ECサイトのコンセプトとは|具体的な設計方法と3つの注意ポイントについて
ECサイトを構築する際に設計しなければならないのがECサイトの「コンセプト」です。いかに効果的な企画や広告、SNSでの情報発信を行っても、ECサイトのコンセプトが不明確であれば顧客に選んで貰えません。
本記事ではECサイトにおけるコンセプト設計する意味やメリット、手順についてご紹介できればと思います。
ぜひ、この記事を参考にコンセプト設計して頂き、長く愛用されるECサイトを目指しましょう。
ECサイトのコンセプトとは
コンセプトには、「概念、全体を貫く基本的な観点・考え方」という意味があり、ECサイトにおいては「商品やサービスを誰に、どのように売るのか」といったショップの指針を決めるためのテーマを指します。
つまり、コンセプト設計は、ECサイトの「軸」を決めることであり、これをもとにサイトのデザインや掲載する商品ラインナップ、ターゲットへのアプローチ方法が決まります。コンセプト設計はECサイト構築における要であり、最初に行われるべき作業です。
コンセプト設計が重要な3つの理由
コンセプトが重要な理由として、主に以下の3つが挙げられます。
統一感のあるサイト
他社との差別化
小規模でも戦える
1.統一感のあるサイト
コンセプトが重要である理由の一つに「統一感のあるサイト」ということが挙げられます。
ECサイトは、訪れたユーザーにブランドや商品の認知や好感をもってもらういわば「顔」になります。
そのため、サイト全体に統一感がなく情報が散乱していると、サイトを訪れたユーザーはそのサイトが売りにしていることや押し出したいことを理解できず、購入に至る前にサイトを離脱してしまう原因にもなります。
統一感があるECサイトは、ユーザーが商品やブランドについて情報を得やすく、サイト内の導線も整備されていることから迷子になることもないため、高い満足度の顧客体験(UX)を実現できます。
ECサイトの統一感を実現するために「コンセプト」が重要になってきます。コンセプトがしっかり定められていないまま、サイトデザインに取り掛かったり商品を登録してしまうと、全体を貫く軸が無いため、統一感のないECサイトになってしまいます。
コンセプトをしっかり定めておけば、そのコンセプトに沿ってECサイトのデザインやページ構成、商品の掲載を行うことができるため、視覚的、操作性共に統一感がある使いやすいECサイトを構築することが可能です。
2.他社との差別化する
ECサイトにコンセプトが必要な理由として、「他社ECサイトとの差別化する」という点も挙げられます。
ECサイト運営において、同じ商材・サービスを取り扱う競合他社への対策や差別化は、売上を向上するために必須です。
自社ECサイトのコンセプトをしっかりと定めておくことで、競合他社との差別化を行い、ユーザーが自社の商品を購入する動機を作ることができます。
例えば、同じ美容製品を展開している以下の2つのECサイトがあったとします。
A社:肌・髪にやさしい素材を追求した美容製品を取り扱うショップ
B社:海外のトレンドを抑えた美容製品を取り扱うショップ
この2つのサイトはそれぞれコンセプトが異なっているため、当然狙うターゲットも異なります。
同じ美容製品を求めている人でも、素材にこだわりがある人はA社を、トレンドや海外に関心がある人はB社を選ぶでしょう。
このように明確なコンセプトを持っていれば、それぞれ目的を持って検索しているターゲットに購入の動機付けができ、商品が届きやすくなります。
しかし、もし「美容製品」という曖昧なコンセプトでサイトを設計していた場合、ターゲットにとっての「このサイトで買わなければならない理由」が無くなってしまうため、ターゲットに商品が届きにくくなってしまいます。
自社独自の明確なコンセプトを持つことは、他社との差別化を図りターゲットに購入の動機を作らせるために重要なポイントなのです。
3.特定のジャンルにおいて大手モールと勝負ができる
明確なコンセプトを持っていることで「小規模のサイトであっても大規模ECモールと戦える」という点も、コンセプト設計が重要な理由の1つです。
Amazonや楽天といったモールと呼ばれる大手ECサイトは、価格や品ぞろえの面で非常に強みを持っており、多くのユーザーを獲得しています。
一方で、特定のジャンル・ブランドには特化していないという弱みもあります。
大手モールに商品のバラエティ面で勝負することは難しいですが、明確なコンセプトを設計することで、その特定のカテゴリー内で強みを発揮し、ターゲットへ効果的に働きかけることができます。
つまり、明確なコンセプトを持つECサイトであれば、その特定のジャンルにおいて大手ECモールと十分に勝負ができるということです。
コンセプト設計の考え方
コンセプト設計に使えるアイデア発想法を5つ紹介します。ぜひ、設計の際に活用してみてください。
5W1H
ブレインストーミング法
ロジックツリー
KJ法
マトリックス法
1.5W1H
コンセプトを設計する際、最初の情報整理におすすめの方法が「5W1H」に沿って考えることです。5W1Hとは5つのW「WHY」「WHAT」「WHO」「WHERE」「WHEN」と「HOW」のことで、これに沿って情報を書き出すことで抜け漏れなく整理することができます。
ECサイトに当てはめた場合、以下のように情報を書き出してみるとよいでしょう。
WHY(なぜ):なぜ、ECサイトを始めるのか
WHAT(何を):ECサイトで何を販売・届けたいか
WHO(誰に):誰に商品・サービスを届けたいか
WHERE(どこで):自社ECサイト・モール出店などどのようなECサイトを運営したいか
WHEN(いつ):ECサイトを立ち上げる時期はいつか
HOW(どのように):ECサイトのコンセプトはどのように具体化するか(デザイン・決済等)
上記に沿って書き出すことで、作りたいECサイト像を具体化し、整理することができます。なるべく具体的・詳細に書き出すことが明確なコンセプトを設計するポイントです。
2.ブレインストーミング法
アイデアの洗い出し、整理に便利なのが「ブレインストーミング法」です。
ブレインストーミング法とは、同じ議題について複数人で可能な限りアイデアを出し合う方法で、要素の洗い出しにおすすめの方法です。
1人で行うことも可能ですが、複数人で行うことで違った角度からの意見やアイデアが生まれるため、より効果的に洗い出すことができます。
ブレインストーミングは、アイデア・要素を全て出し切ったことが重要です。その後、出されたアイデアから実現可能なアイデア・要素を精査するといった流れになります。この時、より効果的に行うために以下の点に注意しましょう。
結論を急がずになるべく多くのアイデアを出す
制限を付けず自由に発言する
アイデアの質を意識しない
様々なアイデアの中から最適なECサイトのコンセプトを設計するうえで、可能な限りアイデアを抽出することができるブレインストーミング法は有効な方法の1つです。
3.ロジックツリー
ロジカルシンキングの代表的な手法として、「ロジックツリー」という手法があります。ロジックツリーとは、課題に対しての要因を細分化し、木のように繋げていくことで共通点を見つけ出したり、深堀りを行う方法です。
例として、アパレルECサイトの商材を細分化すると以下のようになります。
洋服
アクセサリー
靴
上記の中からさらに「靴」について細分化してみると以下のようになります。
スニーカー
サンダル
ブーツ
このように細分化を繰り返していくことで、要素の洗い出しをすることができます。
ロジックツリーを活用すれば、情報を整理しながら解決策を見つけることが可能になり、客観的に情報を深堀りしていくことができます。
ブレインストーミング法と同じく、ECサイトのコンセプト設計に有効な方法の1つです。
4.KJ法
アイデア同士の共通点を見つけ出す方法として有効なのが「KJ法」です。
KJ法は抽出されたアイデアをカテゴリーごとに分類、分析し1つにまとめていく手法で一般的にブレインストーミング法等と組み合わせて行われます。
代表的な手順は以下になります。
ブレインストーミングなどで出たアイデアをカードや付箋などに書き出す
書き出したカードの中で印象が似ているものを集めて小グループ化する
小グループ同士を関係性によって並び替え、図解化する
図解をもとに文章化する
最適なコンセプトを導き出すため、ブレインストーミング法等で出たアイデアを1つにまとめ、共通点を見つけ出すことができる方法です。
5.マトリックス法
ロジカルなアイデアを創出する手段としては、「マトリックス法」も便利です。マトリックス法とは、表の行と列の2つの項目に対してそれぞれに当てはまる要素を埋めていく方法です。決められた項目・条件に沿って当てはめていくためロジカルなアイデアを生み出すことができます。
書き出してみると各項目の特徴が掴みやすくなり、各要素について分析、アイデア創出が可能になります。
マトリクス法は最終的に表としてまとめることができるため、アイデアを可視化しながら整理できる点で非常に便利な方法といえるでしょう。
コンセプト設計の注意ポイント
ECサイトのコンセプトを設計する際に、注意してほしいポイントが以下の4つです。
ペルソナとベネフィットを明確にする
他のECサイトを参考にする
コンセプトは大幅に変更しない
1.ペルソナとベネフィットを明確にする
競合他社と差別化し顧客に選んで貰えるECサイトにするには、より具体的なコンセプト設計が欠かせません。具体的なコンセプトを設計のコツとして「ペルソナ」と「ベネフィット」を明確に設定することです。
「ペルソナ」とは、「ECサイトを訪れて欲しいターゲットの人物像」のことです。ペルソナを設定しておくことで、ターゲットをより意識したコンセプトを設計することができ、訴求効果が高くなります。
年齢や性別、職業といった定量的な情報の他、性格、ライフスタイル、趣味趣向等といった定性的な情報を含めることが具体的に設定するためのポイントです。
対して「ベネフィット」とは、「ECサイトを利用することでユーザーが得られるメリット」のことです。「自社の製品を購入・利用することでユーザーはどのようなメリットを享受することができるのか」を考えコンセプトに組み込むことで、より顧客に寄り添ったコンセプト設計が可能になります。
顧客の目線に立ってコンセプトを設計すれば、ターゲットへ効果的に訴求することができます。ECサイトのコンセプトを設計する際は、上記の2つを意識するようにしましょう。
2.他のECサイトを参考にする
より訴求力の高いコンセプトを設計するためには、ライバルである競合他社のサイトを参考にすることも大切です。
他社のサイトを実際に閲覧・利用し、リサーチしましょう。
どのようなコンセプトで運営しているのか
サイトのデザインにはどう反映しているのか
どういった点で差別化できそうか
どういった点なら勝てそうか
また、競合他社のリサーチはECサイト開設当初だけではなく、開設後も定期的に行う必要があります。
なぜなら、競合他社が自社製品の競合になる商品を新しく販売したり、新たに競合他社となりうるECサイトが構築されたりと、市場の状況や傾向は変化していくためです。
自社ECサイトを常にアップデートするためにも、定期的なリサーチ・分析は欠かさないようにしましょう。
3.コンセプトは大幅に変更しない
ECサイトにおけるコンセプトの訴求力を上げるためには、一度決めたコンセプトは大幅に変更しないことも大切です。
他社の状況や市場の状況をリサーチしながら自社ECサイトを最新状態へとアップデートしていくことは大切ですが、大幅にコンセプトを変えてしまうと、今まで利用してくれていた顧客が混乱してしまったり、離れてしまったりというリスクがあります。
あくまで自社が大切にしている軸や骨組みとなる部分は大幅に変えないようにしましょう。
ECサイトコンセプトの成功事例
1.カレルチャペック(食品・飲料)
カレルチャペックは30年以上紅茶を販売している紅茶専門店です。公式ECサイトでは紅茶やボトル・グラスといった紅茶にまつわる商品も販売されています。
「かわいいものに囲まれて、おいしい紅茶を楽しく」をコンセプトにしており、ECサイトでは紅茶へのこだわりを解説するページやスタッフの紹介ページ、紅茶に関連する自社オリジナル記事を掲載するなど、ブランドの魅力を伝えるコンテンツが豊富なサイト構成になっています。
絵本作家でもあるオーナーのイラストを全体的に使用することで、ショップのコンセプトが視覚的に分かりやすい点も参考にしたいポイントです。
2.UNDERSON UNDERSON(アパレル)
UNDERSON UNDERSONは、「和紙糸」と呼ばれるオリジナル素材を利用したメンズ・レディースの肌着を販売するECサイトです。
「和紙がつくる健やかな肌」をコンセプトにしており、オリジナル素材へのこだわりや環境への配慮がECサイトのデザインやサイトカラー、商品画像に反映されています。
サイトのトップページには素材への思いや特徴を紹介するページが掲載されているほか、取扱い方や洗濯方法といった、購入後の顧客へのフォローも手厚く、満足度の高い顧客体験を生み出しています。
また、使用感が分かる動画をYouTubeへと掲載しECサイトに導線を設置する工夫を凝らすことで、試着ができず使用感が分かりづらいといったアパレルブランドのECサイトならではのデメリットも解消し、顧客体験の向上へと繋げている点は注目したいポイントです。
公式ECサイト>>>UNDERSON UNDERSON
3.毎月PANDA!(食品)
毎月PANDA!は、株式会社神戸屋が運営するECサイトで、月に1回日本全国のベーカリーショップから厳選された冷凍パンのセットが届くサブスクリプションサービスを提供しています。
「毎月ワクワク! パンダフルな定期便」をコンセプトにしており、冷凍パンというECサイト市場では珍しい商材や日本全国のベーカリーから毎月違ったセットをお届けするというサービス形態で他社と差別化をされています。
サービス内容の他に、パンを届けているベーカリーショップの紹介やおいしいパンの食べ方の紹介など豊富なコンテンツで、食品ECサイトにおいて起こりがちな顧客の商品・サービスへの不安を解消しており、コンセプトやサービスにかける想いがECサイトにも表現されています。
まとめ
本記事ではECサイトのコンセプトについて、コンセプトが必要な理由から設計のポイント、アイデア創出の手法などについて紹介しました。
ぜひこの記事を参考に他社と差別化し、自社ECサイトの魅力を伝える最適なコンセプトを設計してみてください。
なお、ECサイト構築にはコンセプト設計の他にも数多くのやるべきことがあり、手順を間違えるとその後の運営や成果に大きなダメージを与える恐れがあるため、念入りに取り組むことをおすすめします!!!