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「読んでも読んでも感想が書けない」がなくなる、4つの読書テクニック

 感想が書けない!

 読書をしていてそう思う人は少なくないはずだ。読んでも読んでも書けない。書きたいけどしっくりこない、書けない。そういう人たちに処方せんをお届けしたい。

 ここでは書評家である僕が「本を読み始めてからSNSに感想を投稿する」までの過程をすべて明かしている。「感想の書き方」の一例になれば幸いだ。


140文字で感想が書けるようになる方法


 感想を伝えるってむずかしい。

 読み終わった本がせっかくおもしろかったはずなのに、その思いをSNSで伝えるのは躊躇する。友達にもうまく伝えられない。そんな経験がないだろうか。

 この記事を書いている僕は、書評家・文筆家として活動している。

 読んだ本はほぼすべて「#つじーの読書室」というハッシュタグをつけてSNS(主にX)に感想を投稿している。その内容をもっとふくらませて、noteやメディアに書評を書くこともある。

 ここでは僕が「本を読み始めてからSNSに感想を投稿する」までに何をしているのか。140文字に本のタイトルと感想がおさまる書き方を伝えたい。

吉田修一『国宝』の感想。感想、書影、文章の引用で構成している。

 本の読み方は多種多様だ。あらゆる読書家が集まっても、同じ読み方はなにひとつないだろう。僕の読み方のほん一部でも、読んでいただいた誰かの読書の参考になればとてもうれしい。

僕らには感想を書く筋肉が足りない


 僕はここ数年「感想を書く」までをゴールにして読書をしてきた。この姿勢が感想を書く上で実に大事なのだ。

 ランニングは走れば走るほど、もっと走れるようになる。読書は読めば読むほど、もっと読めるようになる。

 では感想は?そう、書けば書くほど、もっと書けるようになる。僕らに必要なのは「感想を書くための筋肉」だ。

 感想は「読んでおもしろかった」ときに書くものだと思ってないだろうか。答えは違う。おもしろかろうが、おもしろくなかろうが書いたほうがいい。

 なぜなら、おもしろかったときにいざ書こうとしても感想を書く筋肉が発達していなくて書けずに挫折するからだ。そして「なんでこんなにおもしろかったに書けないんだろう・・・」と自信を失っていく。肉離れによる長期離脱まっしぐらだ。

 僕は全体を通しておもしろさを感じなかった本でも、どこかにおもしろ要素を見つけ、そこに焦点を当てて感想を書くようにしている。

 感想を書く筋肉の鍛え方も多様だ。「本を読み始めてからSNSに感想を投稿する」という過程は、筋肉の鍛え方と言いかえることができる。

 後で詳しく書くが、僕は一発で感想を書くことはしない。一度に負荷を大きくかけるのではなく、負荷を小分けにし分散させて感想まで行き着くようにしている。

1.とにかくふせんを貼りまくれ


 僕が読書するときに絶対必要なアイテムがある。

 それが「ふせん」だ。

 補足すると僕はマンガを除いて紙で本を読む。もし電子書籍がメインの人は、ふせん機能などを代わりに活用してほしい。

 本を読んでいて気になった箇所のページにとにかくぺたぺたとふせんを貼っていく

 心に残った言葉、印象的な場面、よく分からなかった部分・・・いい意味でも悪い意味でも何か心に引っかかったらひたすら貼っていく。

 僕は使うふせんも決めている。ポスト・イットのスリム見出し(ミニ)だ。ページの端に貼っても、本の文字が隠れないぐらい小さいのがいい。お気に入りだ。

ふせんは写真のように貼っている。細くて小さいのであまり目立たない。

 ふせんを貼りながら一読したら、この時点で感じたことを箇条書きでメモしてもいいだろう。ノートでもスマホのメモでも後で読み返せるならなんでもいい。

 たとえ「おもしろかった!」だけでも、そのときの感情を残しておくのは素晴らしいことだ。

 ただし、僕自身はここで感想を書かないことの方が多い。必ず書かないといけないわけではないことは記しておきたい。

 この工程で大事なのは「迷ったら貼る」という気持ちだ。とにかくふせんを貼っておけばいい。それくらい大胆に貼ってほしい。

 なぜならこのふせん、どうせ「全部はがす」からだ


2.ふせんのはがし読みをせよ


 ここで僕は声高に叫びたい。「もう一度読もう」と。

 2回読むなんて面倒な・・・と思うかもしれない。全部読むわけではない。「ふせんを貼った箇所だけはがしながら読む」のだ。

 1回目のようにじっくり読む必要はない。ふせんをはがしながら「こんなこと書いてあったな」とか「2回目の方が理解できてる気がするな」と思いながらページをめくってほしい。

 そう、一度読んだ本だから2回目の方が理解が進むし読むスピードも速くなる。思いのほか読むのに時間がかからないのだ。

 この段階で僕は「biblog」というアプリに文章の言葉を保存するため、特に気に入った言葉を5つまで選んでふせんをはがさず残しておく。biblogについてはまた項を改めて説明する。

 そうして本を2回読んだ後、必ず感想をメモする

 僕も本をざっと一度読んだだけでは、なかなかしっくりくる感想は浮かばない。だったら倍速で2回読めばいいのでは???これが僕の読書の肝になている。

 1回読んだより2回読んだ方が感想が浮かんでくるのではないだろうか。

 これは2回目は既に内容をある程度知ってから読んでいるので、頭に余裕があるからだ。あれこれ考えながら読みやすくなっている。しかも読んでる箇所は自分が気になったところだけなのだからなおさら効果ありだ。

 ちなみに僕は使うノートも決めている。プレミアムCDノート のA5方眼罫だ。友達にプレゼントされてから十年以上使っている相棒である。

三島由紀夫『絹と明察』の感想メモ。字が解読不能なのはご愛嬌。
メモを元にした実際の感想はこちら


3.biblogを使って抜き書きしまくれ


 僕が愛用している読書関連のアプリに「biblog」がある。

 これに出会うまで僕は、本を読んで気になった言葉は読書ノートに手書きしていた。書きすぎないようにと1冊に5つまでと絞っていたが、それでも時間のかかる作業だった。

 biblogは、本のページを撮影して、言葉を選択するだけで、コレクションカードのように保存できる。本ごとに、タグごとに分類もできて非常に便利だ。

 感想が自分の考えたことだとすれば、biblogにコレクションした言葉は自分に残しておきたいものだ。これらは大きく違う。

 だから僕は感想とは別に、気になった言葉はbiblogに残すようにした。名言だけでなく、初めて知った興味深い事実なども保存するようにしている。


4.さあ、感想を書いてみよう


 ここまできたらSNSに感想を書いてみる。ノートに書いた感想や、biblogでコレクションした言葉を眺めて組み合わせながら言葉をつむいでいく。

 気をつけてほしいのは「あらすじを書くのは最後の手段」ということだ。

 自分が何を感じたか、「発見!(ユウレカ!)」と思ったことをできるだけ中心に書いてみる。うまくいけばあらすじに触れる字数の余裕はないはずだ。

 あらすじで字数が埋まった無色透明な感想を世に放つなんてもったいない。僕が読みたいのは「あなただけの感想」だ

 感想を書くときに言葉が浮かばないという人は、自分が読書をしているという強みをもっと活かしてほしい。

 読んでいて気に入った言い回しをどんどん使ってしまえばいいのだ。書くときはもちろん、しゃべるときもだ。使えば使うほど自分の言葉としてこなれてくる。

 ちなみに僕が言葉の使い方で幼少期に影響を受けたのは、アナウンサーの古舘伊知郎の実況文句だ。

 一見なんの関連もない言葉と言葉を結び付けて異名を作ったり、実況の言葉にする手法は、僕の言葉使いだけでなく、ジャンルを飛び越えて「越境」する発想の原点のひとつになっている。

 序盤にも書いたが大事なのは「感想を書く筋肉を鍛える」ことだ

 何度も繰り返し短くても感想を書くことで、少しずつこなれた感想があなたの手元にあらわれるだろう。

 そして繰り返すにつれて、自分にしっくりくる読書の仕方や感想の書き方が出てくるだろう。いつか「あなただけの感想の書き方」が見つかることと切に願っている。

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辻井凌|つじー
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