人生の恩師で、目標とする大人の1人。

どうしたってクラスに居たくない時もあって。
そんな時に仮病を使って保健室のソファーに横になっていても、先生は何も言わずただ置いておいてくれた人。
閉校時間近くにいくと紅茶を振舞ってくれた。
自分の将来のこと、地域活動のこと、先生でも悩むことがあること、甘えてもいい大人がいるかけがえの無い空間。
他の先生とは違って、大人は完璧じゃないってリアルに近い頼れる大人で、そんな保健室の先生は理想の大人として尊敬の眼差しをむけていた。


学校以外にも私の場所はあって、自分という存在を確立できて社会に紛れられる好都合な場所。
それはアルバイト。
週5で入っててバイト三昧な夕方~夜を過ごす日々。
反抗期真っ只中だった私は、働いてお金を得られる事が子供から大人になれる唯一の方法だと思っていた。
働いてお金を稼げる自分というものに酔いしれて、保護者面する親の存在が疎ましくて仕方がなかった。
早く、早く卒業したかった。
親からの保護から外れたくて、居た堪れないクラスから逃げたくて。


そんな高校生活を送っていたけれど、彼氏のK太にはあまり詳しくは話さなかった。
だって、彼女がハブられてるなんて嫌でしょう?






..........次回。

高校生活、後半をお送りします。


お楽しみに。

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