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【夜宵★日記67】Kさんとのこと
2023/3/4
尊敬し慕っていた先輩、Kさんとのお別れがあった。
Kさんは感性が独特で、口にする言葉や表現法がいちいちおもしろい。
物事をおもしろがってやろうというひそやかな気概があるようだ。
お客さんとのコミュニケーションでKさんのアンテナにかかったことを、Kさんの感性で話されると、私たちはもう腹筋が痛くなるくらい笑い転げてしまうのだった。
仕事面では、たくさん助けてもらった。
失敗すればフォローしてくれ、
「大丈夫です。次はできます。」
と根拠もないのに言う。
私はこういう、無条件に信じてくれる人に弱い。
実は
「いい加減うまくなってくれ。」
という、Kさんの願いだったのかもしれないけど。
聞けば技術のハウツーを教えてくれもした。
ベテランで腕のいい方なのに、そのどんなときも、Kさんは目を合わせて謙虚に話された。
Kさんがいたから、私は深刻にならずに仕事ができた。
昨日はそのKさんの、最後の日だった。
「先輩に聞いた話ですけど、その方は事にあたるときには『ええい、やってやる。』と思うんですって。」
とKさんは、人の言葉を借りて私に話された。
遠回しだけど、意気地のない私に対するエールと受け取る。
最後までこういう、押しつけないやさしさの方だった。
私は何を伝えたかよく覚えていない。
「お世話になりました。」
くらいは言えただろうか。
名残惜しくお別れし、私は帰路についた。
バスはまだ当分来ない。
そうだ、Kさんからお菓子とともに手紙ももらった。
バス停のベンチで封筒を開く。
そこにはKさんの手書きでこうあった。
「(前略)ほとんどできているのであとは回数こなすこととやってみることだと思います。夜宵★さんは対象のことをよくみているので色々な気づきができているので大丈夫だと思います。(後略)」
そんな、よくみられてなんかないよ。
けど、そんなふうに思ってくれていたのか。
強く風の吹くバス停のベンチで一人。
ぽろりと、涙がこぼれた。