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出席簿#40「図書館がつなぐ思いのバトン」
【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」
12月23日、月曜日。冷え込みの厳しい週末となりましたが、皆さま週末はいかがお過ごしでしたか?私は土曜日に美又温泉という温泉地で詩吟の舞台を一つ務め、今年の詩吟納めとなりました。美又温泉では毎月寄席をやっているのですが、時折、吟士として呼んでいただけるのです。今月の寄席のテーマは忘年会、ということで、毎月3~4組ほどが交代で出演しているこの寄席ですが、いつもの倍近くのメンバーが集い、賑やかに舞台をしました。私の生活はかなり市銀を中心に回っている部分があるため、こうしてその年最後の舞台なり稽古なりを終えると、一気に年末になったなあと感じます。
美又温泉、とっても雰囲気のいいところですので、よかったらぜひ一度お運びください。先日発表があったばかりですが、全国の温泉観光地を対象にした温泉総選挙で美肌部門第一位だったんですよ。島根の隠れた名湯です。
さて、月木に更新しているnoteですが、月曜日には拙著『おしゃべりな出席簿』お試し版として、連載当時の作品とそれに寄せて今の思いなどを気ままに綴っています。今回ご紹介するのは、図書館にまつわる思い出。終業式が終わると、職員室も大掃除・・・・・・というか、生徒との大掃除では着手できない部分、すなわち、機密性の高い重要書類等の整理をしたり処分をしたりして、環境を整え、年越しをします。この時期の図書室でどんなことが行われているかというと・・・・・・?
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学校の「今」を島根の現役教員が綴ったコラム集、『おしゃべりな出席簿』5分間だけ、高校生活をのぞいてみませんか?
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定期的に沸き起こる席替えコール、学食バイキングでの温かい交流、総体出場メンバー選抜前のギスギス感。センター試験前にフェリー欠航の危機!?緊急事態宣言、そのとき島根では……?誰もが懐かしめる学生時代の思い出も、島根ならではエピソードも詰まった一冊です。
「図書館がつなぐ思いのバトン」
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古い本の詰まった箱を台車へ載せる。「古紙でいいんだよね」念のため、ぐらいのつもりで司書さんに確認したら、「いえ、機密文書です」。
「え、なんで」目を丸くすると、「貸出バーコードがついているし・・・・・・個人情報保護ですね」。
保管期限が過ぎた重要書類は「機密文書処分場」に納める。読み継がれた本たちは静かにその勤めを終えて倉庫に入った。ちょっと寂しい。
手垢がつき、日に焼けた裏表紙をめくってみると、空っぽの「貸出カード入れ」。かつては読書ついでに、カードもぼんやり眺めていた。あの頃の本たちはどうなっただろう。
倉庫と図書館を何往復もして、こんなにたくさんの本が書架からおろされているということに驚く。でも、そうだよね。毎年たくさんの新顔がやってくるものね。よっこらせ、と最後の箱を置いて、倉庫に施錠。年末の大仕事が終わった。
ある日、下校時刻も過ぎてから「ちょっと見てやってくれませんか」と、司書さんの声。うながされて入った図書室の机には、おしゃれなクロスがかけられ、お手製のポップが立てかけられていた。「図書委員でクリスマス会準備をしたんです」。
生徒たちが一枚ずつ作ったポップは、何枚もの色画用紙を重ね貼りしたり、マスキングテープで縁取ったり、それぞれに工夫があって、あたたかい。そして、真ん中には、ひとりひとりにとって大切な本の紹介。シンプルにまとめてあるものも、ぎっしり書いてあるものも。味の違いがおもしろい。
引退する本たちを前に気づくのは、一冊との出会いという奇跡。
今では見かけない貸出カードには、その奇跡が刻まれていて、(この人、二回も借りてる)とか、(クラスの子がもう半分以上読んだんだ)とか、カード越しに、誰かと本との出会いやその時の思いに手を伸ばせた。
色とりどりのポップは、(感動したから読んで読んで)、自分と本との出会いを雄弁に語っている。時代は流れてツールも変わる。でも、変わらない部分はたしかにあって。「これ、どうだった」「ぜひ読んで」、図書館では思いのバトンがつながれている。
(2014/12/24 朝日新聞島根版掲載)
作品に寄せて
お読みいただきありがとうございました。ちょうど10年前のクリスマスイブに掲載だったんですね。あの頃も「貸出カード」ってちょっと懐かしさを感じさせるアイテムでしたが、今はさらに、あの頃の思い出が遠いものとなり・・・・・・ノスタルジックでさえあります。あのカード入れまでもちょっとアンティーク感あってときめきませんか?学校の図書館って、あの木製のカード入れ(棚)、おしゃれだからそのまま残しているところが多いような・・・・・・。
そういえば、日曜日には久々に息子と図書館に行ってきました。まだ目が離せない2歳さんなので、子連れで行くと自分の本選びをゆっくり、といういわけにはいかないのですが、ばたばたしながら絵本を選ぶのもそれはそれで楽しい時間だったりします。
思えば私が小さい頃、年末年始の前には父と本屋に行くのが恒例で、(普段はそこまで父と出かけた思い出は多くないのに)そのときばかりは「休みの間に読む本」を買ってもらえたんです。そういう原体験があるからでしょうけれど、冬にたくさんの本を持って帰宅すると、「冬ごもりの準備完了!」という気分になってきます。おおつごもりに突入ですね。
文学フリマin広島に出店します
2/9(日)文学フリマin広島 出店することになりました!
『おしゃべりな出席簿』、持って行きます。そして・・・・・・この本の挿絵を描いてくださったお二人からの協力が得られることになりましたので、創作童話のコピー本を持ち込もうと準備を進めております。
noteで交流のある方と、ぜひお会いしたいので、参加予定の皆様、どうかよろしくお願いいたします。
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