SMARTじゃない問い
あなたは最後にどのような「問い」を立てましたか?
ビジネスにおいても人生においても、正しい答えを見付けることと同じぐらい、適切な「問い」を設定することが重要です。
かのアインシュタインは、「私に1時間問題を解く時間があれば、55分を問題を理解することに使うだろう」という言葉として残していますが、この言葉は直接的とは言えませんが「問い」を立てる大切さ、また「問い」を理解する大切さを示すとも考えられます。
この文章ではビジネスの文脈において、効果的な問いの設定方法について探ります。
ではまず、なぜ「問い」が重要なのでしょう?
ビジネスにおいては「問い」が戦略面においても戦術面においても方向性を決定する為と言えるためです。
例えば、ある製品開発を行っている企業において、「競合他社の機能をどうすれば上回れるか?」という問いを立てた場合と、「顧客は日常生活のどのような課題に直面しているか?」という問いを立てた場合、方向性だけでなく、工程及び最終的な完成品には差異が出ると言えます。
次に、「問い」が思考の枠組みを規定するとも言えることができます。
例えば、交通渋滞の解決をはかる場合、「道路をどう拡張するのか?」「なぜ人々はこの時間に移動するのか?」「移動を減らすのか?」によって、先ほど示した思考の方向性だけでなく、アプローチや解決案、限界や可能性、解決方法の特徴まで変わってくるというフレームワークにも言及できます。
そして、「問い」が組織の文化を形成するという人の側面にも言及することができます。
例えば、保守的で防衛的な文化では、リスク回避的な行動になりがちなのに対して、学習する文化では、積極的な挑戦という、スタンス自体に変化を与えることが可能です。
また、「問い」がリソース配分も決定するとも言えます。
経営戦略においては、限定的な「どうすれば人材の生産性を高めることができるのか?」という問いを設定した場合と、視野を広げる「AI時代の当業界における人材とは何か?」という問いによって、実施する取り組みだけでなく、ビジネスモデルの変化にも言及することが可能と考えます。
では、実際にどのように効果的な問いを設定するにはどうすればいいのでしょうか?
・コンテキストの理解(現状分析)
・目的の明確化(成果の定義、制約条件)
・問いの形成(仮説の設定を含む)
・問いの階層の理解(表層と本質)
・問いの質を高める(二者択一から離れる、時間軸の意識)
・問いの検証(修正と再仮説)
などが挙げられます。
この時によくある落とし穴は、
・過度に広範な問い(限定的な方が成果を達成する場合もあります)
・前提に縛られた問い(既存の制約条件に縛られている)
・否定的な問い(事象への他責・否定的なスタンスは短期的な対処にしかならない)
などが挙げられ、適切な「問い」を立てることは簡単とは言えません。
その一つのツールとして、「SMART」というフレームワークが存在すると考えています。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Relevant(関連性がある)
- Time-bound(期限がある)
これらは明らかに「問い」の設定に一定の枠組みを提供し、実務でも使われる場面も多く見られます。
一方で、具体性を重視するあまり本質的な課題を見失ったり、過度な定量要素への偏重、達成可能を重視するあまり、制約条件のループにはまり、ムーンショットなアイデアの抑制につながる場合も存在します。
そのためには、「問い」自体の再定義も必要と言え、単純化しすぎず複雑性を受け入れたり、短期的な成果に変調することなく時間軸毎の問いを設定したり、制約を制約として動かさない為に逆説的な捉え方をするなど、あらゆるアプローチが存在します。
結果的に、ビジネスにおける成果の多くは、適切な「問い」を設定することから始まります。
効果的な問いの設定は、単一のフレームワークに依存するだけでなく、複雑性・多角的なアプローチを受け入れた上でのSMARTな発想をすることが肝要と言えます。そして、コンテクストに対して、柔軟な「問い」を設定することは問いそのものを問い直す過程とも言うことができると考えています。
前述の通り、「問い」の質が、その後の解決策の質を決定づけると言っても過言ではありません。効果的な「問い」の設定ができることは、より良い意思決定と解決への道筋が開かれるとも言えることができます。
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