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世の中は、甘いものでできている。

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退屈恐怖症

 マジックバーというものに足を運んだ先日。どこかでみたことあるようなフォークを曲げる王道のそれや、気づいたらトランプが2枚両面くっついている事態に、普通に驚いたし歓声が止まらなかった。アルコールも相まってまわりの驚きも最高潮だったし、タネがあるに違いないという事実なんてどうでも良くなるぐらい笑った。あの夜は、最高だった。 — エンターテイメントの正体は一体何者か。物心ついた頃から、多分人よりも少しちかいところにエンタメというものがあった気がする。幼い頃、連れられた運動競

絶対値

まだ暑い京都で、半袖を当たり前のように着る今年の10月は曖昧すぎる。そんな中、買った方がはやいキムチを、わざわざ自分の手で一から漬けている。一週間かけて育てながら食べ尽くして、それを繰り返す。やらなくていいことを、わざわざ一からやる癖は年々ひどくなる。これが歳をとるということかもしれないし、そうだといいなんて呑気なことを、たまに考えている。 ハロウィンの化かし化かされには興味がなかったけれど、お化け屋敷が好きだった。怖さがないというよりは、不意打ちのそれが好きだ。予想できな

京都で暮らすという浪費

「いつも、なんだって早いんだから」といって、彼は去った。そんなことないと言おうとして辞めてしまったのは、自分でも気付いていたからかもしれない。もう何年も前のこと、全然変わってないな、自分。 引越しを終えて、役所に手続きをしに行った。朝一番に行って、転入するだけなのに何十分も待った。マイナンバーカードがあると、転入の手続きに慣れていない管轄は時間がかかる〜みたいな感じだったらしい。そのエピソードを笑い話にしていたら、「きみは適応が早すぎるから」と笑われた。そうなのかなあ、って

世の中は、甘いものでできていた

正直、わたしは飽き性だ。興味を持ったら一旦手を付けて、飽きたらやめる。そのスピードはたまにめまぐるしい、かもしれない。それでも書くことは、気付けば呼吸に等しかった。でもそれは、いつからか言いたいことをすっと飲み込んでしまう悪い癖が生んだ、わたしなりのわたしの救い方だった。だからどんなブログにも興味を示さなかったのかもしれない。「見てほしい」なんて気持ちはどこにもなかったのだから。 だから未だに、noteをはじめてもう1年も経ったことに驚きを隠せずにいる。 「世の中は甘いも

おかえり、ジェットコースターチョコレート

Calamansi:カラマンシー。柑橘の爽やかな酸味 / フィリピンを代表するシトラス からまる、マンシー、まんそー、Manceau。もらったチョコレートの名前をながめながら、言葉あそびをする。大好きなManceauのLife Traffic Jamなどをサントラに、ひとくち。しっとりと固い。そして次に歯に当たるのは果実のちいさなかけら。心地よいカカオと柑橘のパレード。口の中から消えても余韻が長いこのチョコレートをくれたひとは、どうしてこれをわたしにくれたのだろう。そんなこ

愛すべきミーハー心は、余力が生んだ魔法。

「私たち、ていねいな暮らし系ミーハー女子だと思うのよ」 混雑しているけど整頓された、すっきりとした空間。駅から徒歩10分近くは離れたカフェで、甘いケーキとコーヒーをいつものように側におき、彼女は言った。 カフェ、スイーツ、おしゃれでかわいいもの。多分私たちが惹かれるものはいわゆる流行りのモノ。そしてそれを追う人のことを世間ではミーハーと呼ぶ。そしてこのカフェも多分、その類。SNSで調べるとまっさきにおしゃれな店内と料理があらわれる空間。 たしかに、と思った。こだわり抜かれ

世の中は、甘いものでできている。

「あんまり彼氏できてほしくないって思ってるんだよね」 スープカレーを頬張りながら、友人はわたしに向かってそう口にした。それこそ勝手な話なんだけど、と付け足して。(一応補足しておくが、その友人には彼氏がいるし、わたしも恋愛対象は異性である)彼女は甘えるのが上手である。「聞いて」とわたしに愚痴を言ったり、「今日泊めて」となんの不快もなくわたしの日常にまぎれこんだりしている。この甘え、わたしはとても羨ましい。  甘えといえば、友人と連絡を取りながら「わたしたち、甘えるのが苦手

最高の消費

《一日は24時間です、みんな平等に。》 最近楽しいけど時間が足りない!という何気ない日誌への一言に、高校時代の担任がくれたコメントである。当たり前のことなのだけれど、今でもふとこの言葉を思い出す。私には必要すぎる言葉である、と昔と変わらず思うのだ。今の私になるまでに欠かせない先生というのが2人いるのだけれど、そのうちの1人である。 「失敗したっていいじゃない!なんとかなる」 なんてよく言うけど正直、なんとかならなかったこともある。でもそれでよかった、なんて思っている自分がい

どちらを選ぶのが正解か。

ハーゲンダッツと分かち合う夜ほど幸せなものはない。 二週連続で週末に台風がやってきた。もしかしたら私の最近の悩みを吹き飛ばしてくれるのかもしれない。などとアホな妄想をしてみるがどうも日々に疲れてしまった。自分を甘やかすためにハーゲンダッツを買いに重い腰を上げた。 ハーゲンダッツをねだる女は贅沢だ、高級志向だ、可愛げがないとどこかで聞いた。パピコを半分こしたいというような女性が庶民的でかわいらしい、と。世の中は私のような人間には厳しいらしい。 ハーゲンダッツとパピコどっち