記号?文字?10個のナンバーズ
「今月の給料これだけだ……」
「利益率がX%に到達していない!」
「予算はいくらですか?」
友人に勧められ岡潔著『春宵十話』という本を読みました。
数学博士が唱える「情緒の大切さ」に触れ、
数字というものについて感じることがありました。
数字の奴隷となっていた文系人間のわたしよ、さようなら。
本のご紹介
1901年大阪生まれ。
京都帝国大学(現・京都大学)卒業、理学研究において大成した、
権威ある数学博士の岡潔(おかきよし)氏がつづったエッセイ集。
歯に衣着せぬ、スマートな文章がとても読みやすく、
第一刷以降も増刷をくり返し、時代を超えていまもなお愛されている一冊です。
「人の中心は情緒である」という切り口から、
岡氏が「数字であらわすことのできない情緒」の大切さを語ります。
数字をみることに疲れてしまったひとにおすすめです。
簿記2級の対策講座でいわれたこと
この本を読んでいて、数年前に通っていた簿記試験対策講座のことを思い出しました。
講師は黒ブチメガネに黒いスーツ姿で、
これでもかというくらい大きなカバン(これまた真っ黒)を持ち歩いている公認会計士の方でした。
漆黒の黒いスーツとなんだか釣り合わない、
ほがらかでたわやかな笑顔がとてもチャーミングで、
簿記は好きになれなかったけれど、週に2回の講座に通うことができました。
「数字はですね、ひとの心がわかりやすく『翻訳』されたものですからね。」
「たとえばですが、『会社の売り上げがよくなかったから、
2%でも利益を上げるために、2,000万円の商品をがんばって売り切った』
というのを誰でもわかるように数字で表すことが簿記です。」
その方が1回目の授業でいってくれたことです。
2か月にわたる授業内容のほとんどを覚えていないですが、
最初の授業だけで価値があったといってもいいほどの講座でした。
数字とわたしたち
いまの社会は、数字で管理されているといっても過言ではないです。
数字で表すことのできる成果が評価され、
高い数字を打ち出すために奮闘します。
学校では内申点をとるためにテストで高得点を狙い、
会社では「これだけ売れました!」または「これだけ削りました!」
と昇給・出世のために数字をめがけて骨を折ります。
わずか一筆で書ける10個の数字は、
すさまじいパワーをもっていて、
人を動機づけられることもあれば、はたまた
なぎ倒してしまうこともあるのです。
数字を読み解く
先にも述べたように、
人の心が数字に「翻訳」されているとしたら、
数字に秘められた心を読み解くことが大切だと思います。
学校のテストで高い点数を取れるのも、
すばらしい成績を会社で打ち出せるのも、
なんらかの形で人の気持ちが動いているからではないでしょうか。
いくつもの数字を並べて、
「ん?どうしてこの数字になるのだ?」と感じることができれば、
その裏に流れるだれかの心を感じられます。
皆さんもぜひ一読してみてください。
出版社:角川ソフィア文庫
著者:岡潔
定価:¥572(本体¥520 + 税)
「春宵十話」岡潔 [角川ソフィア文庫] - KADOKAWA