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mainosuke
まぼろしを織る ほしおさなえ著
”生きる意味なんてもうどこにもない気がするのに、次の朝を迎えてしまう。”
序章からせつない文章で始まるこの物語。
主人公の槐(えんじゅ)は、幼い頃に父と離縁。母とは死に別れている。少し潔癖ぎみの性格で物事に白黒つけたい性格。叔母の伊予子と一緒に住んでいる。
槐は、母に言われ「何者か」になろうともがくのだが、結局空っぽな人間である自分に気付く。”生きるのがしんどい。生まれ落ちたら死ぬまで生き続けなければならないというだけ。・・・”という思いを抱えながら。
ある日、染織家の祖母の法要の時、いとこの綸が伊予子の家に来ることを告げられる。綸は、事故に合い、気持ちがふさいでおり、彼の父と折り合いが悪いので転地療養をするようだ。
槐は、自分ばかりでなく綸まで世話をしようという伊予子に納得がいかない。慈善家なのか、ただのお人よしなのか、と。
この後、一緒に暮らし染織をすることを通して槐も綸も伊予子も成長していく。彼女らの成長を通して、読者も「ただ自分の人生を生きていっていいのだ」と後押しされる。