私が転職を反対しない理由
会社として、退職者がでるという事はとても残念なことです。会社としての損失はもちろんですが、何よりも、期待に胸をふくらませて入社をしてくれた仲間に、「ここでもっと頑張ろう」とワクワクしながら仕事に取り組める環境をつくってあげられなかった経営陣としての不甲斐なさを感じるばかりです。
ただただ、申し訳ないという気持ちと残念な気持ちではありますが、長い人生において「グローバルパワーでの経験は役にたったな」と少しでも感じてもらえればと思います。また退職者が「前職はあのグローバルパワーにいました」と自慢できるような価値ある会社にしていきたいなと思いました。
さて、この「転職」ですが、個人的には反対はしません。「若いうちの転職はどんどんやってみれば良い。」と思っています。
なぜなら、「物事は体験してみないとわからない事が多い」という単純な理由と、私自身が20代に沢山の転職をした事で非常にメリットを感じているからです。
私が現職のグローバルパワーに入社したのが31歳ですが、それまでに7社の経験があります。(つなぎのアルバイト的な活動を含む)
20代は、興味のままに、誘われるがままに、時には目の前の辛い事から逃げ出したくて転職をしました。
若い頃の私は、ご多分にもれず、隣の芝生が青く見え、自分の人生が思うようにいかない理由を会社のせいにしたり、周囲の人たちのせいにしたりしていました。
また、本や知識人から知り得たビジネス理論をあたかも自分が会得したかのように振りかざし、会社や上司が無能だとばかりに評論していた事もあります。(今考えると、かなりお恥ずかしい言動ですが、周囲の先輩方の懐は深くちゃんと話をきいてくださいました。)
数々の転職をしてわかったことは、隣の芝生は青くみえても、近くで見てみるとたいして青くなかったり、芝生が青いその先には相当な努力と厳しさがあってこそだという事でした。
また、目の前の辛い事から逃げたくて転職しはしたものの、辛い事や解決することから逃げた課題というものは、姿かたちを変え、また自分の目の前にたちはだかるのです。「環境をかえたところで、自分自身の課題は何も解決できない、しっかり向き合って自分で解決するしかない」とう事もよくわかりました。
つまり「組織も人も完璧な人はいない」「幸せは他人に与えられるものではない」という事が数々の組織体験を通じてわかったのです。
このような転職体験から、仕事に対する価値観は明確になりました。自分が仕事をする上でもっとも大事な事は「誰と何をするか」だという事がよくわかりましたし、人材業界の営業が何よりも大好きで「天職だ」と胸を張って言えるようになりました。グローバルパワーに入社した31歳以降は、仕事に対してまったくの迷いはなく、隣の芝生が青くみえることもなく自分で決めた道をひたすらに突き進んでいます。これは私の強みの1つです。
20代の私に、人生のアドバイスをしてくださった先輩は沢山いらっしゃったと思いますが、天狗で血気盛んだった20代の私にはそのアドバイスは右から左へ受け流されていました。20代の私には、身をもって体験してみないとわからない事でした。
若さ(20代)は1つの価値です。企業にとっては投資すべき対象になります。1から何かをまなびたいと思ったら、若ければその業界、職業で「未経験ok」で就職ができる可能性が高まります。しかも、興味があることを学びながらお給料がも貰えるのです!「わかりません、教えてください」といえば先輩たちが「積極的でよろしい」とばかりに喜んで教えてくれます。
ところが、35歳をすぎるとこうはいきません。
私はもうすぐ40歳になるのですが、昨今webに目覚め、webの事をもっと学びたいと考えています。仮に私が、「webについて学ぶためにはその業界に入るのがてっとり早い」と考え、web業界に転職をしようと就職活動をするとします。
しかし、業界経験がまったくなく、子持ちで残業ができない40歳女性を未経験okで雇ってくれる企業は稀でしょう。縁あって雇ってもらえたとしても実務経験はゼロですので、初任給はかなり低く、家族を養う身としては少々きつい待遇になることは間違いありません。また、入社して「わかりません、教えてください」というスタンスでいると、「40歳にもなるのに、自分で勉強しろ。新卒じゃあるまいしなんでも聞くんじゃない。」と陰口を言われるのがオチでしょう。
40歳近くのビジネスパーソンが、新しく何かを学ぼうとすると、スクールに通うかコンサルタントを雇うかで、高いお金を払って教えてもらうしかないのです。
ついでにもう1つお話すると、若い頃は、周囲の影響をとても受けやすい時期だと思っています。感受性豊かな年齢なので、組織のカラーに染まりやすい傾向があります。
体育会系のゴリゴリの営業会社にいれば、ゴリゴリのビジネスパーソン育つでしょうし、社内政治が昇進において最も重要な会社にいれば、顧客よりも社内政治を優先するビジネスパーソンになるでしょう。顧客志向で切磋琢磨しながら自分の能力を高めていくのが当たり前の環境にいるとそれが当たり前になるでしょう。
実は、この社内風土というのは、会社に入ってみて初めてわかることが多いものです。転職経験がある方であれば、一度は「面接で聞いていたことと違う」「入社してはじめて知った」という事があるのではないかと思います。
仕事は1日の1/3を占めるテーマで、人格をもつくります。感受性豊かでチャレンジを寛容に受け止めてもらえる若い時期に、ぜひ様々な組織体験をしてみて頂きたいと思っています。
ただし、1つの事を長くやることでしか見えてこない事は沢山あります。20代の入社1年目の人に責任ある大きな仕事をまかせる企業は多くありませんし、3年の勤務しただけでは経験とみなしてくれない会社もまだまだ沢山あります。
人事・人材業界では、転職回数が多い人は、一般的には市場価値が低いのが現状ですので、くれぐれも転職は慎重に♪
では。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?