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介護日記2#74その4 訪問ヘルパーをしていた頃の話~四肢麻痺体重100kg~

かなり昔になるが、ヘルパーをしてた頃に担当し、とても色々な意味で勉強になった方がいた。

教科書でしか知らなかった器具や装備などなどあらゆる事で学ぶ時間となった。ヘルパー経験はデイサービスの職場や母の介護にとても役にたった。
全ては今に繋がっていると感じている。

過去のヘルパー記事です。
お時間のある時に読んで頂けると嬉しいです。


~四肢麻痺 体重100kgの方のケース~

その方は男性。
40歳代位だったと思う。

事故で首から下が麻痺。
全ての事に介助がいるのだが、家族とは死別しており天涯孤独。
しかし生活保護の手続きをしていることで、アパートで独り暮らしをしながらあらゆる介護サービスを入れて生活が出来ていた。


私が所属している事業所より、私に受けてもらいたい仕事があるからどうかと云われ、訪問してみることとなった。

その利用者様のサービスは元々は主となる別の事業所だけで受けていたが、手が足りなくなった為に補足的にサービスに入って欲しいとの事だった。

ご本人に会う。そして同行して下さっている慣れている他事業所の2人のヘルパーさんと一緒にサービスに入り、物の場所、段取り、注意点など説明を受けながら要点を押さえていく。

私が入る予定のサービスは私だけで対処するようになるとの事。

様々な事にびっくりしたのを覚えている。

100kg近い身体でベッドに寝ていて首から上だけは動く状態。四肢麻痺の方に対面したのは、はじめてだった。

その状態でもアパートで一人暮らしをしている事。
それは、さすがに衝撃を受けた。
可能なんだということや、一人暮らしをしたいという意欲がある事とか。

その方にはかなりの麻痺が有るが、頭脳、感覚は抜群で。
普通に話しは出来た。
というより、色々な事がほんの一言、一動作で解ってしまう。
見透かされていると感じた。

きっと人の感情が読み取れる。
懸命に生きてきた事で、目に見えない物を感じとる力が備わったのだろう。

私の行うサービスはそこから入院されるまでの半年程の短期間だったが、貴重な経験だった。

身体的には寝たきり、在宅酸素、ストーマによって命を保てている状態。

私の役割は主に朝食に関わるあれこれと室内の掃除や車椅子の充電や酸素ボンベの確認やその他雑用だった。

朝食は食パンを焼き、卵焼きをレンジで作る。果物を添えて完成。短時間で準備し食事介助。食べ終わると部屋の掃除。
その他、日によって手紙を読んだり、ご本人が気になると言われる所を片付けたりだった。
皿をしまう場所は1皿1皿指定され、冷蔵庫の物の位置や何があるかまで把握されていた。スムーズに物事が上手く行く為、最終的にはご本人自身が困らない為だと話して下さった。

全て本人が口頭で指示。

その通りに行う。

一つ一つのサービスは特別難しく無いのだが、打ち解けるまではかなり緊張していた。何回か回を重ね、慣れてくると少しずつ身の上話をして下さった。



麻痺になった事故の事
亡くなった家族の事
施設には今は入りたくない事



どのヘルパーにもそんな話をしているのだろうがその時、穏やかな顔で話されていた様な気がしていた。

ある時、外出予定があり嬉しそうにしておられた。
車椅子対応の公共交通機関のバスに乗るという。
今から20年程前の事。

私の在室している間に、主たる別の事業所所属の慣れたヘルパー2名が訪問。初期に仕事の細部を指導してくれた若い女性2人組。仕事はテキパキ、時折笑いが出る程明るく接している。見習わなければと思う。そんな2人に利用者様も絶大な信頼を寄せているのを感じた。

先ずは電動車椅子に電動リフトで移乗。なんせ100kgもある身体なのでリフト無しでは到底無理。
そして在宅酸素を携帯酸素に切り替え予備酸素を何本も車椅子に詰め込み、移動時に必要な七つ道具?を持参してさあ出発。

1名対応ではなく2名対応に
まずびっくり。
外出する事にびっくり。
リフトにびっくり。
びっくりする事ばかりだった。

外出準備中に、その2人のヘルパーから外出時のトラブルの話しも、聞かせて貰った。

車椅子は電動なので、普段は力がいらないが、ある時バッテリーが切れてしまい手押しで移動しなければならなくなり物凄く大変だったらしい。なんせ総重量100kg以上ある車椅子を押すのだから、とんでもない体力がいるはず。

でも楽しい時間ではあったようでご本人、ヘルパー2人で「そうそう、そんなことあったよね、大変だったな」と笑って話していた。




なかなかこれは大変だと感じながらの仕事だった。
しかし、この方はちゃんと自分の意思で生きている、そう感じたサービスだった。

その後数ヶ月後、体調不良で入院されサービスは終了。
私自身も介護の仕事を一旦辞める事になったのでその方の事はそれ以上解らないが、お元気で過ごされている事を祈りたい。

母も似たようなものだが。

本人の意志があまり聞けないのがちょっと残念。痛みと苦痛が無い様に、居心地の良い時間が少しでも保てる様に表情を読み取りながらこれからも努力したいと思う。

読んで下さってありがとうございます
今日も明日も良いことがありますように(コスモス)




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