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「安全が治療」トラウマとリセット®

「安全が治療」  スティーブン・ポージェス(ポリヴェーガル理論提唱者)

トラウマ治療と聞くと、なんだか「怖い」イメージを持っている人もいらっしゃるでしょう。逆に、安心・安全な治療法と聞くと「効果が低い」と思う人もいるようです。
 
日本では大規模災害の経験を通してトラウマやPTSDついて知られるようになりました。その治療法として、暴露療法(PE) や認知行動療法(CBT)等について聞かれたこともあるかも知れません。

これらの治療法は、トラウマの記憶を繰り返し想起し、セラピストの助けを借りながら見方を変えて語り直すことで、トラウマの原因となった体験・エピソードの記憶をリフレーミング(意味や認識の仕方を書き換える)する。

あるいは、トラウマ体験を思い出したり、危険を感じたりする(客観的には安全な)状況、場所、物、言葉などに意図的に対面して慣れていくことで、日常生活の支障となるような極端な回避行動や非適応的な行動を修正するというものです。

このように従来のトラウマの治療では、トラウマの記憶を繰り返し想起することや似通った状況を再体験するプロセスが不可欠です。
 
どんなトラウマも、当事者にとって「生命の危機」を感じる経験であることに変わりなく、その記憶に触れることは、たとえそれが治療であっても非常に辛いものになり得ます。
 
中でも親からの虐待やDV、性的暴力、紛争・戦争、人為的災害等、あまりにも理不尽で不条理な状況が原因となっているケースでは、「リフレーミング」も「慣れる」ことも困難を極め、治療は長引きます。

その上困ったことに深刻なトラウマほど、その肝心な記憶が無いか、治療自体がトリガーとなり、断片的な記憶が次々と現れてコントロールできなくなる、つまりフラッシュバックやパニックが起きるリスクを否めず、熟練したセラピストの指導下でさえ、セラピーを受ける度に症状が悪化するケースも起きていました。

トラウマは、次のトラウマを生み出します。
当事者の治療による再トラウマに加え、そこに深くかかわる治療者や家族、状況によっては周囲の人々にも深い傷を負わせることがあります。

90年代、その頃最先端と言われていたアメリカで心理学を学んだ私は、この状況を変える方法を求めて、人智学(R/シュタイナー)、薬草や異文化の伝統治療、スピリチュアル・ヒーリング等の世界にその答えを探していました。

そんな月日を越えて出逢ったポージェス博士の冒頭の言葉は、「トラウマ」の定義を変え、「トラウマ治療」をこれまでとは全く違うものへと変化させるだろうという希望を与えてくれました。

『ポリヴェーガル理論』は、これまで目に見えない個々の経験として心理学的に捉えてきたストレスやトラウマを、神経システムの働きとして生理学的に捉え直すことによって、これまでの「トラウマ治療」に非常に大きなパラダイムシフトを起こしたのです。
 

リセット®は、このポージェス博士の『ポリヴェーガル理論』を基盤に成り立つ、新しいメソッドです。

トラウマの治療に用いるときにも、その記憶には一切触れることなく、呼吸と穏やかな動きによって自律神経を穏やかに整え、『安心・安全な、いま、ここ』に滞在する時間を増やしていくように働きます。

 
あなたが『安心・安全な、いま、ここ』にいるとき、あなたの身体のどこにもトラウマは存在していません。

たとえ何かをきっかけにトラウマを受けた際の記憶が浮上してきたとしても、それに対して自律神経が「防衛反応」を起こさず、自分で「安全な今ここ」に戻ってくることができるようになれば、トラウマ治療は完了です。

トラウマは、もう “一生消えない心の傷” ではなくなりました。

 
リセット®が、トラウマに縛られる日々から、より自由な生き方へとシフトし、これからの人生を存分に生きて行くきっかけとなれば幸いです。
 


NPO法人予防医学療法研究会  ナナブライト


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