誰でも使える交渉術! 『ミラーリングとは?』
『ミラーリング(Mirroring)』とは、まさに鏡。 相手の言葉、態度、話し方、表情などを意図的に模倣するコミュニケーション技法です。ミラーリングは、人との親密さや信頼感を築くための方法として有効で、相手に「この人は自分のことを理解してくれている」という印象を与え、関係性を深めるのに役立ちます。
具体的な例としては、次のような方法が挙げられます:
言葉のミラーリング:相手の話した内容やキーワードを繰り返すことです。たとえば、相手が「最近、仕事が忙しくて…」と言った場合に、「そうなんですね、忙しいのですね」と返すことで、相手が話している内容に関心を示します。
態度のミラーリング:相手が腕を組んでいる場合にこちらも軽く腕を組んだり、相手が前のめりで話を聞いている場合にこちらも少し身を乗り出したりします。このようにして相手と同じような態度をとることで、リラックスしてもらいやすくなります。
話し方のミラーリング:相手の話すスピードや音量、抑揚に合わせることで、自然な流れで会話が進みやすくなります。例えば、ゆっくりと話す相手にはこちらも少しペースを落として話すと効果的です。
ミラーリングを使う際のポイントは、過度にやりすぎないことです。自然にさりげなく相手に合わせることで、違和感を持たせることなく信頼関係の構築ができます。
ミラーリングを行うと、相手は「この人は自分のことを理解し、共感してくれている」と感じやすくなります。これは無意識のうちに生まれる安心感や親近感を促し、相手がリラックスしやすくなる効果があります。その結果、相手が心を開きやすくなり、より本音で話しやすい雰囲気が生まれるのです。
そして、交渉においてミラーリングを使う具体的なメリットは以下の通りです:
信頼関係の構築:ミラーリングは、相手との親和性を高め、信頼感を築く助けになります。交渉では、信頼関係がある方が情報を率直に共有しやすくなり、お互いのニーズや価値観を理解しやすくなります。特に複雑な交渉では、信頼関係が合意形成の基盤になります。
相手の緊張を和らげる:交渉では緊張感がつきものですが、ミラーリングを通してリラックスした雰囲気を作ると、相手も緊張を和らげて交渉に前向きに取り組みやすくなります。これにより、相手が本来の意図や関心を表明しやすくなり、交渉がスムーズに進むことが期待できます。
自己開示の促進:相手が自分の立場やニーズを率直に話すようになると、より詳細な情報を得やすくなります。これにより、相手の目的や優先順位を理解しやすくなり、自分の提案や譲歩の範囲を戦略的に考える材料が増えます。
相手の反応を探る手段:交渉では、相手の真意や隠れたニーズを引き出すことが重要ですが、ミラーリングを使って相手の反応を探ることも可能です。たとえば、こちらが少し前のめりになると、相手も話に前向きになりやすいかもしれません。また、相手が態度や話し方を変えた際には、相手の本音や気持ちの変化を探るサインとなります。
このようにミラーリングは、交渉相手との心理的距離を縮め、互いのニーズや意図をより正確に把握するための効果的な手段です。
具体的な例で見てみましょう。
以下は、会社の上司の竹内さんが部下の今田さんと話し、ミラーリングを使って彼の気持ちに共感しながら会話を進める例です。
上司:竹内
部下:今田
竹内:「今田さん、この前のお客様の案件、進捗はどうですか?そろそろ最終確認に入りたいんですが。」
今田:「そうですね…一応進めています。ただ、効率が悪くて進まなくて。お客様からの要望もどんどん増えてきて、正直どう対応すべきか迷ってるところです。」
竹内:「お客様の要望が増えてきてるのね。確かに、大変かな。」
今田:「ええ、本当に無理な要望ばかりで…。しかも、その場その場で言われるので、作業がどんどん後回しになってしまいます。」
竹内:「その場その場で要望が来ると、作業が後回しになって、思ったように進まないよね。」
今田:「そうなんですよ! なんか、同じことの繰り返しになっている気がして…。 全体的に非効率で、やってもやっても終わらない感じです。」
竹内:「やってもやっても終わらない感じ、わかる。最近だいぶ疲れが溜まってる?」
今田:「…正直、はい。最近は帰るのも遅くなっていて、疲れが抜けきらないです。」
竹内:「帰るのが遅いものね。無理はしないでほしいけど、何かサポートできることある?」
今田:「ありがとうございます。ちょっとプロジェクトの優先順位が分からなくなってきているので、そこを見直したいなと…。」
竹内:「了解。じゃあ、今の状況と優先順位を一緒に整理しようか。」
今田:「ありがとうございます。優先順位がはっきりすれば、少しは気持ちも楽になりそうです。」
竹内:「そうね。無理せず、一緒に進めていきましょう。」
この会話の中で、竹内さんはまず仕事の進捗を確認していますが、今田さんが抱える不満や疲れに気付き、否定することなく共感的に対応しています。ミラーリングを通じて今田さんの気持ちを引き出し、彼が抱える負担を理解した上で、サポートを申し出ています。竹内さんの対応によって、今田さんも安心して本音を話すことができ、サポートを求めやすくなっている点がポイントです。
「ミラーリング」はあらゆる場面で使える手法です。
ちょっとした会話に応用してみてください。
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