見出し画像

nap 67. 私、気づいたんです。


誰かに、話したかもしれない話。

私、なんか気に病んじゃって。誰にも会いたくない日が続いてたんです。その日も、兄一家が、遊びに来てたんですけど、私、引きこもってたら、引っ込みつかなくなっちゃって。兄一家は、一泊して、次の日も夜遅くまで居たのに、私、とうとう、一度も顔を出しませんでした。

そんな私に母は、甲斐甲斐しくご飯を、私の部屋まで持ってきてくれました。2〜3言だけ話したら、余計なことは言わずに、ここ置いとくね、って。ベッドの横に置いてある机に、その日のご飯を置いて、スッと出て行って。
お好み焼きでした。

そのお好み焼きが、暖かかったんです。まだ。わたし、出されてすぐに食べるのはなんかすごく恥ずかしくて、食べられませんでした。お腹空いてたのに。誰も見てないのに。
暖かい方が美味しいって知ってるから、一人なら、冷めたものを食べたかったんだと思います。その方が、可哀想な感じだから。

母が、再婚したとき、私、ずっと、怒ってなきゃいけないって、思ってて。まあ、何しろ、再婚相手の人が嫌いで。
喜んだ顔見せたら負けだって。感情を、見つけられたら、知られたら、負けだって。
そうやって、ずっと怒ったように、不機嫌なように、してたんです。8歳?ぐらいから、15歳まで。7年くらい、ずーっと、不貞腐れてました。
そしたら、まあ、分かんなくなっちゃって。
あれ、家族の前で、どんな顔してたっけな?どんな顔して、笑ってたっけな?って。分かんなくなっちゃって。怒り以外の感情の全てが、もう全部恥ずかしくなっちゃってて。結局もう、嫌いな人は居なくなってたのに。

それで、それに気づいたのが、そう、何でか分かんないけど、その、暖かいお好み焼き触ったとき気づいたの。もう29歳(笑)。あー、私、ずっと怒ってたから、全部恥ずかしかったんだー、って。

それで、しばらく、もじもじしてたんですけど、私、食べたんです。ベッドから、手伸ばして、机に置いてあるお好み焼き、食べたんです。椅子には座れなかったけど…。
違う、違う、って心の中で言いながら。
恥ずかしくなんかない、恥ずかしくなんかない、って。元気がないから、食べるんでしょう?元気になりたいから、食べるんでしょう?って。恥ずかしくなんかない、恥ずかしくなんかない。違う、違う、って。
ボロボロ涙流しながら。あの、ほら、野球少年が、Tシャツの袖で汗拭うみたいにして、腕で、涙拭って。ばくばく食べました。

…うん、美味しかった。


#適応障害 #抑うつ #HSP   #生活 #日記 #エッセイ #セリフ #台詞 #詩

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?