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悩み尽くして、一旦の解を更新する
ある日、書店でふと手に取った「戦略」に関する書籍を読み、衝撃を覚えた。
「『戦略』の最重要要素は『目的』と『資源』である」という内容が描かれていたが、この記述は私の思考を一瞬で停止させた。
「戦略とは、目的を達成するために資源を適切に配分すること」だとすると、『私の人生における「目的」とは何なのか?』『自分は本当は何を求めているのか』『何を成し遂げたいのか』『何をすれば人生に満足するのか』について再度考えざるを得なくなった。
ビジネスの世界では、目的なき戦略は無意味とされる。同様に、目的が不明瞭な人生は、ただ流されるままの毎日なのかもしれない。こうして問いと向き合う日々が始まった。
このテーマは、実は哲学の歴史においても繰り返し問われてきたものだ。
ヴィクトール・フランクルは、書籍、『夜と霧』の中で、「人間は生存するために意味を求める存在である」と述べている。
人生の目的とは、「外部から与えられるものではなく、自らの内側で構築し、発見していくもの」とも考えることができる。
試行錯誤の末、私は人生の目的を単一の明確な答えではなく、複数の領域にまたがる重層的な集合体として捉えるべきだと考えるようになった。そして、それを具体的な行動指針へと落とし込むため、私は6つの領域に整理した。
6つの領域とは、「内的充実」「外的達成」「関係性」「健康・身体」「体験・冒険」「貢献」である。
内的充実 では、精神的な安定と価値観の深化を重視し、自己の本質的な探求を続けることにした。外的達成 においては、経済的自立と革新的な創作物の創出を目標とし、自己実現の基盤を築く。関係性の領域 では、家族との安定した関係を軸に置き、友人との交流も視野に入れる。健康・身体 では、体力維持、食事管理、睡眠、メンタルケアを生活の基盤とした。体験・冒険 では、旅行や異文化体験による視野の拡大を求めつつ、趣味を通じた日常の潤いも大切にする。そして最後に、貢献の領域 では、人生の使命や意義の探求を掲げ、長期的な社会貢献と意思の伝達を視野に入れた。
このように目的を多層的に設定することは、心理学的にも重要な意味を持つ。
改めて心理学的要素から捉えると、デシ&ライアンの自己決定理論(Self-Determination Theory)によれば、人が内発的動機を持つためには「自律性(Autonomy)」「有能感(Competence)」「関係性(Relatedness)」の三つの基本的欲求が満たされる必要がある。
私の考えた6つの領域は、まさにこの三要素を反映したものになっている。
人生の目的を定めることは、単に「何かを成し遂げる」ためではなく、自らの生き方に対する主導権を握る行為そのものなのかもしれない。
また、このプロセスは経営戦略の視点からも考察できる。経営学におけるリソース・ベースド・ビューの視点を通すと、「希少で独自性のある資源こそが競争優位をもたらす」との記述がある。つまり、人生においても、限られた時間・エネルギーなどのリソースをどのように活用するかが、目的の実現を左右する重要な要因となる。
しかし、目的を明確にしたとしても、それを実行に移さなければ意味がない。漠然とした目的は、行動のきっかけになりにくい。だからこそ、SMARTのフレームワーク(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)を活用し、目的を具体的な行動目標へと落とし込むことが重要になる。例えば、具体的な数値を設定することで、目的はより実現可能なものとなる。つまり、目的・目標には実行可能な戦略が必要とも言える。
こうした考察を経て、私はある種の結論にたどり着いた。
それは、「人生の目的とは固定された終着点ではなく、常に発展し続ける動的な概念である」ということだ。そして、そのためには「今できる最良の解を見出し、進み続けること」が重要だということだ。
目的を持つことで、日々の選択に「意味」が生まれ、それが新たな道を切り開く。だからこそ、完璧な答えを求めるのではなく、常に「一旦の解」を更新しながら、前へと進み続けることが大切と言えるのではないか。
今回の悩み尽くしたこのプロセスこそが、動的な概念を表すとも言えることができる。戦略的な人生設計とは、この悩み尽くすプロセスを通じて得られるといえ、複数の再解釈とその更新事項が「良い戦略」のもととも言えることができる。「自律的な生き方」に繋げるとすれば、目的の設定、リソースの最適化、具体的な行動目標の策定、計画的な実行、評価と再調整。それらを繰り返しながら、自らの人生の航路を更新し続ける。
もしかすると、この手続きは完璧ではないかもしれない。しかし、それが「私にとっての最適解」を導く、最も戦略的で継続可能なアプローチと言える。
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