10月スタート新ドラマ「Qrosの女」の期待度
10月スタートの新ドラマの第1話を観て、個人的な期待度について語ってみようと思う。
今回紹介するのはテレ東24時6分放送「Qrosの女」
ドラマの概要は以下。
週刊誌記者を主人公とした、芸能界の闇やゴシップの真実に迫るドラマだ。
原作は、「ストロベリーナイト」をはじめとした”姫川玲子シリーズ”や、「ジウ」など、映像化された作品も多い小説家・誉田哲也の同名小説。
先に結論を言うが、「Qrosの女」は様子を見つつ2話以降も観たいと思えるスタートだった。
その理由について、まとめてみる。
1.出だしのスピード感が魅力的
冒頭、桐谷健太演じる主人公の栗山孝治と影山拓也演じる異動したての若手記者、矢口慶太の張り込みシーンから始まる。
敏腕記者である栗山と、芸能ゴシップ記者としては歴の浅い矢口の、ちぐはぐな掛け合いのテンポが面白い。いつ動き出すか分からない”獲物”を逃しまいと、そして”絵”を絶対にカメラに納めてやるという緊張感と、気の抜けた二人のやり取りのバランスが絶妙である。
最初から気を張りすぎず、かと言って弛んでいるわけでもないドラマの空気感が良いのだ。
そしてそのまま、ポップなオープニングへと突入する。
オープニングでは、主要な登場人物が次々と映し出されるが、それぞれの表情や仕草から、短い時間のうちに、キャラクターたちの大方の雰囲気が掴めるようになっている。
オープニング明けから、本格的な張り込みシーンに移っていく。これまで大きな動きを見せなかったターゲットが、ホテルで何やら怪しげな動きをし出した。栗山は、車から降りて後をつけ始める。
一気に緊張感が高まる接近戦に、思わず息を飲む。
スリル満点のスタートは、我々視聴者を見事に物語に入り込ませた。
2.何かしてくれると思わせてくれる登場人物たち
主人公の栗山は、飄々とした性格のようだ。
ハプニングが起きても動じず、よく切れる頭ですぐに次の一手を考える。
しかしその一手が、一々大胆なのだ。いい絵を撮り、いい記事を書くためには、軽犯罪は厭わない様子だ。
矢口をビクビクさせるその大胆さが、我々に「この人絶対に何かしてくれる!」と期待感を抱かせるのだ。
それから、栗山を勝っている編集長、林田彰吾のキャラクターも魅力的だ。
阿部たかしが演じる林田もまた、栗山とは違った危なっかしさを持っている。
林田の場合は、かなり開き直ったおかしさがあるのだ。
雑誌の売り上げのためなら、読者の見たいもの、求めているもののためなら、多少の無理は伴って当然。はっきりと明言していたわけではないが、恐らく栗山の犯罪行為も知っていながら見て見ぬふりをしているのだろう。
ところで阿部たかしは、今回のドラマのような役柄が多いように思う。
”危なっかしいオジサン”の役をやらせると、右に出る者はいない。
阿部たかしが演じた役柄の中で、私の中で個人的に強く印象に残っているのは、2022年放送のドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」で番組のチーフプロデューサーだった村井だ。このドラマの中で、村井は特に最初の方や嫌な、危なっかしいオジサンだった。ところが、回を重ねる毎に見えてきた彼の姿は、”自分なりの正義を信じて戦うオジサン”というもの。
そのある意味懸命な姿に、彼を嫌いになりきれず、それどころか共感してしまった視聴者も多かっただろう。私もそのうちの一人だった。
阿部たかしは、様々なオジサン像を巧みな演技で魅せてくれる俳優だ。
本作のオジサンにも、期待が高まる。
さて、本作の結論として「様子見をしつつ」とした理由についても触れておきたい。
テーマの訴え方が毎度同じ
本作のように、週刊誌やワイドショーなどの世界を舞台にする作品に、必ずと言っていいほど出てくる「人の不幸で飯を食うことへの葛藤」と、世の中の声の大きさや誹謗中傷の恐ろしさを提示し問いかける描写。
今回も恐らく、上記を視聴者に訴えたいテーマの一つとしているのだろう。
ところが、このテーマは数々の作品で既に扱われてきたものだ。
しかしどうだろう。何度注意喚起がなされても、残念なことに世直しがされることはない。
今までこのテーマについてあまり考えたことのない人が、本作を通して得るものがあるかもしれない。
駅に貼ってある”詐欺撲滅ポスター”のように、何度も何度も視覚に訴えかけることで、観る人の脳に擦り込むことはできるかもしれない。
故に、本テーマを扱うことを決して悪いこととは思わないし、何度伝えても良いことであると思う。
しかし、アプローチの方法がどうも毎回同じだ。
「とある人が問題を起こす→それを取り上げる人間がいる→それを見た大勢の第三者が問題を起こした人間を袋叩きにする→徹底的に潰された人間は、再起不能になる→再起不能になった人間を見て初めて、第三者は自らのした事の重大性に気が付く」
大体このような筋書きだ。
同じような筋書きで社会現象化したドラマに、2019年放送「3年A組-今から皆さんは、人質です-」がある。当時大きな話題となり、SNSでも誹謗中傷についてを中心に議論が交わされた。ところが、ネット上での誹謗中傷はなくならないし、むしろ形ややり口を変化させながら、加熱しているようにも思える。
つまり、同じような筋書きで訴えたところで、視聴者の行動を左右するほどの効果は得られないのではないかということだ。
だからと言って、どのようなアプローチをしたら良いか提案できるわけではない。同じ方法でも、地道に訴えかけ続けるしかないのかもしれない。
もとより本作は、芸能界の闇やゴシップのリアルを描く作品であるから、主軸が違うのかもしれない。
それでも私は、第1話を視聴し、既視感を感じざるを得ず、モヤモヤとした気持ちが残った。
2話以降、本テーマをどのように扱っていくかは分からないが、新たな気づきやアプローチが見られることを期待したい。
1997年生まれ、丑年。
幼少期から、様々な本や映像作品に浸りながら生活する。
愛読歴は小学生の時に図書館で出会った『シートン動物記』から始まる。
映画・ドラマ愛は、いつ始まったかも定かでないほど、Babyの時から親しむ。
昔から、バラエティ番組からCMに至るまで、
"画面の中で動くもの"全般に異様な興味があった。
MBTIはENFP-T。不思議なまでに、何度やっても結果は同じである。
コミュニケーションが好きで、明朗快活な性格であるが、
文章を書こうとすると何故か、Tの部分が如何なく滲み出た、暗い調子になる。(明るい文章もお任せあれ!)