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各駅停車

「あ〜昔、‘’電車に乗って学校行ってみたい”って思ってたんだよなぁ〜」

朝、角席に座って、自分の心情とは裏腹に、のらりくらり流れていく景色を見遣りながら、ふと、思い出した。

じゃあ、今、忘れかけてた、かつての憧れのなかにいるのか!

そう思ったら、マスクの下で、ちょっとだけ笑えた。

いつから、(電車を降りたら)こうして、あーして、あれやってこれやって……そんなことを考えながら、特に楽しむことなく‘’電車に乗って学校行く”ようになっちゃったんだろう。

‘’電車に乗って学校行く”ことに憧れていたこともあったのに。

ホームと電車の隙間の暗闇
俯きながら電車に乗ろうとすると、決まって、この僅かな隙間に躓くんじゃないか……吸い込まれてしまうんじゃないか……って、一瞬、怖くなる。
そんなことないのに。
そして、乗れてしまってからは、ほんの数秒前に怖いと思ったことも忘れてるんだ。
怖いと思ったことよりも、怖いと思ったことを忘れていることのほうが、怖いような。

各駅停車
各駅停車って、いいなぁ。
ひと駅ひと駅、全部の駅にとまる。
時間をかけて。

大きい駅に急いでいる時には、腹立たしくも思えるから、“鈍行”だなんて、不名誉なあだ名がある。
でも。
“各駅停車モード”だから、止まれる駅がある、呼ばれる駅名がある。
「まあ、各駅停車だからね」
と言えばそこまでなんだけど、その、各駅停車だからこそ、のところが、とても優しい世界だな、と思う。

時間を管理しているつもりが、時間に管理されているような今日この頃。
そんな自分にお構いなく、「各駅停車○○行き」が今日も走っているということに、電光掲示板をみながら、救われている自分がいる。

快速、準急、特急…
速さを競えば上には上がいる。
でも、たとえ、速さで競って最低ランクでも、ひと駅ひと駅、着実に止まっていくことの価値は、速さに勝るとも劣らないんじゃないかな、と思う、思いたい。

“鈍”く“行”ってもいいじゃない。
(「○○を」と続けたくなるが笑)

自分が各駅停車の電車なら、行先はどこにするだろう

行先なんて決めずに、その時の気分で気まぐれに、「For○○」って表示するのもいいな。

「ただいま〜疲れてしまったので〜一時運転を見合わせておりま〜す」

「先ほど〜急遽行きたい場所が変わったので〜線路を作り直すところから始めており〜運転再開は未定となっておりま〜す」

「先ほど入りました情報によりますと〜2つ先の駅にて〜期間限定無料ケーキバイキングが開催されたため〜少しペースをあげて〜なんとか間に合おうと〜画策しておりま〜す」

こんな感じで。
マイペースに、いつも今に、自分に、わくわくしながら、まずは、自分に優しく生きていたいと思う所存。

明日も明後日も、「各駅停車」の表示に救われて、ホームと電車の間の暗闇に、キュッってなりながら、それでもたまには、電車通学に憧れていた頃を思い出すんだ。

今、自分は、昔の自分の憧れのなかに生きてるんだよ、だから「」。










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