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私の詩集1

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2023年8月の記事一覧

〔詩〕崖

〔詩〕崖

助けて、なんて言えない
自分で選んできた道なのに
今さら誰かに救いを求められない

別に
一人で踏ん張って来たんじゃない
いつも誰かに支えてもらってた
それは分かっている
分かってはいるけれど

本当は強くありたくて
強い振りが癖になって
弱い自分が見せられなくなる
笑うたびに軋む胸の奥

身の丈に合わない強がりは
ガラスの靴にねじ込んだ足のよう

泣き言は飲み込んで
冗談に変えて吐き出して笑う

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〔詩〕秋雷

〔詩〕秋雷

季節の変わり目は苦手
心がグラグラして
激しい雨音にすら泣き出しそうになる

か弱くなんかない
図太く生きてきたしこれからもそう
だけど
不規則で乱暴な雨音が
容赦なく心を突き刺し
振り回すのを止められない

この時期を過ぎれば
寝苦しい夜から解放される
苦手なものが多すぎる私も
深呼吸できる季節が来る

だから今は

布団の中で丸まって
見付からないように息を殺して
雨雲が通り過ぎるのを
ただ震

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〔詩〕宴の後で

〔詩〕宴の後で

空港のロビーでも
「さようなら」なんて言わない
「バイバイ」
「またね」
それで充分

また明日会えるかのように
軽く笑って
軽く手を振って
でも
見えなくなるまで見送る

季節が巡れば
また変わらず会えるはず
明日のことさえ何の保証もないまま
私たちはそう信じているのだ
祈りのように
おまじないのように

「またね」「じゃあ、また」と
軽く誓いの言葉を交わし
それぞれの日常へ戻って行く
飛行機が

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〔詩〕平和とは

〔詩〕平和とは

平和とは
当たり前だと思っていたことが
当たり前のままであること

美しいものを美しいと言い
楽しいことを楽しいと言えること
嫌なものはやんわり断り
危ないものとは距離を置けること

昨日の続きは今日
今日の続きは明日
そうやって
途切れることなく続いていくと
信じていられること

ある日突然
当たり前は消える

押し付けられる価値観
断ち切られる時間
足搔いても抜け出せない暗闇に
平和への出口は

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〔詩〕美学なんかじゃない

〔詩〕美学なんかじゃない

いろいろあったけど楽しかったなんて
終わったから言えること
泣きたい気持ちで笑ったことも
笑いたいのに涙が止まらなかったことも
それなりに苦しく
いろいろと耐え難く

それでも楽しかったと言いたいのは
綺麗な終わりが欲しいから
ここまで歩いてきた私は
間違ってなどいなかったと
終わりよければ、なんて
そんなはずないのに

終わらせたんじゃない
終わってしまっただけ
でも認めるわけにはいかない
足下

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