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[短編小説]GTO物語 ターン編18


 次の日朝、とりあえず会社へいつもどおり向かうことにした。今取りかかっているプロジェクトも忙しいし、これ以上休んで他のメンバーの負担を増やすわけにも行かない。それに家に一人で居てもがんのことが頭を巡って気分が落ち込むだけだった。

仕事は忙しかった、進捗管理、メールの返信、資料作成あっという間に夕方になり、やや残業をしてから退勤処理をした。家に突く前にファーストフードで適当に食事をした。体にあまり良く無さそうだがいまさらだ。

 自宅マンションについてから、母親に状況を連絡することにした。1ヶ月に数回メッセージが来る程度でこちらから連絡することはあまりない。ひとまず、母親の携帯電話に電話してみたが出ない。両親自宅の固定電話に連絡することにした。3回ベルを鳴らすと、こちらはすぐに母親が電話口に出た。

「もしもし」

「もしもし、裕樹です」

と僕は言った。

「あー、はいはい」

いつもの調子で母親が返事した。

「あら、どうしたの結婚でも決まったの?」

「いや、あまりいい知らせじゃ無いんだ」

なんだか、人ごとのようなに返事した。

「実は……。俺、がんになったんだ」

すこし沈黙で間が開いたあと、母親は言った。

「がん? で、どうなの?」

「末期がんで余命半年程度らしいよ」

「半年ってあんた……」

しばらく、沈黙が続いた。

「体調はどうなん?いま?」

「疲労感はあるけど、痛みとかはそこまでないかな。胸に違和感はあるけど、あ、肺がんなんだよね。これからがん専門の病院に移って詳しく検査する予定だよ」

「そうなの、まだ死ぬと決まったわけじゃ無いんでしょ?」

「いや、どうなんだろうね?」

なんだか、人ごとの様になってしまう。自分自身でまだ事実が受け入れられないのだろう。次の病院はいつだとか、色々母親は聞いてきたが僕自身わからないこともおおかったし、ひとまずは二週間後の次の病院の受診を待つしか無かった。母親は最後まで納得してない口調だったが通話を終えた。

僕だってそういう意味では納得いってるわけではない。自分の人生があと半年で終わってしまうなんていままで想像したことも無かったし、いまだに実感が沸かな過ぎてどうしていいのかよくわからなかった。

ただ事実として自分の前に差し出されたけれど、いままで見たことも触ったこともないシロモノでただ客観的にすこし距離を置いて静観しているだけだ。対処法もわからず、そのシロモノの出方を伺っている状態だ。明日の朝目が覚めたら無くなっていて欲しいが、そうはならないだろうことだけは確実だ

(つづく)

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