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【読書記録】ハックルベリー・フィンの冒けん マーク・トゥエイン/柴田元幸訳

『ハックルベリー・フィンの冒けん』
マーク・トゥエイン/柴田元幸訳
研究社

あのハックが! 柴田先生の訳で! しかもタイトルがすごい!
『ハックルベリーフィンの冒けん

2017年出版ですが、この翻訳書がどんなにすごいかを知ったのは、白岩英樹氏の『アメリカの思想と文学』における伊藤比呂美氏との対談でした。

子どものころに『トム・ソーヤ―』と同時期に読んだことがありましたが、今回の柴田訳が面白すぎて、一気に読んでしまいました。
何せタイトルからして『冒けん』で、それがこの柴田訳のすべてを物語っています。

一人称で語られる物語の主人公ハックは賢くて一生懸命な子だけれど、境遇のせいで教育なんてほぼ受けていません。だから文法も綴りもかなり滅茶苦茶、パッと見るとなんだか変な英語なんだけれど、音読するとわかる、みたいな。そういう英語をそのまま、つまりハックが日本語で書いたらどうなるか、多分難しい漢字は書けないよね、という文字表現も含めた「ハックの文体」なのです。

あまりにハックすぎて(としか表現できない)、自分の体丸ごとあの時代のミシシッピ川流域に召喚されたかのよう。ハックのたくましさ、勝手気ままさ、繊細さ、やさしさ。そして目が覚めるようなロジック。子どものころによく体験した、物語に没入して周りが見えない現象を、再体験しました。楽しかった…それしか言えない!読みおわってしばらく、あたまにうかぶ文しょうが、みんなハック語になっちゃって、全ぶひらがなでしゃべっているじぶんがいました。

文体に乗り移られるのは橋本治『桃尻娘』以来、久々の体験でした。


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