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OLと人魚(司馬 舞)を読んだので感想
司馬舞さんの作品は『OLと人魚』が初めてになる。とてもおもしろかったです!感情の描写がとてもいいなって思いました。
とても柔らかいタッチで繊細な感情を表現する作家さんだなって思った。ストーリーも分かりやすく、あまり読者が迷走することのないようなそんな感じ。(短編集って作家さんの尖った部分を強調してる面もあるじゃないですか。何言ってるんだ、この作家さんは? とか……)
昔話がベースになっている話が多かったように思える。鶴の恩返し・人魚姫などなど。人外の存在と人間の接点・融合について、もしこうであったなら、という想像がとても豊かで作家さんの個性が出ているなと。
個人的には『あの子の恩返し』が一番好きだったかな。マイノリティに対する人の接し方のリアルというか、そういう面がとてもよく描写されていたと思う。
夏海が母に向かって気持ちを吐き出すシーンはグッときた。要するにマイノリティとかマジョリティとかって相対的な関係でしかなくて、居場所が変わればそういう意味で、自分は何者にもなれるってことだと思う。お母さん、結構こころに来てただろうな……
あとは貸し借りの関係と友達っていうテーマについての描写もよかったな。気持ちの整理ができてない夏海が本当に生きてるみたいに身近に感じられた。
貸し借りの関係って人によっては、ドライに見えるかもだし、そんなに気にせず本当の気持ちを大切にしていける人もいるだろうし
マイノリティとかもそうだけど、人って結構どうでもいいところに変な意味を付け加えちゃって気持ちがぐちゃぐちゃになってしまうってところがあると思う。その変な意味が社会的に問題がある場合も多いのだけれど、大事なことってその意味付けの部分なんだろうなと。
どうやって人との関係や物事を意味付けしていくのか。
資本主義の社会。嫌でも競争を意識して、知らず知らずのうちに自分の頭で考えられなくなってしまうけれど。
ちゃんとしっかりと自分の頭で考えて、気持ちで納得がいくようなそんな生き方ができるようになりたいな。
そういう意味でいくと、私はマジョリティから脱してマイノリティになろうとしているのかな、知らんけど笑
夏海とお母さん、その友達が幸せに生きていけますように。