小山さんノート(読書感想文)
この本は、ある方が日記の様に日々を綴ったノートを、その方が亡くなった後に有志の方々が書き起こして本にしたもの。
ある方、とは小山さんという女性。ホームレスとして公園のテントで暮らすことを余儀なくされていた。ホームレス、という言葉が強過ぎてそれがこの本の入口になってしまいそうだけれど、これは文学や芸術を愛し、フランスに憧れるある人の言葉の束。
この本を書き起こした方々の言葉の中に「自分をあけわたさない人」という表現があったけれど、その言葉がしっくりくる。気高く、しなやか。でも決して自分に敬意のない人たちや悲しみ、不安に自分をあけわたすことをしない人。
日記を読みながら、私は小山さんと一緒に喜び、不安になり、怒りを感じ、自分が穏やかになるのを待つ。
奇しくもこの本を読み終えた朝のニュースでは、「ホームレスの4割が『このままで良い』と答えた」と報じられていた。私は「このまま」がどんな意味を持つかを立ち止まって考えたい。
少なくともこの本を読み終えた私には、この言葉には「その先への不安」「自分らしく生きられないことへの恐怖」が透けて見える。ネットニュースの感想にあった「自業自得」「好きでやっている」「助けて欲しいなら言えばいい」という言葉は自分の中にはみつからない。
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心に残った言葉(順不同)
⚫︎まして人間関係が一番恐い。皆貧しく明日にこまっている。働くにも働きえない状態と条件がわびしい。
⚫︎(お店でキャベツの端を小鳥に食べさせたい、と言ってもらった時の話)私も食べてみようかしらと言った。まずくて食べられませんよと言う。ありがとうと喜び、本当は自分が食べたかった野菜だ。
⚫︎貧富の社会はますますひどくなる中で、一時も早くこの恐怖と貧しい毎日より離れやり直しをしたいが、そんな機会もめぐってはこない。
⚫︎わずかなお金を持っても、土台を変えることもできない現状と国民権のない立場は空中ブランコのようだ。
⚫︎このままではならないと思いつつ、現状を人間として不自由なままに過ごしていると、まるでかくりされた病人のようにうろたえてしまう。