見出し画像

うつくしき"厨子"の世界 ―工芸作品とともに暮らす魅力・愛でる楽しさ―

皆さま、厨子ずしってご存知ですか。

日本美術や仏教美術の世界がお好きなら、ピンと来る方もいらっしゃるかもしれません。

奈良 法隆寺の国宝玉虫厨子たまむしのずし 》が、おそらく日本でもっとも知られている厨子、かなぁ。歴史の教科書にも載っていましたよね。


《 玉虫厨子》はめったに展示・公開されませんが、厨子そのものは、わたしも上野の"トーハク"こと、東京国立博物館の本館でたびたび拝見したことがあります。

例えば、とっても大きなサイズの厨子や

伝わりますでしょうか、このサイズ感!
重要文化財《 愛染明王坐像 》鎌倉時代、13世紀(東京国立博物館 蔵)


ちょうど昨年、2024年の今ごろに開催していた特集展示「塔と厨子」では、こちらの厨子が紹介されていました。ご覧になった方も多いのでは。
大きさはだいたい高さ40cmくらいだったでしょうか。

照明の都合で、少し引きで撮影すると内側がきれいに写らなかったのですが

《 春日宮曼荼羅彩絵舎利厨子》室町時代、文明11年(1479)(東京国立博物館 蔵)


少し近づきながら撮影してみると・・・

細かい、そしてあざやかな色彩に驚きます
細かく描かれた迫力の装飾・・・!
単眼鏡で観察すればするほど驚きました


ご覧の通り、そもそも厨子とは、まるで歴史あるお寺の荘厳な建物が、そのまま小さくなったかのような かたちをしています。 

厨子の正面につくられた観音開きの扉をひらくと、中には小さな空間があり、例えば大切にしている仏像さまなどを置いておける仕様に。

また、外観にも内側にも、凝った彫刻や装飾がふんだんに施され、とっても豪華なデザインのものが多い様子です。

たぶん国宝の《 玉虫厨子》も、 " 雅で高貴なあのお方のために、七色に光るタマムシの羽根をとにかくたくさんたくさん貼って、最高級かつ豪華に飾りましょう✨"っていうコンセプトのもとで制作されたかと思いますが… 現代人の感覚からすると、なかなかの驚きですよね…。

大切にしたいものを納めていた厨子なので、普段過ごしているお部屋の一角など、持ち主が置いておきたい空間に設置し、ときどき扉をあけては眺めたり、手を合わせたりしていたのかなー、と想像します。

いずれにしてもなんとなーく、平安から室町時代にかけ、天皇や貴族など雅な暮らしをしていた人々が愛用していたお品物で、現代ではやっぱり、日本美術の品々が展示された企画展や、博物館の展示室で、おごそかに鑑賞するもの、なーんてイメージがあるかもしれません。。。


が!なんとその厨子、現代を生きるわたしたちも購入できるのです!

しかも、都会のマンション暮らしのお家にも置けるコンパクトさ、かつ、とーーーってもモダンなデザインの、素敵すぎる厨子があるのですよ!

❖❖❖


例えばこちら

直線的でミニマルかつ重厚な印象と、木の色と木目の曲線のやわらかさ。
異なる佇まいの美しさの対比が・・・素敵です・・・!

厨子 / 伊藤慶二 仏堂 横型 欅 寺飾り
仏さま / 伊藤慶二 仏23-112、仏 105-03


また、彫刻作品のようにカッコよすぎるモダンな漆工芸の厨子も。

厨子 / 藤野征一郎 叕(てつ)B-2-24 回出
位牌 / 藤野征一郎 蓮
置台 / 藤野征一郎 仏座 市松


正方形に近しいものや、床の間や掛け軸を思わせるような縦長のものなど、さまざまなかたちが存在しています。


・・・こんな世界があったんだぁ、素敵すぎる!!!と あちこち眺めては、思わず見とれてしまうお品物ばかり。

この素敵な厨子の数々、一体どちらに???

中央 厨子 / 内田繁 Type E-P-R


❖❖❖


ご紹介した厨子の数々は、銀座・並木通りに面した厨子屋ずしやさんで展示・販売されています。

店名の通り、厨子をご紹介する専門店なのです✨

アートギャラリーのようなエントランス


お店があるのは、銀座の喧騒から少し離れた、銀座一丁目エリア。京橋や有楽町、東京駅も徒歩圏内という立地に、2002年にオープンされました。

厨子屋 銀座本店
東京都中央区銀座1-4-4ギンザ105ビル1F・B1
TEL 03-3538-5118
営業時間:11:00~19:00
お休み:毎週火曜、第2・第4水曜
公式ホームページ  公式Instagram

実は今回、とってもありがたいことに、厨子屋の広報チームの皆さまからお声がけいただき、お店にお邪魔してきました!!!

実はわたし・・・この厨子屋さんから、徒歩3~4分くらいのところにある松屋銀座さんに、展示を定期的に観に行く「デザインギャラリー1953」がありまして。

そのギャラリーと同じ7Fフロアに、厨子屋さんのお品物が展示販売されているエリアがあり、ずーっと遠目から気になってはいたのです。


そしてこの路面店も、以前から前を何度か通ってはいて、やっぱり気になっていたのですが・・・

公式ホームページをみると、「来店のご予約」とあり、もしかしてわたしのような、なんとなーくお品物を見てみたい、みたいな人が伺ってもいいのかな・・・なんて思っていたので、とっても嬉しく、ありがたい機会でした✨

❖❖❖

今回、伺って驚いたのは、地下に広がるアートギャラリー。

元々はこちらのスペースが、ショップでありギャラリーの「ギャラリー厨子屋」だったそうですが、2024年10月、ショップの機能を、新たに作られた1階に移して路面店とし、お名前を「厨子屋 銀座本店」に。
そして地下は、「ギャラリー」のみのスペースに生まれ変わらせたそう。

ここの階段を下った先に・・・
明るくて落ち着いた雰囲気のアートギャラリーが!


というのも、厨子屋さんでは現代工芸の作家の方々に、いわばコミッションワークとして、"祈り"をテーマに立体作品の制作などを依頼。
この路面店を中心に、オンラインなどでも作品を長らく販売していらっしゃいます。

新たにアートギャラリーのみの空間をつくったのは、企画展を定期的に開催し、作家の方々の作品を丁寧にご紹介できるような空間を、という思いからだったそう。

お伺いした日は、作家の方々が手がけた、いろんな"ほとけさま"をご紹介する企画展『 厨子屋オムニバス展 2025 仏さま』が開催されていました。

素敵な春のお花が、そこかしこに
しつらえてありました✨
仏さま / 伊藤慶二 仏10、示現仏、仏23-118


例えば、手のひらにのせて愛でられるくらいに小ぶりでかわいらしい、まさに"ほとけさま"という表現がぴったりの作品や、

漆芸家・松本慶一郎さんがつくる
お釈迦さまや菩薩さまなどのやきもの作品


柔らかくて素朴な表情に思わず笑ってしまう、張り子でつくられたお地蔵さまや菩薩さま、

女性3人によるアーティストトリオ 花山河さんの作品


道端で摘んだ草花をいけても、オブジェのようにそのまま飾っても楽しめる、小ぶりで有機的なかたちのガラス作品、

ガラス工芸作家・松岡ようじさんが手がける
吹きガラスのうつわたち
フォトフレーム / 藤野征一郎 漆額 岩肌の庵
位牌 / 藤野征一郎 漆位牌


木彫と漆でできた抽象的なオブジェや、陶製の彫刻作品など、さまざまな素材や形式のお品物がずらりと並んでいて、どれもとても素敵でした。

土楽窯七代目・福森雅武さんによる
とっても珍しい陶版の作品も…!
手前に置かれたのは、松岡ようじさんの作品群


わたしが拝見していて、素敵だなぁ 嬉しいなぁと思ったのは、お家のちょっとしたスペースにも飾りやすいサイズの作品が多いこと。

厨子屋さんから作家の方々に依頼しているのは、概ね小ぶりな作品が中心なんだそうです。


ちょっと余談ですが、いわゆるアート作品をなかなか買おうと思えない理由に、サイズが大きくて家に飾りにくい、ってことも少なからずあると思っていて。
と同時に、サイズが大きいとやっぱりお値段も比例して、手が出しづらいということが多いんですよね。


でも厨子屋さんなら、作家の作品って買ったことない・・・という方にも、飾りやすいサイズと、手に届きやすい価格帯の作品にたくさん出会えそうです。

❖❖❖


そんな中、実はわたしも、この日思わず、とある小さなうつわを購入してしまいました。

薄く ほのかに水色を感じる白と、お花を思わせる縁のかたち。
あぁ 美しいなぁ 素敵だなぁ と見とれ、ふとプライスカードを見てびっくり。

なんとなんと、新里 明士にいざと あきおさんの作品でした…!!!


お聞きすると、もう何年も前に新里さんが厨子屋さんのためにつくったお品物で、お値段も当時のままだそう。

つまり、今の新里さんの作品のお値段からすると…  あれ?桁が足りない?間違いかな?という価格。かつ、最後の一点 とのことで、即決してしまいました(即決してしまえるお値段だったのです)。


新里さんと言えば、実はもう何年も前に美術館で作品と出会い、その後、ご縁あってうつわを購入したことのある陶芸家の方でして。

いま共に飾り、ときに使いながら愛でています。

第一印象でも思ったのですが、なんとなーく雰囲気が似ているような気が。
もしかすると同じくらいの時期に制作されたのかなぁ。そんな偶然も嬉しい出会いでした。

抽象化された お花のかたち
やっぱり何となく雰囲気が似ているような…

❖❖❖

さて、今回わたしがお声がけいただいた理由は、この春にギャラリーで個展を開催される、松岡ようじさんへのインタビューのご依頼!なのでした。

現在開催中の企画展にも展示・販売されていて、そのかたちと色合いに魅了された松岡さんのガラス作品。展覧会では新作を数多くご紹介予定だそう。

松岡ようじさん 個展「 硝子のうつわ   松岡ようじ展 」
会期:2025年3月8日(土)~4月21日(月)
会場:厨子屋 銀座本店 B1ギャラリー
時間:11:00~19:00(最終日は17:00閉場)
休廊:火曜、3/12(水)、26(水)  入場無料

3月といえば、厨子屋さんから約400m・徒歩5分くらいの距離にある東京国際フォーラムで、「アートフェア東京」も開催されるタイミング。

ぜひ多くの方に厨子屋さんへもハシゴしていただき、みずみずしい松岡さんのガラス作品と出会ってもらえたら嬉しいです。


松岡さんへのインタビューと個展の様子は、来月 3月15日前後 ( 予定 ) に、このnoteでお届けする予定です。ぜひ楽しみにお待ちください。
わたしも松岡さんにお話を伺うのがとても楽しみです!

そして、銀座へお越しの際はぜひ、厨子屋さんと地下のギャラリーにお立ち寄りください✨

現在開催中の企画展
「厨子屋オムニバス展 2025 仏さま」

会期:2025年1月25日(土)~2025年3月3日(月)

会場:厨子屋 銀座本店 B1ギャラリー
時間:11:00~19:00(最終日は17:00閉場)
休廊:火曜、第2・第4水曜  入場無料

出品作家:浅井竜介、伊藤慶二、十時啓悦、成田聡子、花山河、久村卓、福森雅武、松本慶一郎、米田文 ほか(五十音順)


厨子屋 銀座本店
東京都中央区銀座1-4-4ギンザ105ビル1F・B1
TEL 03-3538-5118
営業時間:11:00~19:00
お休み:毎週火曜、第2・第4水曜
公式ホームページ  公式Instagram


❖❖❖


この記事は、厨子屋さまのご協力のもとにお届けしました。

ふむふむ、へーそうなのかー!って思っていただけたら、下の方にある♥マークをポチっていただけるととても嬉しいです。noteアカウントがなくてもポチれたり、ツイート&シェアできます。

いいなと思ったら応援しよう!

Naomi┃アートライター・編集
記事を読んでいただきありがとうございます。いただいたサポートは書籍購入などに使わせていただきます。何よりそんな広く優しい心をお持ちの方には きっといいことがあるはず✨メッセージも合わせて書いていただけたら必ずお返事いたします✏︎

この記事が参加している募集