西直紀 最期の五七五集『欲深い 家族が囲む 世界地図』
旅先で 見上げた空に 軍事ドローン
振り向けば くわえタバコの 宇宙人
面接で ゾーンに入り プロポーズ
肩たたき 母のうなじに スカルタトゥー
欲深い 家族が囲む 世界地図
神だらけ 地獄だらけで ゴーズオン
空わたり 大股開く 下卑た虹
空元気 10年続けて マジ元気
悔しくて 握りつぶした 肉団子
糖尿の 傷に集まる カブトムシ
生きるため 今日もお堀で 地引き網
ふるさとに 背を向け伸ばす リーゼント
ドブ川で 痩せたカッパと 目が合った
人の道 不倫相手に 説く坊主
革命を 思い立つまで 寝て過ごす
どなり合う オレもオマエも ビブラート
ひび割れた メガネが止めた 日本刀
『ケダモノ』と 里に轟く 嫁の母
痰壺で スクスク育つ エヘン虫
雪が解け オレのふるさと 見つかった
砂浜に 埋まったオレを 見る野犬
初デート 「雌」の字書いて 飲み込んだ
のせられて ハブとマムシを 首に巻く
わらしべで 銀河をふたつ 手に入れた
リストラに 気付かぬふりを はや五年
信じてた いつか石油が 噴き出すと
サバンナを 彷徨い思う 「帰りたい」
保健室 忘れ去られて 朝寝坊
泥棒が みんな欲しがる 良いバール
沖合いで 悪いイルカに 囲まれた
かくれんぼ あれから兄を 見ていない
全身に トリックアートの タトゥー入れ
今の俺 昨日の俺の 下位互換
もし俺が ウナギだったら 蒸されたい
繰り返し 同じ呪文を かけられた
宇宙から 届いた手紙 変な文字
犬がワン 猫がニャーニャー 麻呂おじゃる
森の奥 古い屋敷に クロックス
アメリカの ためにがんばる CIA
春雨と マロニー入りの 焼きビーフン
革命の 参加者みんな 主人公
侘に寂 萎えの彼岸で ALL萌え
ビルゲイツ 多分いろいろ 知っている
ビビンバか ピビンバなのか ピビンパか
激情と 理性を跨ぐ 秋の空
ファービーに 未来を問えど 無反応
呻いてた 離れの地下の 鎖人
こちとらな マサチューセッツ 二高だぞ
天啓が 死の瞬間に 降ってきた
人生は クレタスタイル ラビリンス
物心 ついた頃から 忍び足
ベンジャミン フルフォードから 聞いたんだ
たっちゃんを 廃人にした 甲子園
致死量の 塩を纏った にぎりめし
眠れずに 数える数字 ドル単位
人だった 改造手術 受ける前
奮い立ち 還暦過ぎて 初登校
活け締めの マグロの目玉 涙色
ガンジーと マザーテレサと ムツゴロウ
三下が しびれくらげに 恋をした
あの時が 全てのピーク だったとは
朽ち果てた 三角木馬 ヒンと啼き
終活を いつかするぞと 寿命終え
世界一 高いサブスク 国保料
セフレから ピロートークで 指導受け
今日だって 俺が思えば 夏休み
抱き枕 我が子を食らう サトゥルヌス
ラティメリア メナドエンシス カルムナエ
もうきっと 『流行語』なぞ 生まれない
驚かれ 慣れられ飽きられ 忘れられ
親戚の 金を集めて ぶらり旅
犯人を 追い詰めたけど どうしよう
カーストが ワーストだって 恋したい
初恋の 幼なじみが 海を割る
椅子を取り ゲームに勝って 嫌われた
寒い夜 グッと着込んだ 肉襦袢
両親は 秘密結社で 恋をした
一を聞き 十を知るまで 帰れま10
逆鱗に 触れたついでに 揉んでみた
「負けねぇぞ」 言ってはみたが 勝てねぇな
12月 アイスコーヒー テラス席
ルービック キューブがうちの コースター
初夢で 働きすぎて うなされる
夜明け前 首都高駆ける ムーンウォーク
自然薯を 夢中で掘った 二十代
コンビニで 小判を出して 一悶着
超能力 百度参りで 手に入れた
喜寿祝い みんなで建てた オベリスク
弾丸を カツラで逸らす テクニック
大晦日 夏の魔物を 弔った
もーいーよ 叫びつづけて 日が暮れて
ナスオレと ドリアンオレと イチゴオレ
好きだから 暴れ歌って 伝えたい
ペット論 ブレードランナー 思い出す
そう言えば あいつあの時 笑ってた
初孫に 受け流されて 歳覚え
ブチ切れて ブチ切られての 披露宴
掃き溜めで 鶴を捕まえ BBQ
ゲン担ぎ 箸の代わりに キツネ指
落ち延びて 奥歯軋ませ 国創り
鳴き砂が 鳴くだけ鳴いて 静まった
里芋は ブリリアントに カットして
ステストと ブラックロックと バンガード
水仙を 刻んで搾る 闇バイト
ラブラブラブ ラブラブラブラブ 人類史
現実を 見ず追いかけた 夢の果て
縦笛を 集めて捌く 委員長
督促状 封を開けずに シュレッダー
なんとなく 見上げたビルに スナイパー
面の皮 厚くしすぎて 肩がこる
ニュートンが ビビビとなった 果実です
休日に 掃除だからと 掃き出され
目の前の 君との距離は 果てしない
悲しみは 涙にとけて 地にしみる
少年の 叶わぬ夢ほど 美しく
何気なく 放った言葉 君を撃て
生きるのも 死ぬのも独りと 君に宛て
夕暮れさん 悲しみひとつ 持ってって
もう二度と 逢えないひとへ 元気です
誰よりも 自分のことを 信じるな
身のための 湯治でのぼせ 運ばれる
俺のLINE 届いてるか?と 祖父のTEL
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?