小説📕このまま、この街にいたい

母さんへ

お元気ですか？
私が居なくても、家での時間は変わらずに進んでいるのでしょうね。

お金の事、きっと心配していると思って手紙を書きました。
私ね？実は少しだけですが、使わずに持っているお金がありました。
息苦しくて、限界が来たら逃げようと。
どこかで家を出たいと思っていたのかもしれません。

今、ホテルにいます。
掃除も生活用品も必要無い。
自分で言うのも申し訳ないですが、
今のままでは私は、
心が壊れてしまう気がするのです。
どうか気晴らしをさせて下さい。
2週間位は居られます。
そうしたら、また同じ生活のある家へ帰ります。

実は、
父さんから言われたこと、ある時期から
『録音』するようになっていました。
今までの事も全部、ノートに記してあります。

読み返した時、涙が出ました。

いじめられているな。
比べられているな。
差別されているな。

そう、思ったのです。

どうして？
母さんはどうして黙って見ていたの？

私のこと、嫌い？

本当言うと、帰りたくありません。

この街には興味を持てる事が沢山あります。
沢山、学びたいと思えるのです。
一度来てみたかった街へ、
思い切って来て良かった。

きっと、どうでもいい事なのでしょうね。

でも、今いる街が凄く素敵で。
怯える必要なんて無くて。
笑顔が上手な人の多い街です。

この前は言いませんでしたが、
住所を記載します。
家での状況を知らせて下さい。

きっと、何も知らされずに時は過ぎると思いますが…。

では。

深夜2時。
私は手紙をだして、スーパーへ向かった。
履歴書と飲み物を買った。

このまま、ホテル暮らしも悪くないと思い始めていた。

怯える家に、帰りたくない…。

何の為に生きているのか、分からないや。
でも、この街なら私は興味を持てる事が多い。
生きたいと思える。

これから、どうなっていくのかな…。