超思いつき1場面物語『手紙』
という手紙を、何気なく開いた古本の間から見つける。
紙は、どうもまだ新しい。
じっくり見る文字は丸く可愛らしい。
美しい青い文字色が薄暗い古本屋と相まって、まるで、魔法の書のように輝いて見える。
僕は、この人の探すアナタを知っているだろうか?
記憶の中にアナタを探してみるが、悲しいかな。僕は知り合いが少ない。
夏休み入りたての、午後3時。
人気のない古本屋の奥で僕はうーんと小さく唸った。
見なかったことにして、そっと本に戻してしまおうか?
そして、そっと棚に押し入れようか。
「すみません。これ」
「あぁ、これ?いい本だよねぇ」
「はい、あ、読んだことはないんですけど一文が気に入って」
「そうかい。そういう出会いもいいもんだ。本も喜んでるよ」
店主はそう言ってニッコリ笑う。
いつもタヌキみたいだなと思う。
実は、本当にタヌキなのかも。
手の中に古ぼけた本をつつんで、僕は店主に挨拶をして、ごく普通に店を出た。
ひんやりした薄暗い店内とは対象的に、照りつける太陽が眩しい夏の空気が街を覆っていた。
「あっつ…」
アイス食べたい。
反射的にそう思う。
さて、どうしたものか。
とりあえず海に行ってみる?
いやいや、安易にもほどがあるか。
こういうことを、楽しんでくれそうな友達に素早くメッセージを打ち込んで、僕は本の題名をもう一度確認した。
古ぼけた表紙には
「流れ星のアナタ」
裏表紙には
ホシノコハル。
そして間には、あの、
アナタへの手紙。
「はぁ~アオハルかよ……」
我慢できずに炎天下の小道を走る。
僕の住む街は海が綺麗だ。
そのうち流れ星も流れ着くだろう。
とりあえず、家帰ったらアイス食べよう。
「アナタに会ったらアイス奢ってもらうぜ~」
こうしてとある、夏の午後は溶けていった。
はい。寒い時に真夏のアオハル。
いや、もし、手紙を相手の特徴のみで人伝に回していったら届くのかな?って思って。
例えば私がnoterさんの誰かに辿り着く手紙を、何処かの古本屋の本に挟んで、誰かがソレを「しゃーねーやったるか!」ってしてくれて、すごい月日が経った時に、アナタがそれを読んでくれたら………なんかいい。そういう、曖昧な繋がり。とか思って書きました。
思いついて30分くらいで書いたから、なんだかよくわからん感じかもだけど。笑
ネット使えばたどり着きそうな気もするよね。
流れ星は捕まえるものでもないし、流れ付きはしないのだけれど、きっとアナタは流れ星のようにやってくるものなのだろうと、ありもしない本の内容も妄想して楽しんでいる。
古本屋の店主はきっとタヌキ。
行ったこともない、愛おしい街を頭の中で広げながら、手紙がアナタに届いて、書き手の心がアナタに届くことを、私は願う。
創作は切ない。
サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。