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楽翁公伝 000 序 渋沢栄一著
神を敬い祖先を崇めることは、忠誠と孝行と共に、日本人の道を成す上で大切な要素である。偉人を崇拝する思想も、神や祖先を敬う精神と同じ根源を持つものである。我が祖先である松平定信公は、世人から近世の偉人と称えられている。死後においても、その功績は忘れられることはないであろう。
定信公は、12歳の時に志を立て、それ以来、心身を鍛え、精神を養い続けた。そして、心が求める道に従い、個人的な欲望を超越した境地に達していた。その生涯は、誠実な精神が天にも届くようなものであった。私は、定信公を敬い、深く感服している。彼の徳を称えることは、後世の人々に対しても重要な教えとなるだろう。
私がこの文章を通じて伝えたいのは、皇室の繁栄を支え、国家を守ることに他ならない。読者の皆さんも、ぜひ心に留めていただきたい。そして、私や子孫たちは、常に敬意を持って戒め、決して偉人たちの意志を無駄にしないように努めるべきである。そうすれば、私たちも聖人の教えに応じて感謝を捧げることができるだろう。
本書が完成し、刊行されるにあたって、私に序文を依頼されたため、ここに所感を記し、その門を開くものである。
昭和6年8月 子爵松平定時