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超思いつき1場面物語『手紙』

何処かにいるアナタへ

アナタは男の人。
アナタは私よりきっと年上。
アナタは身長はきっと高め。
アナタは綺麗な海の見える街に住んでいる。
アナタはそこに大人になってから住みだした。
アナタは犬を飼ってるの。
アナタは休日はカメラ片手に散歩してる。
アナタは人と関わる仕事をしてるって言ってた。
アナタは優しいと思う。
アナタはたまに寂しそうだと思う。
アナタはアジカンのブラックアウトがカラオケの十八番だっていってたけど、本当は、女性シンガーの歌のほうがきっと高得点だせるはず。

知ってるようで知らないアナタに
私は言いたい事があります。

けれど、私はアナタを知りません。
そこで、この手紙を読んだアナタにお願いです。

これを私が書いた人に届けてください。
きっとピッタリ当てはまる誰かに届くと信じています。
もし、手紙を読んだアナタに宛がない時は、他の誰かに渡してください。
そうやってめぐるうちに、アナタに辿り着くと思うの。


あのね
あの時、画面に
「きっと、流れ星も流れるよ」
って打ち込んでくれてありがとう。

私、とても嬉しかったよ。
結局、雨雲で見えなかったけど
それでも、とても嬉しかったよ。

ありがとう。

という手紙を、何気なく開いた古本の間から見つける。
紙は、どうもまだ新しい。
じっくり見る文字は丸く可愛らしい。
美しい青い文字色が薄暗い古本屋と相まって、まるで、魔法の書のように輝いて見える。

僕は、この人の探すアナタを知っているだろうか?
記憶の中にアナタを探してみるが、悲しいかな。僕は知り合いが少ない。

夏休み入りたての、午後3時。
人気のない古本屋の奥で僕はうーんと小さく唸った。

見なかったことにして、そっと本に戻してしまおうか?
そして、そっと棚に押し入れようか。


「すみません。これ」

「あぁ、これ?いい本だよねぇ」

「はい、あ、読んだことはないんですけど一文が気に入って」

「そうかい。そういう出会いもいいもんだ。本も喜んでるよ」

店主はそう言ってニッコリ笑う。
いつもタヌキみたいだなと思う。
実は、本当にタヌキなのかも。

手の中に古ぼけた本をつつんで、僕は店主に挨拶をして、ごく普通に店を出た。

ひんやりした薄暗い店内とは対象的に、照りつける太陽が眩しい夏の空気が街を覆っていた。

「あっつ…」

アイス食べたい。
反射的にそう思う。 

さて、どうしたものか。
とりあえず海に行ってみる?
いやいや、安易にもほどがあるか。

こういうことを、楽しんでくれそうな友達に素早くメッセージを打ち込んで、僕は本の題名をもう一度確認した。

古ぼけた表紙には
「流れ星のアナタ」

裏表紙には
ホシノコハル。

そして間には、あの、
アナタへの手紙。

「はぁ~アオハルかよ……」

我慢できずに炎天下の小道を走る。
僕の住む街は海が綺麗だ。
そのうち流れ星も流れ着くだろう。
とりあえず、家帰ったらアイス食べよう。


「アナタに会ったらアイス奢ってもらうぜ~」

こうしてとある、夏の午後は溶けていった。



はい。寒い時に真夏のアオハル。

いや、もし、手紙を相手の特徴のみで人伝に回していったら届くのかな?って思って。
例えば私がnoterさんの誰かに辿り着く手紙を、何処かの古本屋の本に挟んで、誰かがソレを「しゃーねーやったるか!」ってしてくれて、すごい月日が経った時に、アナタがそれを読んでくれたら………なんかいい。そういう、曖昧な繋がり。とか思って書きました。

思いついて30分くらいで書いたから、なんだかよくわからん感じかもだけど。笑

ネット使えばたどり着きそうな気もするよね。
流れ星は捕まえるものでもないし、流れ付きはしないのだけれど、きっとアナタは流れ星のようにやってくるものなのだろうと、ありもしない本の内容も妄想して楽しんでいる。

古本屋の店主はきっとタヌキ。


行ったこともない、愛おしい街を頭の中で広げながら、手紙がアナタに届いて、書き手の心がアナタに届くことを、私は願う。

創作は切ない。




サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。