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自転しながら公転する(読書感想文)
最初はなんとなく鬱々とした主人公の気持ちに沿うようにゆっくりペースで読んでいたけれど、主人公の身の回りに変化が出てくるのと合わせるように読むペースもどんどん速くなってきた。もっと先が見たい、それからどうなったのか知りたい、とページをめくる手が止まらなくなった。
主人公の主観で読んでいると見えてこない他の人の感情が、時々目線が変わることで見えてくる。そこで読者は、「あ、そこ誤解だよ。待って」とお話に割って入りたくなってしまう。でも私たちは大体主観で生きている。側から見たら「あ、違うよ!ちょっと待って!」って思われるようなことを、日々大切な人に言ってしまっているんだろうな、と振り返る。
そんな、簡単にはいかない人間関係やどうしても不安に打ち勝てない現実と、社会の価値観というリアルを嫌というほど感じながら、最後の最後までリアルが迫ってくるお話だった。
一生なんてきっとじっとしてても過ぎ去っていく。何も選ばないということも、最終的に自分の選択となって否応なしに流れに乗せられていく。終わりの日まで、私たちは主体的になるか否かは別としても、選択自体から逃れられない。
どう生きるか、どう生きたいか。誰と生きたいか。
そんなことを読後も何度も考えてしまう。大人になるということは、思い通りにならないことを味わっていく過程なのかも知れないな、と思った。
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【心に残った言葉】(順不同)
⚫︎お金持ちは、お金がかかる生活をしている。
⚫︎桃枝は自分の体調不良を更年期障害だと診断されたとき、夫と娘が「病気じゃなくてほっとした」と言ったことを、口にはしないが根に持っていた。
⚫︎その驚きは時間がたつにつれて、彼への愛情を深める作用から自己嫌悪に変化して、じわじわと染みてきた。
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