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歴代の本屋大賞受賞作品全部読んでみた

毎年本屋大賞の時期になるとお祭り感を楽しんでいる読書好きの1人として、せっかくならこれまでの大賞受賞作品も全部読んじゃおう!という企画です。実際には半分くらいはすでに既読だったので、残り半分をチマチマ読み進めていきました。

さすが全国の本屋さんに選ばれただけあって、どの作品もおもしろかったです。また、それぞれ時代の空気感を反映したような作品が選ばれているところも興味深いなと思いました。

あとやっぱり映像化されているものが多いので、映像作品も併せて観るとより楽しいと思います。

ちなみに、本屋大賞のHPでは、過去の本屋大賞受賞作品だけでなく、その年にノミネートされた10作品とそれぞれのランキングも見ることができます。このランキングを見ていると、当時に戻ってあれやこれや言いながら大賞の発表を待ちたくなりますね。


第1回(2004年)本屋大賞 「博士の愛した数式」 小川洋子 

80分しか記憶が持たない博士と、そこで働くことになった家政婦の主人公、そして主人公の息子という3人の間で紡がれる不思議な愛の形が素敵でした。

心が温かくなるストーリーで、涙を誘われる場面もしばしば…。疲れた心にスッと染み入ってくる美しい物語です。映画(https://amzn.to/3Z4nPMo)は映画で泣けるんですよ…。

第2回(2005年)本屋大賞 「夜のピクニック」 恩田陸 

高校最後の伝統行事である歩行祭に参加する高校生たちを主人公に、愛や友情を描いた青春小説です。

歩行祭というのは、友人たちと連れ合って一晩中歩き通すという謎行事なんですが、学生時代の思い出って意外とこういう謎の行事の方が印象に残っているような気がします。ある種、非日常の時間の中で高校生たちが何を思い、何を感じるのか、読んでいるうちにそれを追体験しているような気分になりました。

様々な場所で名作としておすすめされている1冊ですが、何歳の時に読むかで感想が変わる作品だと思います。本棚に大事に挿しておいて定期的に読み返したくなる、そんな本です。

映画(https://amzn.to/3ZnOh3R)では若き日の多部未華子さんをはじめ、現在は人気俳優になっている人たちが高校生役で出演しています。

第3回(2006年)本屋大賞 「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー 

福岡の小倉で生まれ育った少年が東京で成功するまでを描きつつ、愛情をたっぷり注いで育ててくれた母親と、不器用ながらも家族を案じ続けた父親との絆を描いたハートフルストーリーです。

リリー・フランキーさんの自叙伝的な小説で、お母様との心温まるエピソードとお父様とのクスッと笑えるエピソードに胸を打たれました。昭和ならではの大雑把さというか、なんでもありな社会に驚くこともありつつ、最後は母の子への愛、子の母への愛に涙が止まりません。こんなにも子供から愛されるお母さんは幸せだろうなと思います。

映画(https://amzn.to/4e3OT2p)では樹木希林さんと内田也哉子さんがそれぞれオカン役で出演されていて驚きました(親娘共演!)。ドラマ(https://amzn.to/3AIunWJ)では倍賞美津子さんがオカンを演じています。

第4回(2007年)本屋大賞 「一瞬の風になれ」 佐藤多佳子 

高校の陸上部を舞台にした青春スポーツ小説です。陸上の中でも短距離走を題材にした作品で、コンマ何秒の世界で戦う高校生たちの毎日に胸が熱くなる物語でした。走るのは何より苦手な私ですが、この本を読むと走りたくなります。

3部作になっていて、それぞれの巻で高校時代の1年間ずつを描いているので、ぜひ2巻3巻も一緒に読んでもらいたい作品です。

似た作風だと三浦しをんさんの「風が強く吹いている」(https://amzn.to/4dGo0C5)もおもしろいです。こちらは大学駅伝を題材にした青春小説です。

第5回(2008年)本屋大賞 「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎

首相暗殺の罪を着せられ命を狙われることになった青年を主人公にしたサスペンスフルな逃亡劇です。

ハラハラドキドキの展開に夢中になって読みました。SNSが普及した今の時代なら逃げるのはもっと大変そうですね。

「ゴールデンスランバー」はなんと日本だけでなく韓国でも映画化(https://amzn.to/474rSu7)されています。

第6回(2009年)本屋大賞 「告白」 湊かなえ

とある学校で起こった女児の変死事件をきっかけに、少女の母親である教師が犯人と思われる生徒に復讐を始めるというサスペンスミステリです。

語り手が入れ替わりながら進んでいく連作短編形式になっていて、立場が変わると見えているものはこんなにも変わるんだということがヒシヒシと伝わってきました。正直、後味は悪いです。読んでいる間もずっといやな気持ちにはなるのですが、怖さよりも先が読みたい気持ちが勝りました。色んな意味で問題作だと思います。

「告白」は映画(https://amzn.to/3ASBNqm)も衝撃度がすごいです。松たか子さんのサイコパスな演技がめちゃくちゃ怖いんですよ…!

湊かなえさんがデビュー15周年を迎えた年に限定特装版(https://amzn.to/3z0mN9C)も出ました。限定版のカバーは液体入りなんですよ。液体入りってすごくないですか!?カバーに!?液体!?

第7回(2010年)本屋大賞 「天地明察」 冲方丁 

江戸時代を舞台にした時代小説です。碁打ちの名家に生まれたにもかかわらず、碁よりも数学を愛した青年が主人公。彼が生涯をかけて改暦に取り組む姿がアツいです。

数学のおもしろさ、江戸時代の天体や暦の理解度、生き生きと伝わってくる人々の暮らし、どの観点で読んでもおもしろい作品でした。何より登場人物の全員が才能と情熱にあふれていて愛おしくなります。読み終わった後は充実した満足感に包まれました。

映画(https://amzn.to/4e0fNZ2)では岡田准一さんと宮崎あおいさんが夫婦役で共演しています。

第8回(2011年)本屋大賞 「謎解きはディナーのあとで」 東川篤哉 

大企業のお嬢様でありながら刑事でもある宝生麗子と、そんな麗子に仕える執事の影山が、難事件に挑む安楽椅子探偵もののミステリです。

本格ミステリの要素をふんだんに盛り込みつつ、軽快なテンポのセリフ回しで初心者でも読みやすく仕上げているところがすごいと思いました。影山の毒舌っぷりといい、風祭警部のポンコツっぷりといい、キャラがものすごく立っていてユニークなところも見どころです。

その後、続編も次々発売されていていて、9月には最新刊(https://amzn.to/4cK9bNy)も出ます!

ドラマ(https://amzn.to/3XqDvIF)はリアルタイムで観ていた記憶があるんですが、櫻井翔さんと北川景子さんのコミカルな掛け合いが楽しかったのを覚えています。

第9回(2012年)本屋大賞 「舟を編む」 三浦しをん 

辞書を作る人たちにスポットを当てたお仕事小説です。普段何気なく使っている辞書がこんな風に作られていたとは…と感動しました。辞書を引けば正しい言葉が出てくるという当たり前は、それを当たり前としている人たちの手によって作られているんですね。

言葉の意味について深く考えされられるストーリーでありながら、青春小説としても美しいところが素敵でした。胸熱も胸キュンも両方味わえる物語です。

「天地明察」の宮崎あおいさんも素敵でしたが、私は「舟を編む」(https://amzn.to/3TaevTl)の宮崎あおいさんも好きなんですよ。

今年に入って池田エライザさん主演で新作ドラマ(https://amzn.to/3X8S9mg)も制作されたみたいです。

第10回(2013年)本屋大賞 「海賊とよばれた男」 百田尚樹

太平洋戦争前後の日本を舞台に、明治生まれの男が大商人になるまでの話を描いた歴史小説です。

主人公が扱っていたのが石油だったため、戦後は大きな危機に陥ることもしばしば。それでも社員を家族のように大切にし、日本のことを誰よりも考えていた主人公の生き様に胸が熱くなりました。

ちなみに、出光興産の創業者をモデルにした実話みたいです。

映画(https://amzn.to/477zrA8)では岡田准一さんが主演を務めています。岡田准一主演の映画にハズレなしだな〜。

第11回(2014年)本屋大賞 「村上海賊の娘」 和田竜

戦国時代に瀬戸内海で隆盛を極めた村上海賊を題材にした歴史小説です。

パワフルかつ軽快な文章で語られる海賊同士の戦には、手に汗握る迫力がありました。史実を元に描かれた小説で、最後に登場人物たちのその後が語られているところもおもしろいです。

勝ち気で奔放な海賊の娘が自分よりも大きな男たちをバッサバッサと斬り捨てて行く姿に力をもらいました。

第12回(2015年)本屋大賞 「鹿の王」 上橋菜穂子  

民族同士の抗争と病と戦う人々を題材にしたファンタジー小説です。

発売当時、上橋菜穂子さんの最新作!と大喜びで読み始めた記憶があります。上下巻(文庫は全4巻)で展開される濃密な世界観に圧倒されつつ読み進めました。上橋さんの描くファンタジーは、本当にその国が実在しているかのような気分になるからすごいです。

ちなみに「鹿の王」には続編(https://amzn.to/4e31p27)があります。続編は「鹿の王」よりさらに政治色強め&医学要素強めなので、医療ものとしての面白さにハマった人は楽しめると思います。

第13回(2016年)本屋大賞 「羊と鋼の森」 宮下奈都

北海道を舞台に、ピアノの調律師を目指す青年の葛藤と成長を描いたお仕事小説です。

本の中から音が聞こえてくるかと思うような描写に鳥肌が立ちました。冬の寒さと、静謐な森の匂いまで伝わってきます。美しい描写の数々に酔いしれる気持ちで読みました。

映画(https://amzn.to/3XocdlZ)では北海道の美しい景色の数々に圧倒されました。使われている音楽も素敵です。

第14回(2017年)本屋大賞 「蜜蜂と遠雷」 恩田陸 

とあるピアノの国際コンクールを舞台にした音楽小説です。消えた天才少女、クラシック界の爆弾、30を前にして再び音楽家に挑戦するパパ、音楽に愛された王子など、飛び抜けた才能を持つ登場人物たちがナンバーワンを目指して技術を競い合う姿に感動しました。何より最後の1ページが素敵です。こんな締め方ありなんだと思いつつも、その美しさに胸を打たれました。まるで本当にコンクールを観ていたような気分になります。

私は映画(https://amzn.to/3T7hNGM)を先に観たのですが、音楽という耳で楽しむものを文章で表現するすごさを感じました。ぜひ映画と一緒に読んでもらいたい本です。先に映画を観ていたからかもしれないけど、キャスティングがぴったりで驚きました。

ちなみに、「蜜蜂と遠雷」には続編(https://amzn.to/4dGIcn3)があります。本編の登場人物たちの過去や未来を描いた短編集で、彼らの世界をもっと楽しめるので、よかったらこちらも読んでみてください。

第15回(2018年)本屋大賞 「かがみの孤城」 辻村深月

学校に行けなくなってしまった中学生が、鏡の中にある世界で鍵を探す物語です。そこには同じ状況の中学生7人と、おおかみさまと呼ばれる少女がいました。

バスタオルが必要なくらい泣きました。自分の中学生時代を思い出しながら、今を生きる中学生たちの苦しみにも思いを馳せてしまいます。これは本当に名作だと思います。出会えてよかった。

アニメ映画(https://amzn.to/3T8w1HA)にもなっていて、この本のファンであることを公言している芦田愛菜さんがおおかみさま役で出ています。

第16回(2019年)本屋大賞 「そして、バトンは渡された」 瀬尾まいこ

父が3人と母が2人いる女子高生を主人公に、様々な家族の形を描いたハートフルストーリーです。

これも泣きました。もうダバダバ泣きました。主人公がとにかくいい子で、そんな子を育て上げた5人の親たちのことも愛おしくなります。それぞれがそれぞれの立場から愛を注ぎ、少しずつ役割を分担していったというところに胸が熱くなりました。家族っていいなと思える作品です。

映画(https://amzn.to/3Z4q2aE)もすごくいいので絶対に観てもらいたいです。特に石原さとみさんファンの人は必見!

第17回(2020年)本屋大賞 「流浪の月」 凪良ゆう

親から逃げ出したかった少女と、そんな少女をかくまうことにした青年の、許されざる関係を描いた恋愛小説です。

人間関係ってなんだろうと思わずにはいられない小説でした。血のつながりが何よりも力を持つ社会で、常識では判断できない関係にすがるしかない人たちはどうしたら救われるのか。読み進めていくうちに、自分も、ここに出てくる加害者の1人でしかないのかもしれないと思ってしまいます。

映画(https://amzn.to/3X8USMN) も壮絶でした。広瀬すずさん、松坂桃李さん、横浜流星さんの演技力に圧倒されます。

第18回(2021年)本屋大賞 「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ 

母親に愛されることなく育った少女が、1人移り住んだ九州の港町で、母親から虐待を受けている少年と出会う物語です。

苦しい描写に何度も心が折れそうになりながらも、最後に彼女たちが救われることを願って読み進めました。頑張って読んでよかったと思えるラストです。

第19回(2022年)本屋大賞 「同志少女よ、敵を撃て」 逢坂冬馬 

第二次世界大戦時のソ連を舞台に、ドイツ語を学んで外交官になりたいと願っていた少女が、村を焼かれ、家族を殺され、優秀な狙撃兵になるまでを描いた戦争小説です。

元々狩りを得意としていた主人公は、身寄りのない少女ばかりを集めた狙撃手育成機関でめきめきと頭角を表します。しかし、実際に戦地に出てから目にしたのは地獄に次ぐ地獄でした。

第二次世界大戦を題材にした小説はたくさんありますが、その当時のソ連を主軸に据えているものは珍しいと思います。どの国で生まれても同じ人間で、味方であっても恐ろしいことをする人はいるし、敵兵も戦争がなければ友人になれた相手かもしれないと思わせる描写が見事でした。史上最高点でアガサ・クリスティー賞を受賞したというのも納得の濃密な小説です。

個人的には、「戦争は女の顔をしていない」(https://amzn.to/4e5TGQP)も一緒に読んでもらいたいです。

第20回(2023年)本屋大賞 「汝、星のごとく」 凪良ゆう

瀬戸内海の島を舞台に、ヤングケアラーの高校生2人の半生を描いた恋愛小説です。

主人公たちと同じような境遇で育った人にとってはトラウマになるくらい刺さるストーリーだと思います。本当に切なくて、苦しくて、どうか最後は救いがありますようにと願いながら読み進めました。心を揺さぶる心情描写が上手すぎます。

読み終わった後、なんとかこの気持ちを吐き出させてくれ!と苦しみながら書いた感想文がこちら⇩

「汝、星のごとく」にも続編があります。本屋大賞を取った作品は続編となるスピンオフ的な短編集が出ることが多いんですが、これは少し毛色が違います。短編集ではあるものの、本編では語りきれなかった過去と未来がぎっしり詰まっているので、絶対に読むべき1冊です。「汝、星のごとく」は「星を編む」(https://amzn.to/3T7iqjC)まで読んで完結です。

第21回(2024年)本屋大賞 「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈

滋賀県大津市を舞台にした地元愛あふれるハートフルストーリーです。大津をこよなく愛する成瀬の、真面目なのにトンチキに見える行動が楽しくもあり愛しくもある物語でした。

読んでいる間、誰もがそれぞれの地元に想いを馳せてしまうと思います。成瀬を通して自分の地元愛を再確認できたのがよかったです。

ちなみに「成瀬は天下を取りにいく」にも続編(https://amzn.to/4e31Mtx)があり、さらにパワーアップした成瀬が見られるのでぜひこちらも読んでもらいたいです!

最後に

本屋大賞受賞作は、映像化されたり学校の課題本になったり文庫フェアにラインナップされたりと、時を経ても猛プッシュされるのでタイトルだけなら見たことがある人も多いかもしれません。kindle unlimitedやAudibleの対象になっているものが多いのも嬉しいですね。

映画やドラマから入るもよし、ジャケ買いするもよし、全作のあらすじをじっくり読んでから手に取るものを決めるのもよし、いろんな楽しみ方ができるので、ぜひ好きなものから読んでみてください!

次の本屋大賞も楽しみだ~~~!!!!!

kindle Unlimited、Audibleでは定期的に無料キャンペーンが実施されています。詳しくはこちら⇩

過去の本屋大賞読んでみたの記事は⇩


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