思いつき短編:事故不動産
チリンッチリンッチリンッーーーー。
店内に来客用ベルの音が鳴り響いた。
二人の男女カップルが来店したようだ。 「いらっしゃいませ、今日はどんな物件をお探しで?」
上から下までピシッと決まった接客社員が対応する。
「あの、なるべく駅の近でーーーーー」
客が色々条件を述べた。
どんなに苦しい条件を言われてもニコニコして話を聞いている。
一通り聞き終わると、3件のお部屋を提示した。
「一応、3件をピックアップしてみたのですが……お客様、我が社はどういう物件をあつかっているかご存じで?」
二人は顔を見合せ、首を左右にふる
説明をしますと、我社が取りあつかっている物件は以前、事故物件だったものをあつかっています。
みるみるうちに二人の男女の顔色が悪くなる。
「お客様、安心して下さいませ。さきほども申し上げたように以前、 事故物件だったものです。物件を買い取った翌日にはお払いをさせてただき、クリーニングをした後、社員が3年間住まわせて、ようやくお客様にご提案させていただいております」
社員がふり返って手招きをした。
「では実際に住んでみた富岡が説明いたします」
商談している三人に近づいてきたのは富岡 末智世という筋骨隆々な男性が立っていた。
笑顔を見せた歯はとても白く輝く。
「初めまして、富岡と申します。お客様が気になさっている物件で3年間過ごさせていただきましたが、怪奇現象のようなものは一切御座いませんでした。まずは動画を観ていただきたいのですが…」
脇から出したタブレットを用いて説明が始まったーーーーーー。
「ありがとうございましたー!」
接客をしていた社員と筋骨隆々な男性用社員が同時に二人のカップルに向かって頭を下げた。
「先輩、商談成立して良かったですね!」
白い歯を見せて、親指を立てる富岡。
どうやら、今回はうまくいったようだ。
「はいは~い、その調子でどんどん契約結んでよね!」
奥から出てきたのは社長の世渡 見狐。
「はいッ社長!がんばりますッッッ!!」
また富岡は白い歯を見せて、親指を立てる。
「でも社長〜、俺がいくら話術にたけてても扱っているものがものだから神経すり減っちゃます〜」
先程接客していた口魅 豊はへなへなと自身のデスクに倒れ込む。
「な~に言ってんですかぁ、今まで幾度となく夜の女性を貢がせてたくせに〜」
パソコンを見ながら岡路 真ニ亜が口魅へ悪態をつく。
「だってそうすれば生活に困らなかったし」
口をタコのようにしながら言う。
世渡不動産が扱っている全ての物件が事故物件である。
業績は可もなく不可もなく、平凡。
客の条件、物件の気になる所、全てにおいて法律が許す限り包み隠さず開示する。
その社風のせいか、評判は良かった。
チャランッチャランッチャランッーーーー。
荒く店のドアが開く。
「「只今帰りましたぁー」」
男女の社員が外から帰ってきた。
名前は式廻 犬養と妻の式廻 鳥小、二人は夫婦だ。
「お疲れ様ー、どうだった?」
社長の世渡が冷たい麦茶を二人に出した。
「いやぁ、3件回りましたけど、いずれも成立しました。社長、何かまやかしつかいました?」
にやつく犬養を見て社長は笑う。
「あっははは。そうだね~、いつもの様に稲荷の神棚にお願いはしたね」
「社長って不動産よりもそっちのほうが本職みたいなところありますよね」
鳥小は関心そうに社長を見つめる。
「私の本職はここの不動産会社社長よ!」
そう、世渡の家系は先祖代々神社の家系で稲荷を祀ってきた。
その中で、世渡見狐は世渡家で類を見ないほど神力があった。
それを良いことに、不動産会社にも手を伸ばし、自身で霊を祓って元事故物件を販売しているのである。
祓うと言っても、ただ幽霊が視えないように呪いをかけているだけなのだが…。
「さて、今日も粘りに行ってくるよ!あの物件も押さえたいからね」
そう言って社長は緑の派手なスーツで出かけていった。
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