シェア
三浦 さかな
2024年7月24日 22:23
(約10,400字) いまはもう草原と化したグラウンドの真ん中に、先生は、ただひとりで立っていた。 その凛々しい姿を目にした瞬間、あたりに立ち込めていた蝉の声が、しゅわっとやんだ。考えるよりも先に、身体が動く。わたしは草を踏み分け、先生のもとへ走り出していた。 近くまで来ると、わたしは先生を見上げる格好になった。 草の青さをいっぱいに載せた風が吹き、先生の身体がゆらゆらと揺れる。そ