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強引がゆえの安心感…焼肉屋のおばちゃんに学ぶリーダーシップ

夫と近所の焼肉屋さんに行った。このお店の店長であるおばちゃん、そのキャラクターがとても強烈で、とても素敵でとても勉強になった(勝手に)。今日は、そんなおばちゃんから仕事における『自信』について考えさせられた話をしたい。

※ちなみに店長の一人称が「おばちゃん」だったので、この記事でも親しみを込めておばちゃんと呼ばせてもらっている。


美味しい焼肉と可愛いおばちゃん

焼肉屋さんとおばちゃんの紹介を少し。

この焼肉屋さんは、昭和の雰囲気が漂うこぢんまりとしたお店。いつも常連さんで賑わっているイメージだ。おばちゃんは店長兼接客担当で、厨房からフロアまで一手に仕切っている。

住宅街の中にポツンとあり、決して好立地とは言えないにも関わらず、食べログでは高評価。口コミには「タレが本当に美味しい」といったコメントだけでなく、かなりの確率で「おばちゃんに癒される」「おばちゃんが良い!」「おばちゃんが可愛い」といった声が添えられていた。気になる。

電話予約の際、カードは使えますか?と質問すると、「いいえ!使えません!!難しいことはできませーん!ごめんなさーい!!」と返ってきた。その元気の良さに、(そんなに勢いよく言う?)と笑ってしまった。確かに只者ではない雰囲気は、訪問前から感じていた。


なかなか強引なおばちゃん

おばちゃんは期待を裏切らなかった。入店早々、圧倒される。

「はじめまして、お待ちしてましたのよ、そんなに時間ぴったりに来なくても、早く来てゆっくりされたら宜しかったのに、休日はありがたいことに結構混んでいるんですけどね、そうそう先週も忙しかったの、でも今日は平日ですから、席はもう30分前からご用意してたのよ、いつも平日はそうしてるの、早く来ても良くないと気を遣っていただいたかしら、ごめんなさいね、ゆっくりしてください、さあどうぞ」

私たちがまだ1音も発していない中、めっちゃ喋る(笑)『暖かくて丁寧』と『ものすごい勢い』の共存はなかなか新鮮だなと思った。

やはり、おばちゃんは面白かった。


注文内容は決められているも同然

メニューを開いて相談していたら、「初めていらしたので、特上タンと特上カルビを注文してください」「キムチも美味しいです。長芋キムチが美味しい。でも色々楽しめるので盛り合わせにしてください。」「野菜スープもいります」と止まらない。なんなら、もうオーダー表に決定事項として書き込み始めている。
きっと私たちが優柔不断だったので気を利かせていただいたのだと思うが、オススメではなく「注文してください」と指示が飛んでくるのも新鮮だ。「じゃあそうします」と返事するだけで、ほとんど決まった。

我々に拒否権は無い

夫がご飯大を頼む。肥大化によりダイエット中だった私はご飯は遠慮すると伝える。すると、「特上カルビはお皿に取らずにそのままお茶碗に乗せて食べます。タレがご飯と絡んで美味しい。うちは一等米使っていますからご飯頼まないと。」とのこと。
私は遠慮します、とハッキリ伝えたはずだが、拒否権は無いようだった。ご飯小を注文した。

食事中もトークショー

食事中も、これは裏返してください、これもOK、これ食べて、と次々に指示が飛んでくる。食べていると「どうですか、美味しいでしょう」と嬉しそうに聞きに来てくれる。
注文が落ち着くと横のテーブルに座って、「最近は強盗が怖いでしょう」と語り始める。この食事中に夫と私で何か会話したか全く思い出せない(笑)


圧がすごいのに居心地の悪さはゼロ

食べ方や食べるタイミングにあれこれ口を出されると、居心地が悪く感じる時もある。でも。このおばちゃんとの時間で、その感情は生まれなかった。お肉も一品料理も全てが美味い上に、おばちゃんのトークショー付き。贅沢な時間だ。

真っ直ぐなサービス精神

おばちゃんからは「自慢の料理を一番美味しい食べ方で楽しんでほしい、とにかく満足して帰ってほしい」という、曇りの無い真っ直ぐなサービス精神が伝わってきた。売り付けられているような感じもない。自分たちで考えるより、このおばちゃんの流れに巻き込まれた方が幸せな時間を過ごせそうと感じていたと思う。

根っこにある自信

とにかく自信満々にハッキリと "指示" されるため頼もしいのだ。こっちはプライド持って商売してるんで、みたいなトゲトゲしさは全く無いが、「もう50年やっていますからね〜」という言葉にはずっしり重みがあった。だから強引でも意見聞いてもらえなくても、きっとこの人が正しいんだわと説得力があった。

愛嬌と機転、すごい

何よりおばちゃんの愛嬌がやっぱりすごい。タレが美味しくて夫が思わず「タレだけでも売ってほしいですよ」とコメント。もちろん、本気で販売の打診をしたわけではなく、こんない良いお肉は自宅で食べられないとして、タレだけでもと思うくらい美味しい!という意味だったが、おばちゃんはその間に厨房に消えた。

そしていちごジャムの瓶に入ったタレを持って戻ってきた(笑)その場で値段を付けてくださったので購入。

いちごバターの瓶に焼肉のタレ

なんだか無理を言ってしまったみたいで申し訳なくなり謝ったが、「タレだけ欲しいって言っていただいたのは初めてですね〜」と笑顔。この愛嬌。そして機転。


おばちゃんのリーダーシップに学ぶ

おばちゃんにリードされながらの焼肉、幸せな時間だった。

自信満々って、こんなに頼もしいものなんだな。ただし、上っ面だけで態度を堂々と見せようとしても、おばちゃんのようにはなれない。そもそも、おばちゃんの自信満々な態度は狙って作り出されたものではなく、50年の経験から滲み出ているものだ。これが本当にかっこいい。

お客さんに価値を提供する上で、自信を持って提案できることの重要性を改めて感じる。仕事では時に根拠のない自信や、仮に自信がなくても堂々と振る舞うスキルが必要なシーンもある。ただ、今回おばちゃんから学んだのは、もっと本質的な「滲み出る自信」だ。

昔の自分の失敗経験を振り返る。クライアントに「どうしたいですか?」とお伺いを立てすぎたせいで、頼りなく見られ、うまくディレクションできなかったことがある。自分の意見がないわけではなかったが、自信がなくてはっきりと言い切れなかったのだ。もっと堂々と提案すれば良かった!と悔やんだこともある。でも、その後悔の裏には、そもそも自信を持てるだけの「場数」や「鍛錬」が足りていなかったという事実がある。

おばちゃんのように、真っ直ぐ仕事と向き合い、経験を重ねていく中で、自信が滲み出てくるような人になりたい。そうして自然にリーダーシップを発揮できる人間でありたいと思った。

そんな話。今日もお疲れ様でした!

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