中国語小説の翻訳教室――神の代弁者になるために(『永不瞑目』43−47章)
肖童はなんとか麻薬への依存を断ち切りましたが、情緒不安定になり、欧陽蘭蘭とケンカばかりしてしまいます。ある日、彼女は体調が悪く、父と遠くの病院に行きます。帰ってくると、また些細なことで肖童とケンカします。欧陽天がついに見かねて、仲裁しようとします。
【原文】
“肖童,这种时候为什么你还要和她吵架?”
欧阳天这种公然袒护自己女儿的态度令肖童十分抵触。他没有回答就走向房门,想走出这栋令人窒息的房子。欧阳天拦住他厉声说道:“你没听见她在哭吗,这种时候你应该去安慰她!”
肖童站住了,他问:“她到底得了什么病?”
欧阳天愣了片刻,说:“还是让她自己和你谈吧!※1”
肖童示威似地顶撞着欧阳天:“她得了什么病她不跟我说,她拿她的病威胁我※2。她有病我可以照顾她,她于吗拿这个威胁我,她生病又不是我造成的!”
欧阳天一巴掌把肖童打了一个趔趄,骂道:“你他妈这是跟谁说话呢!她肚子里的孩子不是你弄的是谁弄的!”
【和訳】
「肖童、こんな時にどうしてあの子とケンカをするんだ?」
公然と自分の娘の肩を持とうとする欧陽天の態度に、肖童は強い抵抗を感じた。彼は答えもせず戸口に向かい、この息苦しい家を出ようとする。欧陽天は彼をさえぎり、厳しい声で「あの子が泣いているのが聞こえないのか、こんな時は慰めに行くべきだぞ!」と言った。
肖童は立ち止まり、「いったいなんの病気なんです?」と聞いた。
欧陽天は呆れて、「やはりあの子から直接聞くんだな!※1」と言った。
「なんの病気になったか言わないで、病気を使っておれを脅すんです※2。病気なら世話をしてやるのに、どうしてそのことで脅してくるんだか。おれのせいで病気になったわけじゃないのに!」肖童は強がるように欧陽天にたてついた。
欧陽天は平手打ちで肖童をふらつかせ、「誰に向かって口を利いてるんだ! あの子の腹の中の子供は、お前でなければ誰のしわざだ!」と罵った。
※1 直訳は「やはりあの子に自分からお前に話させるんだな!」だが、能動文に翻訳。「直接」で「自己」のニュアンスを出している。
※2 主語をざっくり省略。
欧陽蘭蘭は子供ができて嬉しいと言いますが、肖童は堕胎させようと説得を試みます。彼女は、肖童に見捨てられても自分一人で子供を育てると言い切ります。これで彼は自分の人生がお終いになったと思い、絶望します。そんなとき、建軍が珍しく彼に話しかけ、まだクスリは吸っているのかと聞きます。肖童はまた誘惑に負け、彼からタバコをもらってしまいます。
【原文】
那天晚上他听见欧阳兰兰在楼下和建军大吵大闹,痛骂建军杀人不见血没安好心。建军偶尔冷冷地解释说这是他自己非要不可,他现在是父以子贵※1牛X大了我怎么敢不给。但他的声音一再被欧阳兰兰的歇斯底里的叫骂和威胁压住,间或传来老黄息事宁人的劝解。肖童独自在楼上枯坐,面对着油灯慢慢吸完了一支海洛因。他的泪水无知无觉地滚落下来。他这时谁也不恨,只恨自己。他的堕落,失败和幻灭,都是自找的,都是因为自己的脆弱和无常。他白天的盼,夜里的梦,一点一点远远地离了他。他也不去追了,因为他累了。他一动都不想动,麻木地听着欧阳兰兰在楼下尖厉的叫声:
“建军,你毁他就是毁我,早晚我会让你后悔的!现在你别美,等咱们出去了再说!”
【和訳】
彼はその夜、欧陽蘭蘭が下で建軍に怒鳴り散らし、陰険で悪巧みばかりと痛罵するのを耳にした。建軍は時おり、冷ややかにこう説明した。あいつが自分から欲しいって言って聞かないからだ。社長の孫ができて※1偉くなったんだから、やらないわけにもいかんだろう。しかし彼の声は何度も欧陽蘭蘭の狂気じみた罵声と脅迫に押し返され、穏便に済ませようと黄がなだめる声が時たま伝わってくる。肖童は一人で二階につくねんと座り、ランプの方を向きながら、ヘロイン入りの一本のタバコをゆっくりと吸い終えた。涙が知らぬ間に流れ落ちた。彼はこのとき誰のことも憎まず、自分のことだけを憎んでいた。彼の堕落、失敗と幻滅は、すべて自分のせい、すべて自分の弱さと移り気のせいだ。昼の希望、夜の夢は、少しずつ彼から遠ざかっていった。彼も追わなかった、疲れたからだ。彼はぴくりとも動こうとせず、下の欧陽蘭蘭の甲高い声を無感動で聞いていた。
「建軍、彼を滅ぼせば私も滅びるのよ、いつか後悔させてやるんだから! まだいい気にならないこと、ここを出たら分からせてやるわ!」
※1 「父以子贵」は、子供が有名になり父の地位が上がるということだが、ここは意訳。
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