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#4『甘い夢を』ペーター・シュタム
先日、公開模試があった。
現在息子は受験生でけっこう頑張っているみたい。私よりもどんどん知識がついていっている様子。教えられるのは国語だけ。
受験生の親って、なにやらとても大変みたいなんだけれど、なんだか私は全然で。ママ友ゼロだし色々な情報もよく分からないけれど、もう少し受験生の親らしくしなきゃとか思う。……思うだけだけど。
で、模試の帰りに一緒にランチした。こういうのがささやかな楽しみ♪
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さて、村上春樹編訳の『恋しくて』から、4作目。
今回は、ペーター・シュタムの『甘い夢を』。村上春樹編訳とのことだから、英語圏の作家だけかと思っていたが、シュタムはスイスの作家だった。原文はドイツ語、その英訳版を春樹が日本語に訳したようだ。
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これまでずっと、主人公は男性だった。今回は女性が主人公となり、女性の視点でストーリーは進行していく。
だから、分かる~!っていう場面がいくつかあった。
例えば、同棲をはじめたばかりのカップル、彼女が家でお風呂に入っている間に彼が店にワインを買ってくる場面。店は家のそばだからすぐ戻ってくるはずなのに、なかなか戻ってこない時の彼女の心理など。
結局心配で、店に様子を見に行くんだけれど、そうしたら店のテレビが壊れているとかで、器用な彼が修理してあげていたのだ。別にやましいことをしているわけでもないし、むしろ人に親切にしてあげていたわけなのだが、なんだかちょっと気に入らない。
「あなたはもうもどって来ないのかと思った」
なんて、非難がましい言葉を発してしまう。
結局修理が終わって無事に店のテレビが復活。さっさと帰るんだろうと思っていたら、店の女主人からお礼だとビールなどをご馳走される。本当は、そんな申し出を断って、早く家に戻って二人だけの時間を過ごしたいというのが女の子の心理。
その後もなんだかんだでズルズルと、なかなか帰れない状況。店にいる別の客とも話したりした後(そんなことしたくもないのに!)、店主にお礼のワインをもらって、ようやく家に戻った。
「あなたはすぐに戻ってくると思っていたんだもの」
帰って来るやいなや、彼女は泣きそうになってしまう。
不安な時を過ごした後の彼女は、私だけを見て!って独占欲も出て来るし、愛情を確かめたいっていう気持ちも出て来る。だからいつもよりも激しく…。
でもそんな彼女の気持ちを分かるはずもない彼は、
「いったい君に何が起こったんだ?」
なんて。
何気ないことでも、つき合いの浅いうちはすぐに不安になってしまう気持ちってあるよね。他の人のことなんて気にしないで、二人だけの時間を長く過ごしたいのに、なかなか分かってくれない。
もちろん彼の方も同じ気持ちを持っているんだろうけれど、男の子の同じ気持ちの括りは大きい。女の子はもっと細かい部分。
何かを始めようとするときの、そのような至福に満ちた、しかし同時に僅かな不安をも感じる瞬間
昔、似たような思いを経験したなぁ。
二人だけで過ごしたいのに、彼は友達もいて隣に私がいるのがいいとかで、結局みんなで過ごす時間の方が長くなって、泣いちゃうっていう…笑。
それは恋愛すれば、今でもきっと同じように感じるんだろうけれど(しかも、若い頃よりも不安は大きくなる!)、でも、自分を抑える術を身につけてしまったし、いい大人が突然泣いたりとかってイタイし、相手を尊重しないと嫌われちゃう、の気持ちの方が大きくなって、きっと我慢して何事もなく笑顔で振る舞う気がする。
大人になると、こういう風に自分を素直に出せなくなるんだなぁ…。しみじみ。