ヒトは「いじめ」をやめられない(読書感想文)
かなり衝撃的なタイトルの本だけれど、これはかなりストンときた。
「いじめ」やそもそも「ヒト」を道徳的に捉えることの限界や、日本でこれだけ道徳の授業があっているにも関わらず、非道徳的なことが横行するとはどういうことだろう、などと日頃から考えていたので、かなり納得だった。
以前平野啓一郎さんの講演に行った時に、道徳よりも人権、法を教えた方が良いという話があって納得したのと同じ感覚だ。
道徳の「人は元々善いものなんだから」という考えの下では「これさえ学んでいれば大丈夫」と信じてしまう。私自身も性善説を強く信じてきた一人だから、その理想もよくわかる。でも、そんな自分でさえちょっとした心の揺れで判断を間違えることがある。そんなに人は強くないし正しくもない。
一旦批判的な思考で「人は素晴らしくて、間違えない存在だ」という理想を「本当にそうなのか」と捉えることで、見方は随分と変わっていく。
そもそもヒトは愛情深く仲間を大切にする反面、排除しようとする気持ちも持ち合わせている。それは表裏一体なのだ。人の善を信じることは同時に悪を信じることにもなる。それを私たちは自分たちに都合の悪い部分を敢えて見ずに、理想を追い求めることで自分達を理想に近づけようとしてきた。
ただこの本は脳科学者の方が書いている、科学的根拠だらけの本だ。誰もこれに反論はできない。私たちの中に間違いなくある「いじめを生み出すメカニズム」があらゆる根拠とともに書いてあるからだ。
こうなったら認めざるを得ない。私たちは「いじめる」し「妬む」し「結果を欲しがる」ものだ。それを理解した上で「私たちは間違うものだから、どうしたら良いかを一緒に考えよう」というスタートラインに立つ必要がある。
だから法が必要で、法によって自分は守られているというのを知るのも一つ。まずはスタートラインに立たないと、私たちは理想の中で人を傷つけ、自分を見失ってしまう。