歴史小説「Two of Us」第1章J‐5
~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第1章 TAMAKO met TADAOKI @The Crossroads
J‐5
「ところで、、、明智殿はご機嫌うるわしゅうござりますか❔」
「はい。多分、さようでございます。
父上は、ほぼほぼ城には居しませぬゆえ。」
「この度は、何ゆえ亀山までおいでなのであるか❔」
「はい。我が町から出たがる私を扱いあぐねて、亀山に連れて来たご様子。
私も役目を頂きまして。侍女と共に、薬草を探しに参りました。この前の戦で負傷した兵士達の、傷の治療に薬草を使うのですが。。。」
「あの戦では、それがしの細川軍でも、敵方からかなりの痛手を受けております。つらくて理不尽な仕事により、生き延びたおおかたの兵も、心と身体に深くて暗い傷を負っております。
他のご一行は いかがなされましたか❔」
「私たちが、ついでについて来ただけですから。。。
方々は、たしかに薬草を城にお届けなされていることでしょう。
私たち二人は、母上様へのお肌の薬草を〈大原女〉から手に入れようと試みましたが、峠で違う方向へ進んでしまいました。」
「お母上は、どこか具合がよろしくないのですか❔」
「いえ。さほどでは。。。もう長年の痣(アザ)が顔に残るだけです」
「母上は、明智家に嫁ぐ矢先に、三日三晩高熱を出して【疱瘡(ほうそう)】を患いまして、お顔にひどい痣ができたまま、お輿入れの日を迎えてしまいました。
先方に失礼ゆえ、とのことで母方の祖父が母上の妹にすり替えて参上したのですが、父上は母上との面識がございまして、『煕子様とはちがう!』と、見抜いてしまいました。
『お顔が変わってしまおうとも、煕子様のお人柄をお慕いしておるのじゃ。本当の嫁様をよこしてください。』
と、祖父に願い出たのだそうです。
その頃の痣がまだ少し、残っております。母上は、父上のお心に応えるために、少しでも御面相をも良くなりますよう、今でもとても努力をいたしております。私も、そのお気持ちをお助け出来ることはないか、日々考えておりました。お肌の薬草は、母上へのお土産です。」
亀山城下に辿り着いた、忠興と珠子の一行。
疲れている馬を城代に預ける為、そして無事城下に戻った事後報告を伝える為、それぞれに、馬番の待つ門前まで来て、保津川にかかる橋を渡る。
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