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短編小説

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#忘れられない先生

【小説】先生の花

【小説】先生の花

(約10,400字)

 いまはもう草原と化したグラウンドの真ん中に、先生は、ただひとりで立っていた。

 その凛々しい姿を目にした瞬間、あたりに立ち込めていた蝉の声が、しゅわっとやんだ。考えるよりも先に、身体が動く。わたしは草を踏み分け、先生のもとへ走り出していた。

 近くまで来ると、わたしは先生を見上げる格好になった。

 草の青さをいっぱいに載せた風が吹き、先生の身体がゆらゆらと揺れる。そ

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