「エスター ファースト・キル」遅すぎる感想※ネタバレあるよ!注意!
140文字で感想を書こうと試みたけど、長くなってしまったのでこちらで。
「エスター ファースト・キル」。前作「エスター」は私が高校生くらいのとき? TSUTAYAで不穏なパッケージにB級ホラー好きの血が騒ぎ、借りてみたら衝撃すぎた怪作、何回も見直してるファンのくせに、本作は公開より2年遅れで観ました……。
前作の最後で、エスターが子供の見た目をした成人女性という設定がバレているところからの前日譚。正直、ヒットの2作目は2匹目のドジョウ狙いが多くあまり期待していなかったが、ファンサービスだけに偏らずちゃんと話が構築されていて嬉しかった。
主人公リーナはエストニアの精神病院から脱走し、行方不明者リストから自分に外見の似ているアメリカ人の少女「エスター」を見つけ出し、彼女の生家に引き取られることになる。
ここで、今回はエスター以上のモンスター、トリシアという(本物のエスターの)母親が登場。いろいろあって、終盤はトリシア+ガナー(本物のエスターの兄)VSエスターの殺し合いに。
今まで知性と美少女という特権と残虐性で最強だったエスターは始めて狩られる側になったのでした。
「エスター」の家庭、オルブライト家は裕福で、地域でも有数の名家であるらしい。その息子ガナーは、実は本物のエスターを殺しており、母トリシアは家名と家族を守るため、その隠ぺいに協力していた。
この映画自体は一作目を超えるものではないし、私の中でも「二作目だから期待してなかったけど思ったより良かったね」という評価ではあるが、ひとつ、気になったセリフがあった。
リーナとガナーの会話の中で、
ガナー
「電話一本で施設に逆戻り」(だから言うことを聞けよ)
リーナ
「あなたも終わり」(本物のエスター殺しがバレる)
ガナー
「俺が不法移民のサイコ逃亡犯の証言で?……ここはアメリカだ。俺は有力者」
つまり、誰も不法入国の移民でロシア訛りで精神病のカルト野郎のお前なんかの言うことなんか信じるものか、俺はこの名門ブライト家の息子。(←ガナーは外面はさわやかイケメンスポーツマン)
ということを言い放ったのだ。そうだった。彼女はその猟奇性から作中では最強の存在だったのだが、よく考えたら彼女の持っている特性は、社会からは弾き出される側、抑圧される弱者でしかないのだと……。
ガナーもリーナも殺人犯であることに変わりはないが、ガナーは裕福な生まれと母に守られる一方で、リーナはバレれば精神病院へ。
有力者の皮をかぶった「サイコ野郎」のほうが実は怖い、という社会批判になっている。本当に怖いのはガナーじゃなくて母のトリシアだけどね。
リーナは、実は成人女性であるにも関わらず、子供のままの見た目であるために、彼女が大人の男性(毎回、潜り込んだ家庭の父親)を好きになると、相手からは不気味がられ、強烈に否定される。
それは相手の男性が小児性愛者でない限り、普通の反応ではあるのだが、リーナとしては一生、愛し愛されることができないという歪んだ葛藤を抱え続けることとなる。
この問題は深く考えていくとかなり根深くセンシティブだ。アメリカで長らく公開禁止になっていた映画「フリークス」に通じるものがある。もちろん「エスター」はスリラーが中心の映画だけどね。
ちょっと調べていたら、現実に「リアルエスター事件」というのが起こっていたみたい。現実が怖い。