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2020年、わたしの心を救った5冊


2020年は、ひたすら自分と向き合った1年だったなあと思う。

向き合う時間が増えたから、自分の課題や改善点をたくさん見つけて、落ち込んだり悩んだりすることも多い年だった。

そんな毎日を過ごす中で、その時々のわたしを救ってくれたのは、本の中で出会った、煌く言葉たちだ。


偶然開いたあるページの一文で心が軽くなったり、物語の登場人物の生き方に勇気をもらったり。

今でも心に残っている、言葉や物語たちとの出会いが、今年を生きる糧になってくれた。

だから今日は、2020年、わたしを救ってくれた、生きる力をくれた、大切な本と言葉たちを振り返ってみようと思う。


今年読んだ100冊弱の中から、心に残る、大切な5冊を。


1. 幸せも苦しみも、自分だけのもの。ー西加奈子『i』

「自分の幸せも、悩みも、自分だけのもの。」
この言葉に出会って、自分にとっての「幸せ」も「苦しみ」も、相対評価することはできないし、する必要もないんだ、ということに気づくことができた。

緊急事態宣言とほぼ時を同じくして新しい職場で働き始めたわたしは、日々悩みながらも「自分は仕事もあるし、きっと恵まれている方なんだ。」「そうじゃない人と比べて、幸せだと思わなきゃいけないんだ。」という強迫観念に苦しめられていた。

そんな時、偶然この小説と出会って、苦しみも、幸せも、自分だけのものなんだ。いつだって、誰の前でだって、相対化して判断する必要はないんだ。ということに気づいて、凍っていた心がゆるやかに溶けていくのが分かった。

この身体は、この感情は、わたしだけのもの。自分が大切にしなかったら、誰が大切にするんだ。自粛期間中、そんな当たり前のことに改めて気づかされて、わたしはなんとか、苦しみから自分を守ることができたのだと思う。





2. 「役に立つ」より「意味がある」ー山口周『ニュータイプの時代』

これからの時代は、「役に立つ」よりも「意味がある」。

この言葉に出会ったとき、「あ、自分がなりたかったのは、こっちの人間だ」と思った。と同時に、もう「役に立つ」ことばかり考えて生きなくていいんだ、と知って心がすっと軽くなった。

簡単にまとめると、この本には、便利さが飽和してしまった世の中で求められているのは、そこに「意味づけ」をすること。「課題を解決する」のではなく、「課題を設定する」力をつけて、自由に色々な領域を飛び越えるように生きていく、それがこれからの生き方だ、と書かれていた。

この本に出会ったときのわたしは、Instagramで自分が発信している情報、そしてそれを発信し続ける自分自身が、「便利な情報として、ただその場で消費されているだけ」という感覚に陥ってしまって、悩んでいた時期だった。

自分には自分だけの価値がきっとあるのに、わたしはただ、このまま顔のないただの情報として、便利に消費され続けていくのかな。そう思っていた時にこの考え方と出会えたことで、「あ、わたしがこれから生きていきたいのはこっちだ」と思うことができた。

「自分なりの意味をつくる」ことは、難しいことなのだけど、それ以上に楽しいし、自分が自分として生きている感覚でいられる。だからこの考え方は、この先も大切に持ち続けて、努力をしていきたいなと思っている。



3. 「答え」は自分でつくるものー末永幸歩『13歳からのアート思考』

「目から鱗」という感覚をはじめて味わったのが、この本を読んだときだった。この本に出会って、わたしにとって、アートがより自由なものになった。

ここ数年、何かを目の前にしたときに、わたしはすぐに「正解」や「求められている回答」を知ろうとしていた。だけどそれはただの思考停止で、自分は全く自分の頭を使って考えていなかったんだなあと、この本を読んで思い知った。

世の中に存在するものには、大体「答え」があると思っていた。だから、絵画などの芸術作品にもきっと答えがあるのだろうという前提で、「自分にはわからない」と思い込んでいた。

けれど、この本を通して、「アートには答えなんかなくて、自分でみつける、つくる必要がある」ということを知って、アートに対する敷居がぐんと下がって、視界が一気に広がった。

アートを観賞するときは、正解を探すのではなく、まずは「自分がどう感じたか?」をじっくり考えること。そして、「なぜそう思ったのか?」を繰り返し問うこと。そうすることで、自分だけの答えが見えてくる。

この考え方は、アートへの向き合い方だけじゃなくて、対人関係にも言えることだなあと思う。自分の固定概念に囚われずに、常に相手をよく観察して、きちんと考えて、理解していきたい。

視界がぱっと広がって、少しだけ明るい世界に一歩踏み出すことができる、そんな感覚になった一冊。



4. 「正しさ」よりも、どう生きたいか。ー幡野広志『なんで僕に聞くんだろう。』

この本は最近読み終えた本なのだけど、「正しさ」に苦しめられていたわたしの心を、いとも簡単に救ってくれた。

幡野さんは、決して人の悩みを否定しない。「正しさ」を、押し付けない。それがどれほど救われることか、「正しさ」がすべてだと思っている人には、到底わからないことかもしれない。

「正しさ」はもちろん人を救うこともできるけれど、反対に、人を追い込むこともできてしまう。正しさのものさしは、人によって違うから。「相手のため」という大義があったとしても、それを振りかざすことによって、相手を余計に苦しめることにもなる。正しさは、美しい凶器だと、日々感じている。

自分が生きたいように生きればいいんだよ、自分の人生は自分で決めていいんだよ。そんな風に、当たり前のように心に届く言葉たちは、常識や建前で凝り固まった心を解して、本当の自分の心をそのまま見せてくれる。

生きるのがしんどくなったとき、大切な人が近くで苦しんでいるのを知ったとき、きっとこの本に散りばめられた言葉たちが、一筋の希望を見出してくれるだろう。



5. 生きるために、生きている。ー西加奈子『きりこについて』

『きりこについて』は、今年出会った小説の中でも、特に大切な一冊。

前にnoteにも書いたのだけど、この小説を読んで、「自分が自分のまま生きること」に対して、はじめて前向きに捉え、肯定することができた。

主人公のきりこは、何らかの目的や意義のために生きているのではなくて、「生きるために、生きている」

「ただ生きる」ことがこんなにも難しくなってしまった世界で、彼女のように生きることができたら。わたしたちはもっと、幸せになれるのかもしれない。

あるがまま、生きるために生きる。自分の心を、自分で満たす。
完璧に彼女のようには生きられないけれど、少しずつ、そんな風に生きることができるようになりたいなあと、希望をもらった物語だった。

自分のことが愛せなくなったとき、読み返したい一冊



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こうして、特に心に残っている本の内容を振り返ってみると、生き方について悩んだり、考えたりする時間が長い1年だったんだなあと気づく。

人に会うことが例年よりもできなかった今年だからこそ、自分の生き方について考えさせられる本に自然と手が伸びて、そこで出会った言葉たちが今も心に強く残っているのかもしれない。

2020年は、内側にあるものとじっくり向き合う1年だったから、2021年は、もっと多くの本や人、場所と出会って、できる範囲で世界を広げる年にしたい。

そして、思ったことや感じたことを、ゆっくり、丁寧に自分の言葉で紡いでいって、誰かの心に届けられたらいいなと思う。

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