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小説と映画『箱男』

映画化された『箱男』を観に行った。
映画は映像と音声で成り立つ瞬間的な作品なので、ハテナ?と思っても時間を戻すことはできないから、予習のため、安部公房の原作を読むことにした。

ところが読了後、「・・・ん?」と、若干取り残されてしまった感が残ってしまった。
というのも、物語後半になってくると視点が混乱してきて、妄想か現実かも分からなくなってしまい、おまけに詩のようなものまで出現し、一見本文とは関係なさそうな挿話が出てきた(関係あるんだけど)。
実験的作品に仕上げているせいなのだろうか。どうにか話の筋をつかもうと思っても、つかみそこなうのである。

小説の枠を越えて逃げる筋、あるいはその辺に細胞分裂しはじめた筋。私が必死に追いかけていくものの、結局逃げられたまま読了。チーン。

・・・してやられた感が残り、つづけざまに二度目を読んだ。

二度目を読了し、だいぶ作品との距離が縮まった気がするものの、理解できた!・・・とはいえず、映画を観てまた判断しようという結論に至り、映画館へ足を運んだのである。

観客は年齢層が上の男性が多かったような…。後方の真ん中あたりの席をとっていたので座っていたら、両隣をおっさんに挟まれるという事態に…。
静かな場面にかぎって、おっさんのお腹の音とかきこえてくるし…😑

『箱男』ポスターいろいろ

ながーい予告編をみて、本編を見はじめて数分、箱男の運動神経のよさに唖然とししまった‥‥‥!
箱の中の男(箱男)が中腰のまま素早く走っている!? しかも、箱が回転している!? ええ~、ジャンプまでした…!?

箱男の見てくれが原作と少々異なりそうだなと思ったのが、箱とのすき間を防ぐというドンゴロスがなかったことと、ゴム長靴ではなかったということかな。あと年齢…(?)

オリジナルのシーンもあり、総じていえば、ゾクゾクさせる変態的な世界観に引き込まれ、映画は映画でおもしろかった!

特に、箱男と贋箱男のバトルシーンがあるんだけれど、笑おうか笑うまいか非常に悩ましかった。笑わなかった。
結局、「葉子」という女性を取りあいしているだけのような気も…。

贋箱男が「葉子」を「葉ちゃん」と呼ぶと、、
「葉ちゃんだとぉ~~!」と言いながら、ワニのぬいぐるみを武器にして戦う箱男…。


映画の最後は分かりやすかったけれど、原作の最後がまだよく分からない。

結局箱から抜け出せずに、社会と完全に孤立したまま妄想の中で生きているんだよね。・・・死んだ?生きてる?

覗き見してるのはどちらだ!?

そろそろ暑さも和らぐ頃合いなので、箱男的生活もいいかもしれない。
皆様も果敢に社会と断絶し、箱での生活はいかがでしょうか…。


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