【仕事日記#6】俺氏、ギャルに囲まれて戦犯に(冤罪)
今回はこれぞ大企業!という話です。
政治があって、派閥があって、犯人を捜して。
あんまり胸糞いいものではないかもしれませんが、一風変わった人間模様を見たい方はぜひ。
今の会社に誘ってくれた営業部のエース・シゴデキ君とケンカをした後、僕に忍び寄ってくる魔の手がありました。
「nemuさん、なんかあったんすか?」
彼の名は店長(ステーキハウスの店長みたいな顔だから)。
シゴデキ君が入社する前の旧エースで、典型的な女好き。好みの女性を入社させて周りに置くという荒業をやってのける人材です。バツ3の肉食系のNTR経験が、僕とシゴデキの不和を敏感に嗅ぎとったのかもしれません。
待ち合わせ場所は有楽町のフーターズでした。
「ここは俺が持ちますんで」
店長はそう前置きすると、ピクルスのフライをつまみながら、フーターズガールのセクシーなオレンジ尻を横目に本題を切り出します。
(食欲と性欲と金欲を同時に刺激するなんて、ズルいぞ店長!)
「もしよかったら俺につきませんか。ちゃんと話すのは今日が初めてですけど、nemuさんはやっぱり話が分かる人だ」
店長はゆっくりと無精ひげをさすりながら、決め台詞を放ちます。
「僕ら2人なら、うちの会社ひっくりかえせますよ」
!!?!?ひっくり?!!!??
会社ってそんなお好み焼きみたいなもんなの!?
初めて味わうスケールの話に心が寒くなりました。
これが”政治”ってやつなのか、と。
(しかし仮にも上場企業、いったいどうやって――)
私の浅慮を吹き飛ばすように、店長が野望を語ります。
「実はうちのオヤジ、国動かしてるんすよ」
上級国民のおぼっちゃまでしたわ。
彼の計画をざっくり説明すると……
●国の事業を入札で受ける
●会社に官公庁専用のまったく新しい事業部をつくる
●そこに、現行の事業部(いま僕や店長がいるとこ)を吸収する
みたいなこと。
そのうえで自分が新しい事業部のトップになれば、シゴデキ君も、ボスすらも、一気に部下になるという寸法です。
しいかし、なぜそこまでしたいのか?
答えは嫉妬に他なりません。
かつての兄貴分だったボスは新しいエースに夢中で、自分のことは官公庁とつながりのある金づるとしか見てくれなくなった。そう察知した店長は、スネチャマLV72と化して事業部の転覆を狙ったのです。
ボスと同い年の僕を取り込もうとしたのも、何かの当てつけか。
結局その日、僕は店長の味方になるともならないとも答えなかったのですが、彼は僕のことを「アニキ」「nemu兄」と呼ぶようになりました。
店長ゆくところに店長軍団あり。
店長が(勝手に)弟分になれば、軍団員たちももれなくついてきます。
軍団員は全員、長谷川潤みのあるパッキパキ女子ですから、本社で練り歩いてる時の存在感は半端じゃありません。
その連中が、本社ですれ違う時、順番に「アニキ~💕」と手を振ってくるのですから戦慄します。僕はわりと地味な見た目ですから、パリコレデザイナーばりに赤ニットでも着ないとバランスが取れません。
なんか恥ずかしいとは思いつつ、”俺をアニキと呼ぶな”とまでは拒絶できず、しばらく好きなようにさせていました。
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それから約1ヵ月。
僕は突然ボスに呼び出されました。
そこで向けられたのは、人生で初めて受ける衝撃の質問。
「nemuさんはこの事業部を壊そうとしていますか?」
!?!?#!#?!????!!
見覚えのない単刀が麻酔なしで胸に直入しました。
「いま営業部に派閥があるのはご存じでしょう。解決のため聞き取り調査をしていると、nemuさんの名前がやたらと出てくるものですから」
いや、知らんて。
シゴデキとは最近遊んでないし、店長軍団とも1回しか飲んだことないんだから。
確たる証拠なく、なぜ容疑者扱いできるのか?
下品さに不信でいっぱいになりました。
「何の件か存じませんが、そんな意図はありません」
気を取り直して毅然とした態度で答える僕。
「そうですか……まあいずれにせよ、店長がこんなに反抗的な態度を取ることは今までになかった。部署に余計なトラブルを呼んだこと、事業部の売上低迷を招いたのはすべてあなたの責任です」
はぁ??????????
もう判決が出てるの?????
しかもなぜ売上???????????
シゴデキや店長軍団は、俺のことなんて言ったの???????????
疑問が止まりません。
人が会話しただけで壊れる事業部ガラスすぎるし、僕ってあまりに大物インフルエンサー過ぎやしませんか?
しぶしぶその場は収めた僕ですが、ボスに対する信頼は壊れました。
低迷があなたのせいですなんて、部下に言っていいわけないでしょ。
本格的にボスがサイコパスだと気づき始めた最初の事件でした。
失礼しちゃう。