「フィンガーボウルマナーの代償」ショートショート
ある時、男は王宮の晩餐会に呼ばれた。
男は王族や貴族などではないが、長年の卓越した工匠としての名誉を讃えられ、招かれたのだった。
豪華な食事が振る舞われ、そこに水の入ったボウルが置かれた。
男はそれが何かわからず、飲み水のたぐいと思い口をつけた。
それはフィンガーボウルであり、手を濯ぐものだったが、男はそれをしらなかった。
周りの貴族たちは、その男の行動に面食らった。
しかしどう注意したらいいものか。今日の主賓の1人なのだ。
周囲が戸惑っている姿に男は気づいた。自分がなにかマナー違反をしたのではないかと思って、心配になった。
(もしかして、これは飲むものではなかったのか・・・?)
周囲の視線が注がれる手に持つ水。
しかし、その時、会を開いた女王がフィンガーボウルを持ち、水として飲んだのだった。
すると、周囲はそれに倣い、その晩餐会ではフィンガーボウルが水のグラスとして扱われた。
女王の機転で、男はマナー違反を自覚せずにすんだのだった。
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後年、男は自分がマナーを知らなかったことを知った。
そして、自分の無知により、女王の前でなんという無礼をしてしまい、恥をかかせたことを悟った。
男は、後悔と慚愧の念からーー讃えられた仕事をやめた。
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