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川の行方
川の行方 (第38回 新潟県小千谷市文芸祭 入賞)
父好みの料亭
高級料理には手がでない
名も知らぬ酒が喉を焼く
「父さんの望むようには生きられない」
父は眉根を寄せ 無言で杯を重ねる
並んで歩く星月夜
足音だけが響き渡り
冷えた風が通り抜けてゆく
行きつけの居酒屋
好物のから揚げが干からびてゆき
まずい安酒ばかりが喉を降りてゆく
「父さんの期待には応えられない」
父はふと唇をゆるめ
「生まれたてのせせらぎも 泥の川も
いつの日か海につく みんな同じさ
自分の望む道を迷わず生きるといい」
どんなに激しい流れでも
曲がりくねった石くれだらけの流れでも
自分の信じた川ならば
必ず泳ぎきれるだろう
自分の選んだ道ならば
悔いることもないだろう