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点が線で繋がっていく感覚が楽しい

先日、コルクの佐渡島さんのnoteを読んで、平野啓一郎さんの新作「富士山」に興味を持った。

また、佐渡島さんは下記noteで「良い創り手であるためには、まず良い読み手であれ」とおっしゃっており、良い文章の代表例として挙げられていた平野さんの本を読むのがとても良いのではと思ったのだ。

早速図書館で借りて読んでみた。すごく面白かった。
私はあまり短編集が好みではない(読み終わった後の達成感が長編に比べて劣るため)ので、どうだろう?と思って読んだが、5編の全てがとても濃厚で面白く、リアリティがとても高かった。
このリアリティが佐渡島さんのいうところの「わかりやすさ」に繋がるのかもしれない。「最低限の文章で、伝わってくる情報量がすごく多い。」というのも納得だ。

マチネの終わりに を読んだことがあったけどそれ以外はなく、平野さんの作品に触れるのはこれが2回目。
非現実感がありながらも、どこか自分の現実と地続きのようなリアリティがあり、読みながら面白さと恐怖を同時に感じさせられた。(私はドキドキすることが苦手なので、これがもし長編だったら途中でリタイアしていたかもしれない)

読んでいて、登場人物の見ている景色や心情の変化が違和感なくすっと入ってきて、”うんうん、こういう感覚であるよね”と思いながらするすると読み進められるので素通りしてしまいそうになったが、ではあなたはこの文章が書けますか、といわれると全然書けない。
同じことを感じているのに、自分がそれを言語化しようとすると、どんな文章を書けばいいのか全然想像できないのだ。

その事実に気付くと、なぜこの表現が分かりやすいのだろう?などと考えるようになり、また本と新たな出会いが出来たような気がする。
ここは簡単に答えが出ないので、またじっくり向き合っていきたい。


また別のnoteからも新たな作品に興味を持った。
ユリタコさんのnoteで言及されていた映画「メッセージ (Arrival)」だ。

映画『メッセージ (Arrival)』で描かれていたように言語が思考を規定するというのはあると思います。英語、スペイン語、日本語の3か国語を学んだ個人の実感としてそう思います。

ユリタコさんnoteより

”言語が思考を規定する”という言葉が何とも興味深く(しかもユリタコさんは実感されている)、早速映画を見てみることにした。

こちらもまたとても面白かった。
私はこれまでSF映画というものを興味をもって見たことがあまりなかったけど、これはとても好みの映画だと感じた。
私が好感を持ったのは、現実世界ではありえないSFの世界観でありながらも、もし自分だったらどうするだろう?という”問い”を投げかけられる感覚があることと、全体的に静かで知的なところだ。言語が思考を規定するという内容も、映画を通じてより一層自分の中に色濃く残った。

コミュニケーションを取れる人が増える、自分の表現の幅が広がる、というのが私の中での新たな言語を学ぶことにより得られるもの、という認識があったけど、自分の脳を切り替えることができる(本編表現: you can actually rewire your brain)というのは何とも面白いしぜひ経験したいと思って、言語を学ぶための新たな良い動機になった。

余談ですが、こんなにも自分の知的好奇心を刺激してくれる映画は初めてで、日本語で見た後すぐDVDを入手して、英語字幕でも見てしまった。英語の勉強(自分の脳の切り替えへの第一歩)も同時に味わえて嬉しかった。


平野啓一郎さんの富士山、映画メッセージ。
どちらも非現実でありながら、自分の現実と地続きのような感覚があり、日常に新たな視点をもたらしてくれた。

この感覚、どこかで触れたことがあるな?と思い、振り返ってみると、近内悠太さんの「世界は贈与でできている」だと気付いた。

あるいはSFの機能、すなわち逸脱的思考の機能をこう表現することもできます――僕らが忘れてしまっている何かを思い出させること、忘れてしまっているものを意識化させること。

世界は贈与でできている(近内悠太) p177 

確かに私は映画を見たあと、本を読んだあと、改めて自分の日常を見返したときに、当たり前に過ごせている毎日が実はとてもありがたいものだと気付いて改めて感謝したり、目の前の大切な人が生きていることが尊いことだと身に染みて、目を細めたりする。
これが逸脱的思考か・・・と実感したのでした。


noteや今読んでいる本などで紹介されている新たな作品に触れることで、じわじわと自分の世界が広がっていくのが楽しい。
出会った作品たちのエッセンスの抽象度を上げていくと、必ずどこかで繋がるところがあって、そういう作品に出会えていることも面白い。(自分が意識的に繋がりを見出しているのかもしれないけど)

その時はわからなくても、思いもよらないタイミングで点が線になったりする。
これからもまだ見ぬ作品たちに出会い、自分の価値観が広がり、軸が作られていく感覚を楽しみたい。

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