展覧会レポ:十和田市現代美術館「常設展」「野良になる」ほか
【約5,900文字、写真約80枚】
青森の美術館巡りの一環として、十和田市現代美術館で「常設展」「野良になる」などを鑑賞しました。その感想を書きます。
結論から言うと、こんな美術館は初めてで、満足度が高かったです!とにかくクセが強すぎて、楽しい!面白い!アートに興味が全くない人も十分楽しめると思います。また、無料で楽しめる屋外アートが多く、美術館の建築も外に丸見えになっていることにより、アートと町が共生し、アートが町を活性化している点は、アートの価値を存分に生かし切っている素晴らしい取り組みだと思いました。青森旅行の目的を、十和田市現代美術館にしても十分に足りると思います!
▶︎訪問のきっかけ
青森の美術館巡りの一環として、十和田市現代美術館に行きました。行く前は「白い部屋がたくさんあって、カラフルな馬のアートがある」くらいの知識しかありませんでした。
▼青森県にある他の美術館の投稿
▶︎美術館へのアクセス
十和田市現代美術館はアクセスが大変悪い!車やレンタカーで行く人以外は、綿密に時間を調べないと、1日の計画が破綻します。
私は八戸駅付近に宿泊し、バスで十和田市現代美術館に向かいました。八戸駅から十和田市現代美術館に行くバスは2種類(十和田観光電鉄バス、JRバス東北)あります。私は、以下の★をつけたルートで往復しました。
【行き】八戸駅→十和田市現代美術館(土日祝日)
★7:00→8:04(十和田観光電鉄バス)バス停「官庁街通」で下車
10:00→10:44(JRバス東北)
10:30→11:44(十和田観光電鉄バス)
13:30→14:14(JRバス東北)
17:30→18:44(十和田観光電鉄バス)
【帰り】十和田市現代美術館→八戸駅(土日祝日)
★11:29→12:20(JRバス東北)バス停「十和田市現代美術館前」から乗車
16:12→17:28(十和田観光電鉄バス)
17:29→18:20(JRバス東北)
非常にシリアスだと思ったことが、帰りのバスが11時台の次は5時間後の16時台しかないことです。私は、この日に八戸市美術館も行って、新幹線で東京方面に帰る予定だったため、必然的に、★をつけたルートになりました。なお、結果的にこのルートはベストでした。
住所:青森県十和田市西二番町10-9
▶︎十和田市現代美術館とは
十和田市現代美術館は、2008年4月に開館。ヴィジョンは「十和田市現代美術館は、アートによる"新たな体験"を提供し、未来の創造へ橋渡しをする美術館となることを目指します」。
特徴的な建築は、西沢立衛によるものです。町との繋がりや屋外への開放的な連続性などを提示しながら「アート作品のための家」がコンセプト。西沢立衛の手がけた他の建築は、豊島美術館、軽井沢千住博美術館など、私がいつか行ってみたいと思っていた美術館ばかりでした。
ちなみに、十和田市現代美術館の英語名は、「Towada Art Center」です。「Art Museum」ではありません。「Art Center」とは主に、"コレクションを収集する美術館ではなく、企画展や公募展を行う大型ギャラリーとして機能しており、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、教育普及"を行う施設を指すようです(参考)。なお、国立新美術館 (The National Art Center)も「Art Center」です。
十和田市現代美術館にコレクションを展示する部屋はあります。しかし、それらは全て恒久的な展示のため「収集」に当たらないことに加え、町全体を使って美術体験の提供を目指していることから「Art Center」と名乗っているのでしょう。
なお、十和田市現代美術館の計画に携わったのはエヌ・アンド・エー株式会社。2002年より、全体監修者としてほぼゼロの状態から計画策定を行い、作品や作家の選定、美術館の機能や面積構成、設計者の選定支援、運営方針の策定など、計画策定からオープン後の広報活動まで関わったそうです。
▶︎コレクション展・企画展
十和田市現代美術館は、とにかく「振り切っている」「尖っている」「町を一変させた」美術館だと思いました。
どの部屋・作品もクセが強すぎ!面白すぎる!こんな美術館は初めてでした。交通の便が悪い十和田市にわざわざ来た甲斐は大いにありました。
建築も独特でした。四角い独立した部屋をそれぞれ通路で繋げている造りになっています。1つの作品のために1つの部屋が造られており、部屋によっては2階、屋上もあります。なかには、ものすごく巨大な部屋もありました。とても贅沢!すごく非効率!だが、めっちゃ面白い!
どの部屋も、数人しか入らないほど小さく、人が多いと作品を楽しみづらいです。また、野外展示されている作品と一緒に写真を撮る場合も考慮すると、朝イチ(9時)に行くことをおすすめします。11時くらいから人が増え出して、鑑賞しづらくなります。
建築もアートも全部が面白く、現代アートに興味がある人は当然のこと、興味がない人にもおすすめしたいです。シンプルに面白い、楽しいため、何らかの刺激は必ずもち帰るはずです。
作品を全部見るには時間がかかりました。私は「まちなか常設展示」も含めて、2時間半では足りなかったです。大ボリュームで、エンターテイメント性に富んでおり、人々を笑顔にする美術館だと思いました。
さらに、十和田市現代美術館は「町と共生する美術館」だと感じました。私は、青森県立美術館は「自然と共生する美術館」だと過去に投稿しました。「自然」も良いけれど、「町」もすごく良いなぁ、と思いました。
✔️美術館
美術館敷地内にある作品を紹介します。
以下、入館料を払って見ることができる作品です。
この後、2階に上ります。
2階にある作品です。
その後、屋上へ。
また、1階に降ります。
美術館内から出た先にも作品があります。
その後、カフェで一休み。
以上で大体の常設展示は終了です。
✔️まちなか常設展示
私はバスで8時ごろに十和田現代美術館付近に到着しました。美術館の入場は9時からなので、パブリックアートを全部見てもカフェで休憩する時間もあるかな、と考えていました。
しかし、想定以上に作品数があり、全て1箇所に固まっていないため、1時間で「まちなか常設展示」「ストリートファニチャー」を全部見れませんでした。また、9時以降、作品の中に入れる展示もありました(私は時間がなかったため入れず)。
無料で楽しめる屋外展示がこんなに多い美術館は、日本では十和田市現代美術館だけではないでしょうか。十和田市現代美術館が掲げる「アートによる"新たな体験"を提供し、未来の創造へ橋渡しをする」というビジョンをまさに体現しています。
来場者はみな本当に笑顔でアートを楽しんでおり、その結果、町の活性化にもつながっていることがよく分かりました。もちろん十和田に住んでいる方は生活にアートが密着し、人生が豊になっていると思います。
人口約6万人の十和田市で、開館後わずか4日で入館者1万人を突破、開館から6年目の2014年8月には累計100万人の入館者数を突破したそうです。
美術館内のアート、建築が素晴らしいだけでなく、屋外展示も含めてアートの価値を幅広い人に伝えている点が、他の美術館にはない、十和田市現代美術館ならではの特徴だと思います。私はその点に共感し、満足度がとても高い結果となりました。
✔️ストリートファニチャー
座ることができる作品も、官庁街通りなどに設置されています。
✔️「野良になる」
十和田市現代美術館には、永久展示のほかに、企画展用のスペースも3つあります(庭も含めると4つ)。
展覧会「野良になる」は、AOMORI GOKANアートフェス2024の企画です。フェスのテーマ「つらなりのはらっぱ」を自然と人間の交わるところと捉え、その複雑に絡まる関係性を表現している、とのことです。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?私にとって、とても満足度の高い美術館でした。もう単純に、楽しい、面白い!無料で楽しめる屋外常設展時、有料の館内展示ともに、アートに全く興味がない人でも120%楽しめると思います。アートの価値で町と共生、活性化している点も素晴らしいです。非常にアクセスが悪いですが、青森旅行の第一目的に据えても良いくらいだと思います!
▶︎今日の美術館飯
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