見出し画像

地震雲ってほんと?/防災士で自衛隊でも気象観測業務の経験があるから言えること

こんにちは、よしっさです。

元海上自衛官です。気象観測のプロフェッショナルとして業務に従事していました。

詳しくは自己紹介の記事を見ていただければと存じます。

話はタイトルの地震雲についてです。

地震の直後にはTwitterを始めとする様々なSNSで

「地震雲をこの前見た!」

というような雲の画像の投稿を見かけますが、疑問に思われている方も少なくないと感じますので解説的に記事を簡単に書いていこう思います。

まず簡潔に、地震雲と呼ばれる画像は特殊な雲ではありません。ほぼ間違いなく高度の高いところに現れる巻雲、または高積雲の類になります。

気象庁が気象観測指針と呼ばれる事業者向けの気象観測の手引きを示した冊子がありますが、雲はほぼ10種類に区別されています。

それぞれは個々の形、現れる高度などで区別されています。

そして、いわゆる地震雲として出回るのはほぼ高度8000〜1万メートルに表れる巻雲か飛行機の通った後にできる飛行機雲です。

そして地震雲と思い込む雲が現れている画像を見て言えることは、

天気が下り坂になる前、ジェット気流が日本上空にある大気の状態です。

これは私が少なくとも10年以上気象観測業務に携わってきた結論です。

では仮に、本当に地震雲が明確にわかるものとしたらという前提で解説していきます。

そもそも気象観測の中でも取り分け、飛行機の運用スケジュールに影響する要素は緊急性が高い事項として世界気象機関(WMO)と国際民間航空機関(ICAO)のルールに従い場合によっては観測したら速やかにデータを気象、航空専用の全世界向けネットワーク上にアップロードするように示されています。

地震が起きたら滑走路がダメージを受け、その状況のまま飛行機が着陸すると最悪搭乗者全員が悲惨な結末を迎えることになります。

ですから被害を抑えるためにも地震雲があれば当然最優先事項に近い形で全世界向けに発信する必要性があります。

ところが地震雲という観測要素自体がありません。

気象観測は長期にわたって保存されますし、重大な事故、災害につながる事例は間違いなく語り継がれます。例としては数百年以上前から伝えられている三陸沖の津波ですね。

しかし地震雲については過去の事例を見かけるどころか伝聞でもありません。当然、歴史としての史料もありません。

何より、プロフェッショナルとして行う気象観測は、晴れた日だけではありません。雨はもちろん、台風そして夜間にも観測します。

夜に雲なんか分かるの?

と思われるかも知れませんが、夜間に観測方法についても前述の気象観測指針には示されています。例を挙げるなら夜は目が闇に慣れるのに3〜5分かかるため定時の観測の際は事前に目を慣らすようにと書かれています。

業務として夜間の気象観測をしていれば、たとえ夜でも雲の高度も区別がつくようになります。

そこで翻って、さぁ地震雲について騒ぐ人たちは夜に空を見ていますか?

また、台風、雪、雨の日に空をしっかり見たところで低い雲に覆われてしまい、高い高度の雲を見ることができません。

それではいわゆる地震雲が仮に出ていたとしても意味がありません。

地震雲のようなオカルトで根拠のない事象で不安を煽られるのではなく、事前に防災グッズなど用意し普段から避難生活に対する準備をしておくことをおすすめします。

地震雲については個人のブログでもより詳しく書いていますのでよかったら見てやってください。

ネットで見る地震雲って本当にあるの?/元自衛隊・気象観測専門職が解説します

以上です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?