なつめ

あなたの読みたい本が見つかる。無類の本好きが、読んでよかった本の紹介をしていきます。時々エッセイも。コメント、フォロー嬉しいです。

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  • 面白い本の紹介

    無類の本好きが、実際に読んで面白かった本を紹介しています。 読書や本に興味のある方におすすめ!

  • 日常のエッセイ

    内向型の私が日常で感じたことを綴ります。

最近の記事

愚か者の石 河﨑秋子著を読んで

長編監獄小説。 明治時代、北海道開拓のため、囚人たちは刑の軽重に関わらず、長期間の労役を課されていた。 そんな中、わりと軽い罪で捕まった巽は、2人を殺める重い罪の囚人、大二郎と同房になる。大二郎は、いわゆる法螺吹きだが、明るくみなを楽しませる愛嬌がある男だった。 巽にとっては、つらい囚人生活の中でも大二郎と時間をともに過ごせたのは、幸運だったのではなかろうか。 その大二郎は、小さな石を大切に隠し持っている。タイトルにもある通り、この石は物語のキーになっている。 よき相

    • 科捜研の砦 を読んで

      1話目『罪の花』 科警研の尾藤の仕事ぶりになんだかもやもやしながら読み進めたが、科捜研の砦こと土門が現れることで、私も尾藤も心が晴れやかになる。 土門誠という人物は、不愛想だけれど、科学捜査に対する真摯な態度がかっこいい。愛想のない頼れるスーパーマンのような存在。そんな存在をどこかで待ち望んでいる自分がいるんだろうな。彼の裏表のない実直な姿がとても魅力的に思える。 2話目『路側帯の亡霊』は、交通捜査課の三浦のイライラから始まる。1話目の尾藤の時もそうだけれど、なぜ、この登

      • 難問の多い料理店 結城真一郎著 を読んで

        『転んでもただでは起きないふわ玉豆苗スープ事件』をはじめとする6編の短編ミステリ。 異色の探偵は、”ゴーストレストラン”のシェフ。美しい容姿にマジックミラーのような無機質な瞳でどんな難問でも解いてしまう。 探偵の助手?は、ビーバーイーツの配達員。「もし、口外したら、命はない」とシェフに言われるが、報酬につられて調査を手伝う。 この物語の魅力は、何といっても探偵のシェフの手腕とミステリアスさ。安楽椅子探偵のように配達員の調査内容から推理して謎を解く様子がお見事。 そして

        • Timer 世界の秘密と光の見つけ方 白石一文著 を読んで

          生と死をテーマにしたSFということでいいのかな。 ”Timer”を装着すると89歳まで健康に生きられる。(89歳になると死ぬ)若さ維持にも効果絶大。つけてもつけなくてもいいが、付けられる年齢は決まっている。 噂では、Timerの外し屋がいて、89歳までと言う時限設定が解除でき、その解除が成功すると200年、300年と生きられるらしい。 もうすぐ89歳を迎えるカヤコは、その外し屋について興味を持ち、調査を始める。 彼女の夫は、この物語の語り手であり、Timerを着用して

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          29本
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        記事

          娘が巣立つ朝 伊吹有喜著を読んで

          よくこの題材で書いてくださったなあ、と。 万人受けする内容ではないだろう。感動系を期待して本書は手にとらない方がいい。 むしろ人生のドロドロした部分が向きだしになった物語だ。 私には、とても響いた。 役職定年が迫った夫。不機嫌な夫に辟易している妻。なんだかもやもやする毎日の夫婦。 そんな時に一人娘が結婚することになった。親にとっても人生における大イベントだ。 しかし、そこに苦悩はつきもので。 親は誰しも子の幸せを願うものだから。 娘が連れてきた息子はなかなかの好青年

          娘が巣立つ朝 伊吹有喜著を読んで

          令和元年の人生ゲーム 麻布競馬場 を読んで

          直木賞候補作。読みやすい文体なのに難解と感じる。Z世代の生き方を問う物語…と言えるのかな。 第1話 平成28年 語り手は、慶応義塾大学に入学した僕。ビジコン運営サークル「イグナイト」に入った。目指すは、アツい志をもった代表の吉原。代表戦に敗れ、ビジコン運営を批判してくる沼田は嫌な奴だ。 第2話 平成31年 語り手は、早稲田大学を卒業して一流企業宇治田社長率いる「パーソンズ」に入社した私。「新人賞目指して、1年目からアクセルべた踏みでバリュー出しまくってください」と新人社員

          令和元年の人生ゲーム 麻布競馬場 を読んで

          魂婚心中 芦沢央著を読んで

          表題作含め6篇のSFミステリ 1.表題作『魂婚心中』 幼少時から「なんか変」と言われていたりっちゃん。推しに救われ、推しにはまる。マッチングアプリ「KonKon」で独身者は、死後結婚ができる世界。不穏な展開。ラストはバッドエンドともハッピーエンドともとれる。 2.ゲーマーのGlirch 近未来のゲームで行うリアルタイムアタックの物語。本当にありそうなゲームの実況が、流れるように進んでいく描写はお見事。ゲームの映像がありありと浮かぶ。そして、ゲームにからめたラストもお見事。

          魂婚心中 芦沢央著を読んで

          不夜島 ナイトランド 荻堂顕著

          日本推理作家協会賞を受賞した本作 舞台は、第2次大戦後の沖縄・台湾。 ただし、パラレルワールド的なSFの世界。 未読の方で、前情報なしで読まれたい方はここから先は見ないでね。(少しネタバレあり) ↓ ↓ ↓ この小説のSF要素としてまず人間が義肢をつける(サイボーグ化すると言っていいかな)ところにある。その描写が、漫画『コブラ』のサイコガンを思い出す。(知っている人いますか?) そして、四肢だけでなく内臓や脳!までもが機械化してしまう人もいるという。 電脳になると話さな

          不夜島 ナイトランド 荻堂顕著

          直木賞候補作 われは熊楠 岩井圭也著を読んで

          上品かつ生々しさもある小説。 「奇人にして天才」生物学者の南方熊楠の物語である。   熊楠は、幼児の頃から頭の中で響くいくつもの自分の声「鬨の声」が聞こえていた。この声をかき消すには、物事に集中するよりほかない。 類まれなる記憶力の持ち主。そして癇癪もち。自分自身の頭の中と折り合いをつけていくためにもひたすら興味のある学問に没頭する。 座学が嫌いで、外へ出かけ生き物を採集したり観察したりするのが熊楠の学問。 父の死後は、幼い頃から天狗(てんぎゃん)と慕ってくれる弟からの

          直木賞候補作 われは熊楠 岩井圭也著を読んで

          道尾秀介 Nを読んで思うこと

          話題作が文庫化されましたね。全六章。読む順番で世界が変わる。道尾先生の『N』 720通りの物語。 自分で読む順番を決めて読んでみた。 その結果… ※少々、辛口なのでここから先は、辛口が気になる方やこの作品のファンの方はご注意ください。 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 道尾先生の『カラスの親指』とか大好きなんです。 それと比べると、個人的には物足りなさを感じてしまいました。 読む順番によって、わかっている事柄が変わってくるので大筋の物語の印象は変わります。 けれど、1回通して

          道尾秀介 Nを読んで思うこと

          〈読書記録〉東京ハイダウェイを読んで

          第1話から、この文章に胸がちくりと痛む。私自身、融通が利かないタイプだから。そして、この後の、矢作桐人がどうなるか気になって読み進める。 東京・虎ノ門の企業に勤める桐人は、念願のマーケティング部に配属されるも、同期の直也と仕事への向き合い方で対立し、息苦しい日々を送っていた。 直也は、まわりとのコミュニケーションを大切にしつつ仕事も効率化を重視するタイプ。 一方、桐人は、時間と手間のかかる手書き風POPを作って、店舗を応援しようと努力しているが、時間と手間のかかるそのや

          〈読書記録〉東京ハイダウェイを読んで

          いくつになっても恥をかける人になる 中川諒著 〈読書記録〉

          いいタイトル、いい内容の本だった。 カラオケで空気の読めない曲をいれる人だと思われたくない レストランで違う料理が運ばれてきても何も言わずに食べる こんなこと、ありませんか。 情けないことにどちらかというと、私はこんなことを考えるタイプです。 だから、この本を読んで、中川さんの生き方、考え方からとっても勇気をいただきました。 歳をとればとるほど、理想の自分と現実の自分とのギャップで恥を感じる。今さら私なんかが恥ずかしいと思ってしまう。 でも…。今の自分を受け入れると

          いくつになっても恥をかける人になる 中川諒著 〈読書記録〉

          読書とは孤独の喜び

          どうして読書するのだろう。 うまく言語化できない。 そんな時、恩田陸先生の『小説以外』という本に出会った。 この文章に出会ったとき、心が震えた。大げさだと思うかもしれない。 けれども、本当なのだ。 ちょうど、メンタルが弱っていた時だったからかもしれない。 「孤独であるということは、誰とでも出会えるということなのだ」 特に、この一文が好きだ。 本を読むことで、誰にでも出会えるし、どこにでも出かけられる。 泣いて笑って驚いて気が付いて… 今日も、読書で誰かに会い

          読書とは孤独の喜び

          あなたの大事な人に殺人の過去があったらどうしますか〈読書記録〉

          読んでよかったと思う。 オオクニフーズで働く3人の男女の視点で物語は進む。 はじめから感じる違和感。殺人をしたと言われる男の過去と現在が結びつかない。 そして、罪を償っていれば許すことができるのか、という読者への問題提起に、はっきりとした答えを出すことはできない。 本書を読んでいて想起されるのは、『ケーキを切れない非行少年たち』である。 この本を読んで興味を持った方は読んでほしい。 この2冊を読んで、「教育」の意味を再度考える。 タイトルに対する答えを読者なりに

          あなたの大事な人に殺人の過去があったらどうしますか〈読書記録〉

          忍鳥摩季の紳士的な推理〈読書記録〉

          こちらは、特殊設定に特化したミステリー短編集でした。 どうもミステリ好きなので、タイトルに「推理」と書かれていると手にとってしまう…。 タイムリープや空間のループ現象など4つの超常現象に関する事件を表紙の彼女・忍鳥摩季(おしどりまき)が解いていく。 普段は、頼りなくどこかのんびりしている雰囲気のある彼女が、謎解きになると急にため口になるなど豹変するには理由がある。 まるで、「眠りの小五郎」と評される迷探偵・毛利小五郎のように、彼女と一緒に謎を解く誰かの存在が関係している

          忍鳥摩季の紳士的な推理〈読書記録〉

          ちょっと今から仕事やめてくる 〈読書記録〉

          誰でも仕事を辞めたいと思ったり上司を嫌だと思ったりすることがあると思う。 この本は、そんな気持ちに蓋をして、どんなに理不尽な仕打ちをうけても「仕事は辞められない」と考えて疲弊しきっている若者・隆と素性のわからない男「ヤマモト」との友情の物語といっていいだろう。 隆が真面目でいい人なので、読んでいるとつらくなる描写もあるが、少しミステリー風味のある展開で、続きが気になってどんどん読めた。 心に残ったのは、ある人物が「逃げることを教えなかった」ことを悔いているというところ。

          ちょっと今から仕事やめてくる 〈読書記録〉