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会社のCO2排出量を調べてみた

表題の通り。
弊社はサステナビリティを促進する事業をやっていたり、メンバーにも環境問題・社会問題に関心がある人が多い。

そんな弊社自体は一体どれくらいのCO2排出量なのか調べてみたのだが、これがなかなか簡単ではない。調べるにあたって利用したソースや課題感をまとめていこうと思うので、CO2計算をしてみたい人や企業の方はぜひ参考にしてみてほしい。

前提

巷ではCO2排出量を計算し、トラッキングするようなサービスもいろいろあると思う。しかし、今回はどのサービスが良いのか調べる時間がなかったのと、海外のイケてる良さげなサービスはやはり有料…ということで、小規模スタートアップにはハードルが高かったため、地道にスプレッドシートと泥臭いリサーチで計算してみることにした。

Salesforceのサービスが良さげだったが、スタータープランで年間576万円〜とのことで、自分からしたら目玉が飛び出る価格だった。しかし社員数1000人規模以上の会社だったら検討する価値はあると思う。大きな組織のCO2トラッキングはきついし、そのために社員1人あるいはチームを専属で用意する年収と変わらなそうである。しかもAIが改善サジェストまでしてくれるらしい。

つぶやきメモ

まずはどんなことで二酸化炭素排出がされていそうかリストアップしてみた。

基本的な我が社の業務形態はこんな感じである。

⚫︎ 社員はリモートワークで、自宅orコワーキングで働いている。
⚫︎ そのため出張やイベント以外は基本的に交通系CO2は出ない。
⚫︎ IT系企業のため、電力消費が主なCO2排出項目である。
⚫︎ クラウドサービスの利用が多いので、それごとのサーバ利用がある。

うん、そもそも地球に優しそうな業務形態だ。通勤がないというのが結構インパクト大きそうな気がする。しかしサーバはいろいろと使っているので、その分がどれほどか?というのは気になるところ。

これを踏まえてCO2が出ていそうな項目をリストアップしてみるとこんな感じになった。

  • 会社のインフラ的なクラウドサービス

    • AWS

    • Google(Gmail、Drive、Analytics、Meet、カレンダー、Cloud)

    • Zoom

    • Notion

    • Slack

    • MoneyForward

  • 職種別のクラウドサービス

    • GitHub

    • Figma

    • Hubspot

    • Eight

  • 働く場所

    • リモートワーク時の光熱費

    • 外部のオフィス利用時の光熱費

  • 移動

    • 通勤電車

    • 乗用車

  • 出張

    • 国内日帰り

    • 国内宿泊

    • 国外宿泊

なお、サーバー管理が必要ないorほとんどいらないサービスについては光熱費に含むこととする。

ところで、二酸化炭素を数える単位ってなに?

なんせ初めての算出なので、まずはここからである。
なんとなく普段読んでいる記事などで目にしているはずなのに、まったく印象に残っていなかった。

最初に手をつけたAWSの資料には「MTCO2e」という単位が使われていた。なんじゃそれ?

MT…メガトン?と思ったけど、調べたら違った。
MTCO2eとは「Metric Ton of CO2 equivalent」の略で、AWSの説明ではこうだ。

炭素排出量の測定単位は、業界標準の測定値である二酸化炭素換算トン (MTCO2e) です。この測定では、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素を含む複数の温室効果ガスを考慮します。すべての温室効果ガスの排出量は、同等の温暖化をもたらす二酸化炭素の量に変換されます。

Customer Carbon Footprint Tool の理解の概要

つまりどういうことだってばよ!?
と思ったが、普通に「トン」のことらしい。Metric Tonとはメートル法でのトン、つまり1000kg相当ですよ、とのこと。

最初に文字の羅列を見た時には何か特別な単位なのかと思ったが、基本的にCO2は重さが単位になるらしく、AWS以外の調査を進めてもg、kg、tなど重さでの表記が中心になっていた。

調査開始:クラウドサービス系

AWS

まずはAWSから。AWSには「カーボンフットプリントツール」という専用レポート機能が搭載されており、簡単に調べることができた。

レポート画面はこんな感じ

さて、ここでどういう見方をしたらいいか迷ったが、どうやら「炭素排出量の概要」が見るべき部分のよう(参考)。ここをみるとわかるが、なんとAWSは ほとんどの炭素排出をクリーンエネルギー利用やエネルギー効率化によって実質削減しているのだ。

調べてみると、AWSは2030年までに再生可能エネルギー使用率100%を目指しているらしく、その目標値に着実に近づいている… いや、ほぼ達成していることが伺える(ちなみに現在は5年前倒し修正を行い、2025年を目指している)。

個人的には1番大きい炭素排出源だと思っていたが、なんとAWSは使っても使っても環境負荷のないサービス(ほぼ)だったのだ。

なので、上のレポートから分かることは以下

  • 自社の実CO2排出量は0.01t(=10kg)である。

  • もし自社で使っているCO2インパクトの総量を知りたい場合は炭素排出の概要を足し算すれば分かる(実質 + AWS削減分 = 2187kg)。


Google(Gmail、Drive、Analytics、Meet、カレンダー、Cloud)

お次はGoogle。もちろんGoogleも炭素レポートの用意がある。

注意したいのはGoogleには2種類のレポートがある点だ。それは一般的なオフィスインフラを束ねるGoogle Workspaceと、データ分析などのクラウドコンピューティングを提供するGoogle Cloudの2つ。

まず皆がよく使うGoogle Workspaceのレポートから。
ここにはGmail、Drive、Analytics、Meetなどが含まれる。

Google Workspaceのレポート画面

※ ちなみに、皆さんは普段あまり意識していないかもしれないが、メールサービスというのもCO2を排出している源である。過去のメールデータが見れるということは、そのデータを保存しているサーバがあるということだ。GmailでもMicrosoft OutlookでもYahoo!メールでもdocomoメールでも同じこと。見ていない過去のメールたちはずっと二酸化炭素を排出している。可能ならば、定期的にいらないメールは削除することをおすすめする。

つぶやきメモ

レポートの「温室効果ガス総排出量」という項目を見るとわかる(=21.9007kgCO2e)。

つぎにGoogle Cloudはこんな感じのレポート 。

Google Cloudのレポート画面

ここでは「年間の二酸化炭素排出量」を見る(=0.013tCO2e)。


Zoom

Zoomは録画機能があるためデータが保存されるクラウドサーバーがあるはずだが、弊社はローカルコンピュータに保存→Driveに保存という使い方が多いので、サーバは調査対象から外している。

しかし通話にかかるCO2排出量は気になるところ。
ネットで調べてみるといくつか論文や調査記事が見つかったが、Zoom社公式のものは見つけることができなかった。

今回はこの記事を参考にマサチューセッツ工科大学の推定値を利用することにした。

「マサチューセッツ工科大学(MIT)の最新の研究論文によると、ビデオ通話とZoomは1時間あたり150gのCO2を排出し、メール添付は1MBあたり20g、Netflixは1時間視聴で450gのCO2を排出する」

ウェブ会議1時間で150g! CO2排出量を“可視化”する大胆な試み

1時間あたり150gとのこと。弊社ではミーティングが多い人と少ない人がいるので、週の一人当たりの平均値を概算して算出した。

150g x 週平均時間 x 人数 x 52週 = 1年の総量

どんぶり勘定だが、まあこれくらいが作業コスパを考えたらちょうど良いと思う。


Notion

Notionはメモアプリと言いつつ、動画や音声・画像・表集計ファイルなどの添付もできるため無視できないデータ量だと感じている。

残念ながら、こちらも公式の炭素量情報は見つけることができなかった。
しかし使っている容量を考えると、GoogleWorkspaceの半分くらいは使っているのでは…?と思ったので、今回はそれくらいの概算値で仮登録をしておく。

Slack

Slack。ああSlack。こちらも炭素排出量を計算することが難しい。
公式情報は見つからなかった。

でも考えてみて欲しい。社内でやり取りしている全てのファイル、データ、テキスト会話はSlackを経由しているのだ。Driveと違ってファイルのバージョン管理なんてなく、送った時のファイルがそのまま記録として保存されている。考えただけで恐ろしい(一方でSpreadsheet等のクラウドサービスへのリンク添付だけで済むものは負荷軽減になるのではと感じた)。

一旦、こちらも概算としてGoogle Workspaceと同量で置き換えることにした。

※ ただ、以前AWSの障害でSlackが止まったことがある気がして、もしかして蓋を開ければ全部AWSの再生可能エネルギーでカバーされているのかもしれない。とりあえず今回は初回なので、使っているエネルギー分は集計に入れてみたいと思う。


その他のサービス: MoneyForward、GitHub、Figma、Hubspot、Eight

これらは既出のサービスに比べたらデータ量は小さいかもしれないが、調査をする上では把握したかったサービスたち。しかしながら、公式の炭素排出量に関する情報は見るけることができなかった(時間がなかったのでさらっと調査した限りだが)。

海外サービスにはこのブログでは声が届かないかもしれないが、国内にいらっしゃるマネフォさん・Eightさん、どうかご検討お願いします。特定の業界だけでなく色々な会社に広く使われているサービスだからこそ、サービス利用にかかるCO2排出量表示の検討をいただけると嬉しいです。


働く場所にかかるCO2

お次は働く場所にかかるCO2。

普段のリモートワーク

前述の通り弊社はリモートワークが主体なので、実際にかかっている電力は社員の自宅の光熱費だったり、コワーキングの光熱費の一部になっている。そこで按分を考える必要がある。

24時間あるうちで人間の主な活動時間は16時間として、そのうち弊社の規定の業務時間は8時間。1日8時間を月の稼働日数20日で考える。

(8時間 x 20日)/ 16時間 x 30日 = 0.333…

ということで、全体光熱費の1/3を按分として計上するのが良さそう。

計算ソースにはこちらの「家庭部門のCO2排出実態統計調査」から令和4年分を参照した。

世帯平均(2.59tCO2/年) x 1/3 x 社員人数 = 年間のリモートワークCO2

ちなみに、弊社メンバーには再生可能エネルギーを100%供給する電力会社と契約している者もいるので、その分は社員数から除外することで実質CO2排出量を計算している。

また、個人でコワーキングを契約している社員はコワーキングのCO2排出量がわからないため、一旦この計算に含めることした。

外部のオフィス利用時

リモートワークが主体であっても、セミナー開催や出張時にスポットでレンタルオフィスを使うこともある。

こちらもレンタルオフィス側からはCO2排出量についての言及がなく、上記の世帯計算から仮の数値を出してみた。

世帯平均(2.59tCO2/年) ÷ 365日 ÷ 16時間(1日)
= 1時間利用時のCO2量 (0.4434931507kg)

これに会社の月間平均利用時間を掛けて、年間に換算してみる。

0.4434931507kg x 月間平均利用時間 x 12ヶ月 = 年間CO2排出量


人の移動で発生するCO2

この項目は主に通勤(たまにある)や首都圏内の移動で発生するCO2だ(遠出の出張などは次の項目で計算する)。
計算ソースは「交通機関の種類とCO2排出量」を参照した。

 《CO2排出量の比較-1人を1キロメートル運ぶのに排出されるCO2》(2022年度) 

計算ソースでは距離によってCO2排出量が定義されているため、大体の平均値で出してみよう。

電車の移動

たとえば都内のオフィスに移動するために社員1人あたりの平均移動距離が25kmとしたら、往復で50kmになる。それに移動がある社員数と移動日数を踏まえて計算する。

弊社の場合だとほとんどの人はリモートワークだが、人に会う仕事が多い人もいるので、社内の移動係数は22回/月となった。

平均移動距離 x 電車CO2(20g/1km) x 月平均移動係数 x 12ヶ月
= 年間の電車通勤CO2量

*弊社例:50km x 20g x22回 x 12ヶ月 = 284kg

ここは、もしあなたの会社の社員数が多かったり、全員通勤があるようなら1人あたりの平均値を出してから人数と12ヶ月で掛けて年間計算すると良いと思う。

車の移動

次は車移動について。
弊社は機会は少ないが車移動のある社員もいる。ソースにある乗用車の排出量に移動距離と頻度を合わせて計算する。

平均移動距離 x 乗用車CO2(128g/1km) x 年間移動数
= 年間の車移動CO2

なんと電車移動が20g/kmなのに対して、車移動では128g/km、つまり6倍ほどのCO2が発生してしまうのだ。実数値を計算してみると、車での移動機会は電車に比べてずっと少ないはずなのにCO2インパクトが大きくて驚いた。


出張で発生するCO2

ここまで来ると調査も大詰めな気がしてきた。
最後は出張でのCO2について考えてみる。

いろいろな計算方法がありそうだし、厳密にやろうと思えばいくらでもできそうだが、今回はお手軽計算で算出する。

環境省が出している資料には、出張1日あたりにかかるCO2平均値が出ていたのでこちらを利用てみた。

第4章 カテゴリ算定例 カテゴリ6・7 人の移動, p3 (画像中ではp14)

国内日帰り(0.030t) x 年間日数 = 年間CO2量
国内宿泊(0.027t) x 年間日数 = 年間CO2量
海外(0.045t) x 年間日数 = 年間CO2量

かなり単純計算だけど、一応統計データに基づいた数値をだせる。
国内日帰りよりも国内宿泊のほうがCO2が低いのは、1日あたりの交通負荷が泊まりで片道になるためだと思う(それでも宿泊等のCO2もあるので微減くらいか)。

しかしこれを社内に共有したところ、海外出張の値がどうしても体感より小さいのだ。おそらく弊社はヨーロッパや北米などの出張が多いが、環境省のは平均なので中国出張などの近距離の人と相殺されてしまっているのではないかと思う。

そこで、遠方へのフライトで排出されるCO2は追加で算出することとした。出張者によると、サンフランシスコへは大体往復で1tCO2e、ヨーロッパへは1.1tCO2eとのことだったので、遠方へのフライトは往復1t x 出張回数 としてCO2量を追加した。


弊社の排出量

さて、ここまでの項目を計算するとこんな感じになった。ソースによって単位はバラバラだったので、「kg」でならして合算する。

細かい数値は非公開にさせてもらうが、概算で11.18tCO2eという結果になった。会社や社員の選択によって再生可能エネルギーを使っているおかげで、本来フルで化石燃料を使った時よりも影響値は74%に抑えられているということもわかった。

あとは、CO2排出量を過小評価しないという前提のため、算出は体感多めに数えるようにしている。ちゃんと細かく調査すればもう少し削減できる項目もあるかと思う。例えば、使っているSaaSサービスの裏側のサーバがAWSだったり、Google系も再生可能エネルギー100%利用だったりする場合だ(2022年まではそうだったみたい。最近のデータはわからなかった)。その辺もちゃんとしたソースがあれば今後反映していきたい。

感想とハルモニアで実現したいこと

CO2算出は簡単ではない

今回はじめてのCO2算出をやってみてわかったが、各サービス利用にかかるCO2量の情報提供をしていないサービスも多く、調査はなかなか難しかった。

これから環境問題・社会問題ともにさらに意識が高まる時世で、この不便さは各企業に解消してほしいことのひとつだと言える。また、ハルモニアのように再生可能エネルギーが使われている場合、どれくらいの割合で利用されているのかも情報として出ているとわかりやすい。

ちなみに、ハルモニアの場合はユーザーデータがAWSに保存されるため、利用者が使うプロダクトのデータほぼ100%が再生可能エネルギーで賄われいることになる。

厳密にいうと新機能の開発や営業活動、CS、コンサル活動などマンパワーが必要な場面ではCO2が発生するし、お客様のサポート活動にかかるCO2はハルモニア側もプロダクトユーザー側もトラッキングできたらいいのにな、とは思う。

ただ何よりもお伝えしておきたいのは、ハルモニアのプロダクト「Harmoniaロスフリー」を使うと、なんと成果に連動してCO2削減に貢献できるという点だ。それこそ製品利用で発生するCO2がプラマイ0、いやそれを超える削減効果がある可能性を秘めている。

ハルモニアの社会貢献

ロスフリーとは食品ロスを解消するサービス。需要と供給のバランスをみて、企業にも消費者にも無駄のない食品供給を提案する。

昔の概算なので今計算をし直すと数字が違うかもしれないが、だいたい1万円分の食品ロスを解消すると10kgCO2eの削減効果がありそうだった。

どういうことかというと、食品を消費者に届けるにはすごくCO2がかかっているということだ。漁業や家畜を育てるときに出るCO2、運搬にかかるCO2、工場にかかるCO2、パッケージ制作にかかるCO2…。

それらの手間と二酸化炭素を出してできた食品が毎日ドバドバと廃棄されてしまう(そして廃棄でもCO2を出す)。なんて残念なことだろう。食品ロスを解消するということは、これらのコストや環境負荷を抑えることにつながるのだ。

わたしは自社のサービスを通して、単に企業や消費者の役に立つだけでなく、社会や環境そのものにもアプローチしたいと考えている。

追伸

CO2試算が初めてということもあり、もしかしたら計算が間違っている箇所が含まれるかもしれません。それでも記録を残すことで誰かの参考になると嬉しいと思いました。

もし読者の中にこういったトピックに詳しい人がいたり、改善箇所を見つけた方がいたら情報をいただけると幸いです。次に試算するときはもっと良いものにしたいのと、この記事を見た人も一緒に勉強していけると良いなと感じています。応援よろしくお願いします。

サポートがあったら書籍購入や勉強会参加の資金にさせていただこうかと思います。先人の知識をたくさんの人へ広める潤滑剤になれれば嬉しいです。