ビジュアル系バンドの歌声がスピーカーから流れている
固まった指を広げる
ミシッと鈍い音を立てる関節
誰もいない部屋
広くて狭い僕の世界
エアコンの音
ビジュアル系バンドの歌声がスピーカーから流れている
やけに響く時計の針
優しい歌が聴きたくて再生停止のボタンを押す
静寂に包まれて
優しい歌なんてないことに気づく
僕のことを誰かに知ってほしい
そんな気がする
本当は君に僕のことを知って欲しい
そんな気がする
ブルーライトが僕の太陽
君の目にはまだ遠い二人の思い出
熱帯夜に凍えている
僕はただ息をする
中途半端でも生きてしまえる
そんな僕が嫌だった
一生懸命生きて動く街の人影が怖かった
ロマンチックな詩が浮かばない
抜け殻みたいな僕だけど
きっと秋を迎えるだろう
そうしてまた朝日を浴びる