【白4企画】 鬼退治
こちらの企画に参加させていただきます。
よろしくお願いします。
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あるところに、読書好きな青年がおりました。
毎日川の流れる音を聞きながら読書をするのが青年は大好きでした。
青年が今日もいつもにように読書を始めようとしたその時、川上から大きな桃が流れてきました。
青年はどうしようか考えましたが「今は桃の気分じゃないな」と思い、そのまま桃を見送ることにしました。
しかし流れていったはずの桃がなぜか戻ってきては、青年の前を行ったり来たりしています。
青年はなんだか桃が可哀想に思え、川から桃を救出することにしました。
先程まで読んでいた「アラジンと魔法のランプ」に影響を受け、青年はその桃を優しく撫でてみることにしました。
この大きな桃からランプの魔人のような素敵なものが出てこないかと期待したのです。
しかし出てきたのは、自分と同い年位の男性でした。
がっかりした青年に桃から出てきた彼は名刺を渡しこう言いました。
「私、こういった者でして」
名刺には「桃太郎」の文字。
やはり桃を撫でたからといってランプの魔人が出てくるのは無理だったかと青年はまた落胆しました。
そんな青年に向かって桃太郎は「何かお願いごとは?」と聞いてきました。
これは好都合とばかりに青年がどうしようかと考えていると、桃太郎は「わかりました、鬼退治ですね!」と勝手に話を進めてしまいました。
そしてどこかへ電話をし始め、部下だという犬と猿と雉を呼び寄せました。
それからみんなで相談を始め、では出発しますとだけ言ってどこかへ出掛けていきました。
青年はこの現代に鬼退治とは一体どこへ行くのだろうと思ったものの、まぁいいかと読書を再開したのでした。
それから数時間後。
突然青年のスマホが鳴り、見ると相手は桃太郎でした。
桃太郎はまた青年の知らぬ間に勝手に連絡先を交換していました。
桃太郎からは「鬼退治しました」のメッセージと共に、大盛りのラーメンの写真が添えられていました。
「これはあの『鬼盛り』じゃないか!まさか完食したのか!すっすごい!」
青年の大好きな超人気ラーメン店「鬼ヶ島」では、超特大ラーメン「鬼盛り」を制限時間内に食べ切ることができれば、もちろんお代が無料になる上、完食者には「鬼退治」という名誉ある称号が与えられます。
また嬉しい特典として、鬼盛りを完食したことを証明する「鬼退治鉢巻」まで貰えるのでした。
これは青年がいくら挑戦しても成し遂げられないものでした。
しかし桃太郎は青年の代わりにその夢を叶えたのです。
青年が興奮しながら写真を見ていると桃太郎からまた写真が届きました。
そこには鬼退治鉢巻をした笑顔の桃太郎と犬猿雉が写っておりました。
店ではまだ誰もこの鬼盛りを完食したことがなかったので、桃太郎たちは完食者第一号として、お店に写真と名前を飾ってもらえることになりました。
青年は読書も止め、嬉しそうに何度も写真を見返していました。
するとそこへ「鬼退治」を終えた桃太郎たちが帰ってきました。
お土産にと、超人気店で買ったという「きび団子」を青年に買ってきてくれました。
この人たちはみんないい人たちなんだなぁと青年は思いました。
桃太郎はお土産のきび団子を渡すとこう言いました。
「これでもう私たちは仲間です」
青年は桃太郎たちを自宅に招き、お茶を入れ、お土産のきび団子をみんなで仲良く食べました。
そして桃太郎が鬼が島の鬼盛りを完食した時のことを話し始めると、青年は目を輝かせながらうんうんと聞き、大いに盛り上がったのでした。
それから随分と時間が経ち、段々外も暗くなってきた頃でした。
桃太郎が時計を見ると、時刻は18時になろうとしていました。
犬猿雉が桃太郎に「僕達そろそろ…」と言うと、桃太郎は青年に向かって別れの挨拶をしました。
「本日は『きび団子株式会社』にご依頼いただき誠にありがとうございました。もしまた何かお願い事がありましたらぜひ我が社までどうぞ」
そう言うと桃太郎と犬猿雉はみんな揃って帰って行きました。
青年は見送ったあと、その場で外をしばらくぼうっと見ていました。
そして桃太郎からもらった名刺をふと思い出し、それをもう一度よく見てみました。
そこにはこう書かれてありました。
「そうか、みんなは僕の夢を叶える為にやってきてくれたのか」
青年はそうつぶやくと、最後のきび団子を口に放り込んだのでした。
(おしまい)
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白鉛筆さんnote4周年おめでとうございます!
朝から【白4企画】の文字を沢山目にしたことで
本日が企画応募日ということに気づくことができました。
みなさん本当にありがとうございます。
その後、白鉛筆さんの企画募集記事を確認し急いで書きました。
無事間に合ってよかったです~。
最後まで読んでいただきありがとうございました🐨